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闇夜に蠢く挑戦状  作者: 大和ラカ
第三章 離島に蠢く怪虫
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見つからない手掛かり

 車に乗り込み、行方不明者の自宅へと向かう。


「そういえば青が丘中心で行方くらましてるのが多いよな」


「言われてみるとそうですね。十人のうち半分以上がこの近辺ですし」


「数人は海沿いの人だったかな。にしてもどうして急にいなくなったんだろう」


「とにかく自宅も調査をしないとですね」


 そのように話をして車を走らせていると、被害者の家にたどり着く。

 木造二階建ての古めかしいアパートで、ここに住む『大元剛』という人物だ。

 大元は二日前から消息を絶っている。

 大家さんから大元の住む部屋のカギを受け取り、部屋の前までやってくる。

 ポストには二日分の新聞が入っており、帰ってきていないことがわかる。


「本当に行方をくらましてるんだな」


「みたいですね、とりあえず中を調べましょう」


 冬月はビニール手袋を着けて、扉の鍵を開ける。

 その後ろで俺もビニール手袋を手にはめ、冬月に続いて部屋の中へと入っていく。

 部屋にある家具はとても簡素で一人暮らし男性の部屋といった感じだ。

 部屋の真ん中にはテーブルがあり、部屋の隅にはベッドとテレビ台がある。

 物が少なく、あまり手掛かりがあるようには思えない。


 とりあえず備え付けの押し入れを見ることにしよう。

 開けてみるとシャツやズボンが数着あるが一人暮らしするにしても少なすぎるような気がする。

 また、上段にはカバンが並んでいるが真ん中だけ不自然に空いている。

 他にも整頓されているが、一部物が減っているようにも思える。


「なぁ冬月、そっちはどうだ?」


 冬月の方に振り返り状況を尋ねる。


「あ、先輩。何だか荷物が少ない気がしますね。それと封筒を見つけました」


「封筒?」


 冬月から封筒を受け取ってみると、封筒は茶色のどこにでも売ってあるものだ。

 中に何が入っていたのかはわからなく、差出人の名前もない。

 ただ、封を破っていることから新品でないことはわかる。

 また冬月も荷物が少ないことに疑問を抱いているようだ。

 一人暮らしの男性が持つ荷物自体は少ないものではあるがこれはかなり少ない。


「隼先輩、大体調べ終わりましたし次行きます?」


「そうだな、他との共通点が見つかれば手掛かりになるだろうし」


 そう言って俺と冬月は大元の自宅を後にした。



「これで四件回ったな。ここまで調べたがすでに共通点が見つかってきたな」


「ですね、今のところ全員の服とかの荷物が極端に少なくなってましたね」


 ここまで調べてきたが大元の自宅同様、荷物が減った家ばかりだった。

 友人関係に話聞く必要もあるのだろうか。


「そういえばそろそろお腹空いてきましたね」


「もう昼か。確かにいい時間になってるな」


 冬月が言ったのち腕時計を確認したところ、すでに十二時半を過ぎており昼食を食べるにはいい時間だ。


「どこか昼飯食いに行くか」


「そうですね、何食べますか?」


「まだやること残ってるし手早く済ませられるものがいいかもな」


「またラーメンですか? いつもじゃないですか」


 小さくため息をつき、あきれた様子で俺を見てくる。


「まだラーメンとは言ってないだろ。この辺りだと何がいいだろうか」


 二人でどこに行くか悩んでいると、突然電話がかかってくる。

 新田たちの方からだろうか。

 何か変わったことでもあったのだろうかと心配になったが、スマホの画面を見たら宛名が『山川弓月』と表記されていた。


「……もしもし?」


『ちょっと兄さんどういうこと⁉』


 電話に出たとたん弓月の怒鳴り声が耳に響いた。

 咄嗟にスマホを耳元から遠ざけ、怒鳴り声がやむとまた耳元に近づける。


「……弓月、いきなり大声で話すな。鼓膜が破れるだろ」


『兄さんが悪いんでしょ!』


 どうやらとてもご機嫌斜めのようだ。

 いったい何があったというんだ。


「何があったんだよ」


『何で冷蔵庫の中空っぽなのよ! 食べるもの全然ないじゃない!』


「あー……すまん、普段料理しないからさ」


『それにしても何もなさすぎ! 買い物に行きたくても鍵がないから出れないじゃない!』


「何だ? 俺に何か食べ物買ってこいって話なのか?」


『わかってるんじゃない。早く買ってきて』


「無理言うなよ……今事件の捜査中なんだから」


 ため息を交えながら弓月に言う。

 しかし、機嫌が悪いことに変わりない。

 電話越しにずっと騒いでどうしようもない。


「玄関の鏡の裏に家のスペアキーが入ってるからそれ使って外に行け。じゃあ切るぞ」


 そう言って通話を切った。


「今のって先輩の妹さんですか?」


「あぁ、今朝こっちに来てな。しばらく俺のところに住み着くらしい」


「そうなんですか」


 冬月は眉をひそめ、頬を膨らませて車の中に乗っていった。

 いったい何だってんだ。

 よくわからないまま俺も車に乗り込み、近くの飲食店に車を走らせた。


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