面会
俺たちのことを見た天条は含んだ笑みを浮かべると一言呟いた。
「いづれとは思っていましたが本当に来るとは」
「どうしても聞きたいことがあったもんだからな」
「私が話すとは限らないでしょうに」
「そこはどうあれ来る必要はあると思ったわけだがな」
「まぁいいでしょう。それで、私に聞きたいこととは?」
天条は余裕を見せるような様子で、何でも聞いて来いといった態度を示している。
なぜそれだけの余裕があるのだろうか疑問である。
そのようなことを考えていると冬月がはじめに口を開いた。
「ではまず私から。あなたたち金色の刻印教団のような裏で動いていた教団というのはほかにもいるんですか?」
「おや、そんなことでいいのですか」
ほうと一言漏らし、天条は少し考えるようなしぐさを取った。
彼の言い草から恐らく予想外の質問だったのだろう。
「ふむ、いいでしょう。我々の他にも神を信仰する者たちは大勢います。当然表向きにわからないようにしているでしょうけど」
「はやりいるのか……その連中について何か知ってたりしないのか?」
「流石に敵対相手といっても簡単に情報を提供することはできませんね。私が消されかねませんし」
そう言って笑いながらあしらう天条だが、実際消すことなんて言うのは簡単なのだろう。
魔術を使ってしまえばこの世の理を覆せるのだ。
天条も知っている可能性があるのにあの時使わなかったことや、脱獄を図らないことに少々疑問を覚える。
しかし、必ずといって便利な魔術もあるわけではないためだろう。
「そうか……では質問を変えよう薬物について触れてる教団はいるのか?」
「ほう、そうですね。我々とは関係がありませんでしたが薬物……薬に長けた教団はいますよ」
「そうか。冬月、他に聞いておくこと何かあっただろうか?」
「あ、えっと……私からは特に」
「桂木は?」
「そうね……大体山川くんが話してくれたからいいわ」
冬月も桂木も聞きたいことがあったはずだ。
だが聞いても回答が返ってこないと思ったのだろう。
「それでは最後にもう一つ。教団は他の暴力団、組織とはつながりがあるものなのか?」
俺の問いに天条はこちらをジッと見つめた。
そして口角を上げ、俯いた。
「話は以上ですね。では失礼します」
そう言って天条は監視員とともに面会室を後にした。
その後、和田との面会を予定していたが急に面会拒否となってしまった。
「……どういうことですか?」
「その和田という男がまともに人と話せる状況じゃないと判断させてもらいました」
「まともに話せない?」
「言葉通りです。ずっと高笑いしたままであったりと会話できないのですよ」
「……そうですか。すみません、ありがとうございました」
そのように拘置所の職員に挨拶を済ませ、本署に戻るのであった。
私事ではありますが、本日「闇夜に蠢く挑戦状」及びなろう作家活動3周年を迎えました!
投稿頻度の遅い時期もありながらここまで続けられているのも皆様の応援のおかげであります。
ありがとうございます。
ペースが失速してしまうこともあるかもしれないですが必ず戻ってきますし、完結するまでこの作品は失踪するつもりもありません。
これからも、大和ラカの作品を「闇夜に蠢く挑戦状」をどうぞよろしくお願いします!
 




