船酔い
翌朝、俺と弓月は予約していた船の泊まる港で冬月が到着するのを待っていた。
天気は良好で船旅をするにはとても良い。
ただ、夏ということもあり日差しがとても強い。
「ふあぁ……眠い……」
弓月は大きなあくびをして、とても眠そうな表情だ。
普段朝の早い俺としてはこの時間は特に問題ないが慣れていないとこういうものなのだろうか。
「だらしないな、このくらい普通だろ」
「いや、早いよ……出港って九時でしょ? まだ八時だしここまで一時間近くかかったしで起きたの六時だったよ」
「俺からしたら六時も少し遅いんだがな」
「いや、誰かさんみたいな四時起きの人なんておじいちゃんくらいだと思うよ」
「何事も日々の鍛錬が大事なんだぞ。それに日中は仕事があるし朝しか時間がないんだ」
弓月は深くため息をつき、あきれた様子で俺を見る。
でも実際、俺のように朝が早い人はあまり知らない。
出港一時間前であるが人は何人か来ており、とても楽しそうな雰囲気だ。
九十九島についてはいくらか調べたが、自然が豊かな離島であることから他でも楽しめそうには思う。
際立った魅力というのはあまり見られないように感じるがなぜここまで人が多いのだろうか。
「あ、隼先輩おはようございます。やっぱり早いですね」
冬月の声が聞こえてき、振り返ると白いワンピース姿で、とても清楚な雰囲気の服装だ。
「あぁ、冬月。おはよう」
「やっぱり早いですね。あの、一ついいでしょうか?」
「なんだ?」
「なぜ弓月ちゃんがいるのでしょうか?」
冬月は不思議そうな表情で弓月を見ている。
俺は小さくため息をつき、あきれ顔で弓月を見る。
「勝手についてきたんだよ。一応手伝ってくれるらしいから」
「まぁ、来ちゃったものは仕方ないですよね……」
俺も冬月は引きつった笑顔で見合っている。
乗船できる時間になり、船に乗り込む。
船はある程度大きい客船で客室も数個備えついている。
船内には船旅を楽しみにしている子どもの姿やツアーの一行、一人で来ている人といろんな人がいる。
その中でも怪しい人物がいないか周囲を確認する。
俺たちは遊びが目的で来ているわけではなく捜査の一環で来ているため気を抜くことはできない。
緊張感をもって捜査をしていく……はずだったのだが……
乗船してしばらく経った頃、冬月がふらつきながらその場にしゃがみ込む。
「おい、どうした?」
「うぅ……先輩……ちょっと……」
冬月の表情は青ざめており具合が悪そうに見える。
「す、すみません……どうやら酔ってしまったみたいで……」
「船酔いか。仕方ないお前は休んでろ」
そう言って俺は座り込んだ冬月を両腕で抱きかかえ、船内の休憩室へと運んでいく。
「ちょ、先輩、何を……」
「ふらふらしてるんだからおとなしくしてろ」
冬月は少し顔を赤らめ、大人しくする。
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