表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
闇夜に蠢く挑戦状  作者: 大和ラカ
第二章 少女に蠢く憎悪
12/105

交渉

長洲と呼ばれた女性職員がゆっくりと口を開き、話を始める。


「……飯田さんとよく一緒にいる生徒は5人ですね。いつもそのグループでいるのを目にします」


「お名前の方を伺ってもよろしいでしょうか? それと名簿があればそちらもお願いします」


長洲は1度席を立ち、クラス名簿を取って俺たちの前に開いてくれる。

5人の名前は木村希沙(きむらきさ)欅有栖(けやき ありす)河野絵里(こうのえり)立花(たちばな)このは、米村美久(よねむらみく)と長洲が教えてくれる。

生徒の名前を聞いた時、ある1人の名前にとても見覚えがあることに気がつく。


「……河野絵里?」


護の妹の名前も絵里だったはず。

もしかして本当に絵里ちゃんなのか……?


「先輩? どうかしました?」


俺の様子を気にしたのか、冬月が声をかける。


「あ、いや、何でもない」


確証のないことを言って混乱させるのも良くない。


「ええっと、それでなのですが明日、その5人にお話を伺いたいのですが集めて貰えないでしょうか?」


俺がそう聞いたとき、学長が声を上げる。


「やはりうちの生徒に犯人がいると疑っているではないか!」


「ですから落ち着いて下さい! 実際のとこ、飯田さんが襲われたのは学校が管理している寮と伺っております。それに管理人さんから外部からの侵入は特にないと聞いてます。監視カメラにも写っていませんでした」


「窓から入ったのではないのか!」


興奮した様子で学長は立ち上がり、さらに声を上げる。


「飯田さんの部屋は3階です。それに鍵もかかっていました。もちろん窓が割れた形跡も開けられた形跡もありません。そもそも3階によじ登る人がいたら誰かしら気がつくと思います」


学長は顔を顰め、荒々しく椅子に座り直す。


「生徒が殺害されたことにより学校の評判が下がる可能性があることは理解できます。しかし、これ以上の被害者を出してはならないのです」


しばらく沈黙が続き、学長も長洲も俯いたままだ。

そして、学長は小さくため息を1つすると顔を上げ口を開く。


「……分かりました。長洲先生、明日の放課後にその子たちを集めてください。刑事さん方もそれでよろしいでしょうか?」


「はい。ご協力に感謝します」


俺は深々と頭を下げ、冬月もそれに続く。



車に戻るとき、来た時と同じように明日香が送ってくれる。

その途中、明日香に河野絵里のことを聞いてみる。


「なぁ明日香。この学校に通ってる河野絵里ってもしかして……」


「え、うん。護くんの妹よ?」


「……そうか」


予想はしていたが少し不安に思えてしまう。

親友と呼べる人の妹が事件に巻き込まれている可能性が高いことがここまで不安になるものとは。

明日香は不思議そうに俺のことを見ていた。

そして、門まで着くと冬月が


「先輩、ささっと戻ってまとめあげましょ」


「あぁ、そうだな。それじゃあ明日香、またな」


そう言って車の方に歩いて行こうとした時、明日香が俺の腕を掴む。


「待って! これを……」


そう言って俺の手の中に紙切れを入れてくる。


「これは?」


「今の連絡先よ、またあの時みたいに話そうよ」


明日香は満面の笑みを浮かべ、俺のことを見ている。


「あぁ、そうだな」


俺も笑顔で返し、車の方へと歩いていく。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ