日本刀の在処
行くときに通った道と同じ道を通り、下山していった。
周囲には誰もいる様子もなく、俺は島の神社へと向かった。
冬月たちには悪いがあの少年の言っていたことが気になって仕方がない。
なるべく人と出会わないように隠れながら広場の方へと向かった。
道中誰とも出会うこと神社へ繋がる広場へと辿り着いた。
「ひとまずここまでたどり着いたか……問題は境内だが」
階段を使わず、脇の森を抜けて行く。
中が見える位置にたどり着き、木の陰に隠れ様子をうかがった。
境内には何人か村人がおり、本殿に侵入するのは困難を極める。
「見張りは三人か……どうしたものか」
一点突破するにも木刀では不安すぎる。
姿を現せばすぐに応援を呼ばれてこちらが危ない。
こうなったら一か八か……
俺は足音を立てるように神社の裏手へ走り出した。
「誰かそこにいたぞ! もしかしたらあの連中かもしれない!」
「おえ! 捕まえろ!」
そのような声とともに見張りだった男三人が俺の方へと追いかけてきた。
咄嗟のことで相手全員ハメることに成功した。
ある程度こちらに近づいてきたところで俺は走るのをやめ、少し遠くに木刀を投げた。
カランという音が鳴ったのを確認し、今度は拾っておいた石を何個か木刀の奥へと投げた。
男たちは石を投げた方に走っていき、俺は入れ替わるように神社の本殿へと入っていく。
あの少年はこの中のどこかにあると言っていた。
あるとすれば恐らく地下だろう。
以前来た時と同じように本殿の中には隠し階段があった。
階段の奥から人の気配が感じない。
恐る恐る階段を下りていき、地下室へとたどり着く。
中の様子は以前とは違い静寂だ。
それでも人の気配がないか注意深く警戒し、部屋の奥へと辿り着いた。
「本当にあるのだろうか……」
部屋中を見渡してみたところ、何かが隠されているような場所というのは見つからなかった。
代わりに岩壁のところに隠し扉を見つけた。
「……こんなところに隠し扉?」
恐る恐る岩の扉を開いてみると明かりはないが奥へと続く道が伸びていた。。
どういうことだ?
扉を元に戻し、俺はゆっくりと奥へと進んだ。
スマホのライトを付け、奥へ進んでいくと階段が見えてきた。
周囲から気配を感じることはなかったが充分に注意を払い、階段をゆっくりと上へと上がっていく。
上って行くにつれて、感じたことのある気配を察知した。
……天井が近いな。
手を伸ばしてみると岩のような感触がした。
ここまで一本道だったため、間違っているはずはない。
どうやら、この岩を動かせば上に出られるようだ。
ゆっくりと力を入れ、岩を押し退けた。
息を殺しつつ周囲を見渡す。
近くには人影も物音も何もないようで、俺は岩を元の場所に戻し、小道を進んでいった。
少し足を進めると、小さな祠を見つけた。
……こんなところに祠が。
祠を見ていると、中に一本の日本刀が立てかけられていた。
「あの少年が言ってたのはこのことなのか……?」
恐る恐る日本刀に手を取る。
柄を握った瞬間、何か異様な力を感じた。
身の毛が立つほどおぞましい何かが俺の全神経を通り抜けた。
これはいったい……
「どうやら見つけたようだね」
声のした方を振り向くと今朝出会った白髪の少年が立っていた。
「……いつの間に」
「君が見つけたそれは『魔刃』というものだ。かつてこの島にいた支配者が島に襲い掛かった魔物を打倒したときに使われたものだ」
「魔物を打倒した? 前にも今みたいなことがあったというのか?」
「それは言わない方がいいだろう。それよりも君はまだやるべきことがあるだろ?」
少年はにやけた表情で俺のことを見てくる。
確かにまだやらないといけないことはたくさんある。
冬月たちをほったらかしてしまっているため、早く戻らないともいけない。
「一つ聞かせてもらっていいか?」
「なんだい?」
「この刀はあのバケモノに通用するのか?」
少年は少し間を置き、笑みを浮かべるとゆっくり口を開いた。
「もちろん通用するとも。それと、人間に対して使っても直接命を脅かすことはないだろう」
「そうか」
そう言って俺は山道へ向かおうとした。
「その道を真っ直ぐ進んでいくと君が来た小屋に戻ることができる」
「……そうか」
少年に背を向け、言われた道へと歩みを進めた。




