協力者・理解者
「桂木さん、本人に聞くってそんなことできるんですか?」
「口を割るかは分からないけどね。それでも聞く価値はあると思うわよ」
言ってることはかなり的を得てる気がする。
もしかしたらぼろを出す可能性だってある。
「桂木の言う通りだな。桂木、どの拘留場にいるか教えてくれ」
「わかったわ。それと私も同行させてもらってもいい? あなたたちが調べてる事についていくつか気になることがあるのよ」
「……そうか。助かるよ桂木」
どうやら桂木も気になっているようだ。
俺たちが関わっている怪事件に。
時は遡ること2日前……
俺は桂木に呼び出されて会議室に来ていた。
「それで、何のようだ? 桂木の方から俺を呼び出すなんて珍しいな」
「そうね。前回の事件について気になったことがあってね。いえ、それ以前というべきかしら? あなたのことだからもう気づいているのでしょ」
流石に頼りすぎたのだろうか。
桂木が俺たちが関わっている事件にどこか違和感を覚えてる様子だ。
頭のいいやつだ。誤魔化すこともできまい。
「話してもいいが、覚悟はできてるのか?」
「……えぇ。恐らく私が思ってること以上のことなんでしょうね」
「俺がまともだったとしても想像できないだろうな。事の始まりは5月にあった連続行方不明事件の件からだ。あの時、黄野町で俺たちは例の金色の刻印教団に出くわした。その時にこの世のものとは思えない化け物がいたんだ。しかも教団員の指示も聞いていてな」
「聞いておいてなんだけど事実なのよね?」
桂木を見れば疑っていることが一目でわかる。
むしろこんな話を信じる人の方が少ないだろう。
「今更噓をつく理由もないだろ。疑うならこれを見てくれ」
そう言って一冊の本を桂木の前に置いた。
その本というのは、九十九島で見つけた魔導書だ。
正直これを見せていいのか疑問に思ったがこのようなものでもないと桂木に信じてもらえないと思ったのだ。
桂木が魔導書に手を伸ばした瞬間、俺は一言呟いた。
「読むなら気を付けろ。俺と冬月はそれを読んで気が狂った」
「……わかったわ」
そう言って桂木は険しい顔で本を手に取った。
少しページをめくるとすぐに本を閉じ、驚いているような怯えているような顔をしていた。
「どうだ。これで信じてもらえるだろうか」
「……疑いようもないわね。あなたたちはこれを読み切ったのよね」
「あぁ。読み終えた後……というか読んだのかすらあやふやなレベルだ」
「……知らなかったわ。こんなとんでもない事件だったなんて」
「この件を知ってるのは署内では冬月と荒巻警部だけだ。くれぐれも他の奴らに言わないでくれ」
「言っても信じてもらえるか怪しいわね。わかったわ」
「助かるよ」
その後、これまでの事件についてさらに詳しく説明をした。
信じ切るのは難しいだろうが、理解はできたようだ。
「山川君、もし困ったことがあれば私にも頼ってね。協力するから」
「あぁ」
桂木も協力者、理解者となってくれたのはかなり大きい。
俺たちにとっても非常に助かることだ。




