嫌な予感
その後料理が運ばれ、会話をしながら食事を楽しんだ。
本来、絵里のことについて聞くつもりであったが、三人そろったのが久しぶりだったため、つい盛り上がってしまった。
「そういえば、思ったんだけどみんな公務員になったよね」
光がそういうと俺も明日香も確かにといい、三人で笑った。
こんな風に笑って話すのは久しぶりだ。
何せここ最近は変わった事件が立て続けに起こっている。
こんな暇はあまりない。
「それにしてもこんな風にまた三人で話せるなんてね。最近は副担任任されたりで忙しくてそんなこと考えすらしなかったなぁ」
「まったくだ。俺も事件の調査やらで忙しかったからな」
さて、そろそろ話を聞かないと。
俺は顔つきを変え、真剣なまなざしで光のことを見る。
「それで何だが光、お前に聞きたいことがあるんだ」
「どうしたんだ、そんな改まって」
「絵里ちゃんのことなんだが、最近変わったことはないか?」
光は疑問に思ったのか、不思議そうな表情を浮かべている。
その後、何か思いついたようで、口を開く。
「そういえば、最近元気がない気がするな。普段からおとなしい奴だけど、最近は特に口数が減ったような気がするよ」
「確かに最近は暗い表情でいる時が多い気がするなぁ」
明日香も思い当たることがあったらしく口を開いた。
やはり絵里ちゃんに異変はあるのか……
「でも隼、なんでそんなこと聞くんだ?」
「そうか、光はまだ知らなかったな。実は俺が今担当してる事件なんだが、青が丘学園で連続殺人が起きてるんだ。それも絵里ちゃんとよく一緒にいる子たちが狙われるようでな」
「おい待ってくれよ、そんなの聞いてないぞ。絵里のやつ何も言ってなかったぞ」
なにも事情を知らない光はかなり困惑しているようだ。
「恐らく心配かけられなかったんじゃないか? 絵里ちゃんはそういう子だし」
光は黙ったまま机を見つめている。
そして、何かを思い出したのかゆっくりと口を開く。
「そ、そういえば……今朝今日は帰るのが遅くなるって絵里が言ってたな」
「な……本当か?」
「あぁ、用があるとか言ってた気が……」
その言葉を聞いた刹那、途轍もなく嫌な予感がした。
立花の怪しい態度、友人が殺されたというのに安心を浮かべる絵里、立花と絵里の不自然なやり取り。
そして、今夜絵里が犯人に呼ばれたのなら……
「悪い、急用ができた」
そう言って、俺はカバンを持ち席を立った。
そのまま駆け足で店から出ていく。
このままだと……絵里ちゃんが殺される……!
走りながらズボンのポケットからスマホを取出し、冬月に電話をかける。
「冬月、俺だ。すぐに青が丘学園まで来てくれ!」
『え、どういうことですか?』
「次に狙われるのは恐らく絵里ちゃんだ。今日はまだ学校に残ってたらしい」
『ほ、本当ですか!?』
「あぁ、光からそう聞いてるからな。とにかく急いで準備してくれ。俺は駅の方から向かってる!」
『わ、わかりました!』
そう言うと、冬月は電話を切った。
ここから青が丘学園までは走れば十分で着く。
無事でいてくれ、絵里ちゃん……!




