不利な交戦
大男2人が俺に迫ってくる。
どちらも武器を持っている様子ではなく、殴る構えをしている。
俺は一気に間合いを詰め、腰に下げてる木刀を抜刀しながら振り抜いた。
大男には当たらなかったが再び距離を取る。
もう1人と浩太の2人が両脇から一斉に押し寄せてくるも、身を翻してなんとか避ける。
続けて正面にいる大男が再び俺に殴りかかってくる。
咄嗟に右手だけ木刀から手を離し、腕で攻撃を受ける。
男の腕力は強いものでモロに受けていたら危なかった可能性がある。
「……っ! このままじゃ防戦一方じゃないか」
3人から各方向へと飛んでくる攻撃を避けることに必死な俺は攻撃に転ずることができない。
それどころか、昨日刺された部分に痛みが出てきた。
まずいな、傷口が開いてきた……
浩太には手を出せない。
後ろで何か唱えている轟破も気がかりだ。
少しでも考えようとしていると隙を狙って大男たちが襲いかかってくる。
必死に攻撃を避け、間合い見計らっているも浩太に横から1発殴りを入れられてしまう。
少しよろけたが、なんとか持ちこたえ再び対峙する。
しかし、そこでとんでもない光景を目の当たりにする。
轟破の周囲には黒い禍々しい謎の『気』のようなものが纏われていた。
それを見た瞬間、これが魔術何だと。
魔術が実在することを知ってしまった。
そして、更に不利になったことに焦りを感じる。
「こうなってしまったら誰も私を止められん! さぁ我々の幸福のために大人しくしろ!」
轟破が声を上げた後、人間の速度とは思えない速さで俺の目の前まで迫ってきた。
轟破の手が俺に触れた瞬間、訳の分からない力により俺は吹き飛ばされてしまう。
「ぐはっ! がはっ!」
なんという力。
こんなの人間に出来るはずがない。
ゆっくりと轟破が俺の前まで歩み寄ってくる。
「なんと愚かな。初めから我々に着いてくればこんな事にならなかったと言うのに」
「はぁ……はぁ……生憎だが、俺には俺の使命があるもんでな」
「まぁそんなこともうどうでもいい。我々の幸福にお前らは邪魔だ」
そう言って轟破が再び俺に触れようとした瞬間、俺は右の腰に下げていた刀『魔刃』を振り抜いた。
刀は轟破の手を弾いたが、血が流れることは無かった。
しかし轟破は手を抑え、苦しんでいる様子だった。
「ぐああああああ!!! お、お前、何を!」
あの少年が言っていた直接命を奪うことは無いというのはこの事なのか。
俺はゆっくりと立ち上がり、右手の刀と左手の木刀を構え、轟破たちと対峙する。
「これ以上、好きにさせないぞ!」