見つかった居所
気がつけば太陽も傾き始め、時計は5時を差していた。
冬月は未だにボーッとしたままで、健介が何とか治療をしている。
「冬月、しっかりしろ! まだやることがあるだろ」
そう呼びかけるもやはり反応がない。
ひとまず冬月のことは健介に任せ、俺は手記に書かれていたことを考えるとする。
内容を読んだ限りではあの虫は恐らく島の人たちを洗脳しているのだと思う。
浩太が洗脳されたのが昨晩。
あの虫がどれくらいの速度で洗脳していくのか分からないが、これから動けば奴らの活動時間だ。
「健介さん、ここを知ってる島の人はほとんど居ないんですよね?」
「あぁ、こんなところだ。滅多に人は入らないさ」
「なら1晩ここで過ごしても問題ないか」
今すぐ行動したいが、それはリスクが高すぎる。
冬月もこんな状態だ。
行動を取るに取れない。
そんなことを考えていると、外から何人かの人の足音が聞こえてくる。
ここがバレたと言うのか!?
隠れる暇もなく、4人の島民が小屋の中へ入ってきた。
「ようやく見つけたぞガキども」
島民の1人、お好み焼き屋の店主が俺たちを睨みながら言っきた。
「まさかこんな所に隠れ小屋があるなんてねぇ」
女将の昭恵が続けて言う。
「さて、流石においたがすぎるよあんたたち。それに東坂さんもね」
「ここで大人しく捕まって貰おうか」
店主がそう言うと、全員武器を構え始めた。
この状況は非常に不味い。
動けない冬月に戦闘の出来ない弓月たち。
俺1人で4人を相手しないといけない。
「弓月、香織さんはそこで待機。健介さんは冬月をお願いします!」
そう言って俺は左脇に刺した木刀に手をかけ、4人に向かって駆け出した。
そして、島民の男1人の腹部に一太刀入れる。
男はよろめき、腹部を抑えながら床に倒れる。
「てめぇよくもやってくれたなあ!」
声を上げ、店主が包丁を振りかざしてきた。
右足を軸に反転し、右手に持つ包丁目掛けて蹴りを入れる。
店主の手から包丁が離れる。
「こいつ……!」
体勢を立て直し、店主目掛けて突きを放つ。
木刀が右肩に命中する。
「っぐぁ!」
「コノヤロウ!」
「ぐっ……ぐぁ……!」
もう1人の男が振った木刀が俺の背中に命中する。
流石に複数人を1人で相手するのはやはり限界がある。
だがまだ終わってない!
姿勢を低くし、体をねじ曲げ攻撃してきたやつの足元へ木刀を振り抜く。
その後、振り抜いた木刀を跳ね返すように逆の方向に振り抜いた。
男は気を失ったようで、飛ばされたあとも起き上がらない。
「あと2人……これなら……!」
昭恵と店主に向き直り再び木刀を納刀し、対峙する。
俺はここにいるみんなを守ならければならない。