困った妹
「待たせた、警部から許可はもらったし九十九島に調査しに行くぞ」
「はい、わかりました。出発はいつになりますか?」
「すぐにでも向かいたいところだが、船の手配に時間がかかるかもしれないな。どれくらいかかることになるか……」
「観光客を迎える旅客船とかに乗れないでしょうか?」
「さすがに空きがあるとは思えないが……調べてみるか」
俺がそう言うと、冬月は船の予約状況を確認し始める。
いい具合に空きがあればあればよいのだが……
三十分ほど調べてみたがどれも満員で乗れる様子はない。
しかし、冬月がお礼の言葉言うのが聞こえてきた。
そして電話を終え、俺の方に振り返る。
「隼先輩、予約キャンセルがある便を見つけました!」
「本当か?」
「はい、明日十時の便にちょうど空きがありました!」
なんという運の良さだ。
早く行きたいこちらとしてはかなり助かる。
「じゃあ明日の九時半ごろに港集合にしましょう」
「あぁ、帰ったら急いでしたくしないとな。俺は報告してくるから先に帰っておいてくれ」
そう言って俺はその場を後にした。
その後、明日から九十九島へ調査しに行くことを報告し終え、自宅に帰宅した。
明日には九十九島に行くため、帰宅途中で急遽買い物を済ませておいた。
家の戸を開くと弓月が台所に立って何かしているのが目に入った。
「ただいま、何やってるんだ?」
「あ、おかえり。ご飯作ってたんだよ」
「へぇ、料理できたんだ」
俺はそう言って部屋にカバンを下ろし、床に座った。
弓月はむっとした表情で俺のことを見て口を開く。
「兄さんほど料理は下手じゃないから。最低限出来るよ」
「……痛いとこつくな」
弓月は料理に戻っていき、普段使われない台所から珍しく物音がするのに違和感がある。
とりあえず明日の準備をしなくては。
そう思い、旅行用のカバンを探し始める。
普段使わないため、押し入れの奥にあり取り出すのに少し苦労した。
そして、何日か分の衣服とノートパソコン、スマホの充電器やモバイルバッテリーなどをカバンに詰め込む。
そのようなことをしていると弓月が顔をのぞかせてくる。
「兄さん何してるの?」
「あぁ、明日から仕事の関係で九十九島に行くことになってな」
「えぇ、せっかく来たのに兄さんいないんじゃ意味ないじゃん」
「そういわれてもこっちは仕事なんだから仕方ないだろ」
ため息をつきつつ呆れながら答える。
すると弓月はスマホを取り出して何かを始めた。
「よし、私も行く!」
「……は?」
弓月のいていることを理解できなかったが、俺に向けるスマホの画面を見て理解できた。
画面には『予約完了』の文字が表示されていたのだ。
「いや待て、俺は遊びに行くんじゃないんだぞ? 大人しくこっちで待ってろ」
「何のためにわざわざこっちまで来たと思ってるのよ。それに私、探偵事務所でバイトしてるから手伝いも出来るよ」
「なんでそんなおかしなバイトをやってるんだ?」
「友だちに頼まれちゃってねぇ」
「はぁ……まぁいい。くれぐれも邪魔はするなよ」
予約してしまったものは仕方ない。
それに言って言うことを聞くやつじゃないことは分かっている。
弓月は嬉しそうに台所へと戻っていく。
不安を感じつつ明日の準備を済ませる。




