歪んだ愛
駅前のファミレスから十五分ほど走り、青が丘学園の近くまでやってきた。
近くまで来たところで、とてつもなく嫌な空気があたりを包んでいた。
この嫌な気配は身に覚えがある。
あの日、黄野町に行った時と同じ感覚だ。
何か嫌な予感がする。
そんなことを考えていると門の前までたどり着く。
辺りに冬月がいないことからまだ来ていないことがわかる。
確認したのち学園内へ向かおうとした時、校庭の方から女性の悲鳴が聞こえてくる。
この声は間違いなく絵里の声だ。
悲鳴のした校庭へと駆け付けると、左肩を抑えている絵里がこちらの方に走ってきているのがわかる。
「絵里ちゃん、大丈夫かい!」
俺が大声を出して呼ぶと、こちらに気が付いたようで、
「は、隼さん……助けて!」と叫ぶ。
絵里の後ろからは右手に刃物を持った女子生徒が絵里を追いかけるように走っている。
そして、俺はあの女子生徒を知っている。
立花このはだ。
あの子が絵里を追っているのだ。
俺は急いで校庭に入り、絵里の方へと駆け付ける。
そして、絵里が俺の後ろに行ったことを確認して立花と対峙する。
「やっぱり犯人は君だったか、立花このは。どうしてこんなことを」
「ちっ、あの時の……どうして私の邪魔をするの? もう少しで……もう少しで絵里を私のものにできるというのに……」
立花の表情は殺意と憤怒に満ちており、その眼光からは狂気的なものを感じ取れる。
右手は、明らかに血まみれになっており絵里一人を切ったにしては量が多い。
「……その血の量、もしかして他にも……」
「えぇ、校舎の中で寝ているよ」
立花は満足そうな笑みを浮かべており、どこか恐怖を感じてしまう。
黙って対峙していると、立花がゆっくりとこちらに歩み寄ってくる。
「刑事さん、そこどいてください。でないとあなたもあのクズたちと同じことになりますよ?」
「そ、それはどういう……」
「絵里はね、あの四人にいじめられてたんですよ。お金を巻き上げたり、暴力をふるったり……あんな奴ら死んで当然よ」
いじめ……だと?
光が言ってた最近元気がないというのはそう言うことなのか……
「絵里ちゃん、それは本当なのかい……?」
俺の問いかけに、絵里は震えながら小さくうなずく。
「だから私が殺した。私が愛した絵里に深い傷を付けた奴らを殺した」
俺は口を開くことができなかった。
度重なる真相をただ聞いてることしかできなかった。
だが、それでもやはり……
「それでも殺人は間違っている。大切な人を傷つけられるのは俺にもよく分かる。わかるけど、殺しはダメだ!」
「何も分かってない!」
立花が突然声を上げる。
「誰も私の気持ちなんてわかるはずない! わかったようなこと言うな!」
立花の目は殺意の色に染まり、何か影のようなものが立花の周囲に漂う。
それはまるで、気を身にまとっているように見える。
「殺す……邪魔なやつは全員殺す……!」
そうつぶやくと右手のナイフを振りかぶり、俺を切りつけようとする。