島の人
朝食を済ませたのち、弓月と合流して島の調査に行こうと玄関口へと来ていたところ、掲示板に貼ってあった一枚のポスターに目が行く。
ポスターには『九十九祭』と書かれており、開催日が今日となっていた。
「兄さん、どうしたの?」
「え、あぁ、ポスターを見ててな。なんか今日祭りがあるらしいぞ」
そう言うと弓月は目を輝かせて俺に迫ってきた。
「え、祭り行くの⁉ 遊んでいいの⁉」
「待て待て、今日はやらないといけないことがあるだろ」
「でも祭りは夜でしょ? じゃあちょっとくらいいいじゃない!」
「まだ何も調べられてないだろ。やること済ませないといけないだろ」
そんなやり取りをしていると昭恵が声をかけてきた。
「あら、九十九祭に興味がおありで?」
「え、えぇ、そうですね。どういう祭りなのですか?」
「普通の祭りですよ。この島に住む生き物に感謝するといったような祭りですね。村の人が屋台を出しますので楽しめると思いますよ」
「そうなんですか。それは楽しそうですね」
「よければ参加していってくださいね。では、失礼します」
そう言って昭恵が去ろうとしたとき、何かものが置かれた音が聞こえた。
「おはようございます!」
声のした方を見ると、二十歳くらいの女性が立っていた。
女性に気が付いた昭恵はそっちの方へ向かった。
「あら香織ちゃんじゃない。いつもありがとうね」
「いえいえ、いつものことじゃないですか。そちらの人たちは?」
俺たちのことを見て昭恵に訪ねてきた。
「あの方たちは観光に来たお客様よ」
「そうなんですか、初めまして、この島に住んでいる東坂香織といいます」
香織は俺たちに向けて深々と頭を下げる。
「あぁ、これはどうもご丁寧に。観光に来ました山川といいます。それと友人の冬月と妹の弓月です」
冬月と弓月に手を向け、紹介する。
二人は香織にお辞儀をした。
「香織ちゃんはこの島について詳しいのよ。そうね、よかったら案内してあげたら?」
「私は構いませんよ。どうしますか?」
「え、いいのですか? ご迷惑では」
「いいんですよ。この島のことを知ってもらえるのは嬉しいので!」
香織は笑顔で答えた。
俺は冬月と一度顔を見合わせると小さく頷いてきた。
この人から島のことを聞こう、二人ともそのように考えたのだろうと。
「それじゃあお言葉に甘えまして、お願いします」
「はい! それじゃあ用事だけ済ませますので少し待ってください」
そう言うと香織は荷物を持って昭恵と宴会場の方へと向かった。
「先輩、チャンスですね」
「あぁ、偶然とはいえ島のことを知れるいい機会だ」
「手がかりを見つけないといけませんもんね」
「そうだな。失踪者も探さないとな」