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最終話「この道わが旅、旅路の果ては未だ遠く」

 ……何というか、我ながらなんて恥ずかしい技を決めてしまったんだろう。

 

 筋肉ダルマになって、アレをビンビンにするとか、もはや限界を超えたダニオの気持ち悪さに思わず、ジャンピングローリングソバットを放ったのだけど、ダニオの奴……まさかの見切り回避。

 

 挙句に人を逆さ吊りにするとかっ! 必死で逃げようとしたら、ダニオの顔に足でしがみつくような感じになっちゃって……。

 あまりの恥ずかしさに思わず足で頭を挟んだまま、鬼神モードのパワー全力で、首投げを決めてしまった。

 

 なお、ダニオは強烈なお辞儀をかましたような感じで脳天から床に突き刺さってて、頭の中身を色々ぶち撒けながら、ドンッと死亡確認とか札みたいなのが貼り付いてる。

 

 その光景は無惨としか言いようがなく……まぁ、敢えて詳しくは描写しないけど……土下座のような格好で、もはやピクリとも動かない。


 いや、ピクピクと痙攣するような動きはしているのだけど……たぶん、これは筋肉の反射にすぎない。

 

「す、すごい……今のフランケンシュタイナーっていうんですよっ! ぶっつけ本番で流れるように完璧に決めるなんて、さすがロゼさんだ!」


 ルーシュのなんともマニアックな感想。


「……も、もしかして、この変態……死んだの?」


 エストが震える声で呟く。

 もはや、怯えきって小動物のようにプルプル震えてる……こんなエスト初めて見る。


「……死亡確認って、ステータスにも変なシールみたいなのが貼られてますよ……確実に死んでますね。……ただ心臓がまだ動いてるんで、身体の方は生きてるんです……だから、うかつに触ると暴れだしたりするかもしれません……けど、脳が完全に破壊されてるんで、きっちり死んでますね」


 淡々と死亡判定を下すルーシュの冷静さがむしろ怖い……。


 まぁ、私にだって、人間を生きたままバリボリ貪ってたような記憶もあるから、そう言うのは知ってはいる。

 今となっては……酷いことしてたなーとは思うんだけど……見慣れてるのもあって、目の前の死体にさしたる感慨は湧かない。


「ここまで派手に中身ぶち撒いちゃったら、もうヒールでも治りそうもないですね……でも、ロゼさんは悪くないです! 見てください……サブイボがまだ消えません……ロゼさんがやらなかったら、わたしがこのハンマーでこの変態の脳天かち割ってました!」


 リアンがハンマーを握りしめながら、鼻息も荒く前に出る。 


「私もだよぉ……思わず最終奥義、星光剣重力破断が炸裂するところだった」


 小動物モードから開放されたエストが今更のように剣を抜く……まだ必殺技隠し持ってたんだ。


「ボクもブラックランサーで串刺しにしようとしてました!」


 言いながらルーシュが後ろ手に隠し持っていた禍々しい黒い槍を手放す……容易く床に突き刺さってる様子から、貫通力は相当のもんだ……どうやら、殺る気満々だったらしい……ルスカもちょっと垂れただけで床を腐食する殺意に満ちた毒矢を準備してた。

 

 まぁ、どう転んだにせよダニオはここで死ぬしか無かったって事だ。


 ……私がやらなくても、誰かがやってた……皆が手を出す前に、私が仕留めちゃったってだけの話みたいだった。

 

 ダニオが何をしたかったのかは、最後までよく解らなかったけど……。


 うん、あれは迷わず殺すのが正しい判断。

 ……あそこまで吹っ切れちゃった奴を世に放つなんて冗談じゃない。


 最後の最後でかなーりキモイ事されたけど……うん、さっさとお風呂にでも入って、入念に身体洗って忘れよう。


 違和感を感じて、パンツを見たら案の定、ヨダレだかなんだかの変な汁付けられてた……うわ、キモすぎ。

 それに気付いたら、もう履いてるのも嫌になってきたんで、その場で潔くノーパンになる。

 リアンと目が合って、真っ赤な顔をされたから、なんか見られたっぽいけど、リアンなら許す。

 

 ダニオ……それなりに長い付き合いにはなってたし、色々世話焼いたりしてたし……。

 ホントは殺すつもりもなかったんだけど。

 

 勢い余って、ブッ殺しちゃったんだからしょうがない。

 

 と言うか、あのキモさ……あれが本性だったんだね……あれはもうただのケダモノ。

 

 うん、ケダモノは殺されても文句なんて言えない。

 

 ええい、ついでに火葬しよう!

 こんな惨殺死体いつまで転がってる方が目障りだし、生き返られても嫌だっ!

 

「グッバイ! ダニオ……あんたの事はなるべく早く忘れるわ……灰は灰に……変態は土に……還りなさいッ!」

 

 小さな火種をダニオの死体にぽいっと投げると筋肉ダルマになったダニオの死体が燃え上がる。

 ついでに、脱ぎたてのパンツもぽいっと投げ込んどく。

 

 そんなんで良ければ、あの世の手向けに取っとけっての。

 

 ダニオ……心の底からキモかったけど……。

 もうこの世で会うこともないなら、これまでさんざんやらかしてくれた悪行や変態行為も許してやりたくもなる。

 

 それに300年もの間生きてたんだから、いい加減散り際だったんじゃないかなー。

 

 そういや、リリエンヌはどこへ行ったんだろ? 一緒に殺されるのを恐れて逃げたかな?

 まぁ……ほっとこう……どうせアイツ一人で何かできる訳でもないし……。

 

「いやはや……こっちは終ったぞい……って、なんでおヌシらが全員そこに居るんじゃ? ダニオはどうしたんじゃ?」


 唐突にダニオの司令室のモニターに写ったのは魔王さくら様だった。

 

 全員無言でなんとなく、松明のように燃え上がるダニオの死体を見つめると、さくらにそれまでの経緯を全員で説明したーー。

  

  

「ーーなるほどな……ダニオは自業自得でくたばりおった……そう言うことか……あのバカ者め……ヤツなりにケジメを付けた……そんな所かのぅ」


 少しだけ感慨深そうに、ため息を吐くと魔王様も顔を上げる。


 その表情は……淋しげながら、何というか長年のつかえが取れたようにどこか清々しかった。

 

「どうなんだろうね……そんな殊勝な奴だったなんて思えないし……でも、なんかスッキリした! 魔王様もそんなとこでしょ?」

 

「そうじゃなぁ……ワシも奴に対しては、色々思うところがあったのでな……だが、くたばってしもうたのなら、もうどうでもいいわい」


 魔王様……ものすごくあっさりしたもんだった。

 まぁ、そんなもんだよね……私もあくまで契約で従ってただけだし……。

 今まで、生かしてやってたのも成り行き以外の何物でもない。


「そうそう、灼熱の塔の方はわしらが片付けといたぞい! まぁ、ポインズンドラゴンもなかなかしぶとくて仕留めきれんかったが……ダニオが死んだのなら、報復する相手もおらんなったと言う事じゃからな……」


「ああ、そう言う事になるのね……けど、こうなると私はどうなるのかな? それに皆も……」


 ダニオが死んで、ウラガン大迷宮もどうなるか解らないし……。

 私自身はダニオの個人的な配下みたいなもんだった訳だし……消えたりとかしたら、嫌だな。


「その辺はどうしたもんかのう……ん? ちょっと待っておれ……魔王城のダンジョンコアから提案とやらがあるらしい……」


 そう言って、魔王様はモニターから顔を引っ込めると、何やらガサゴソし始めた。


「喜べ、おヌシら全員、わしの魔王城の迷宮守護者として登録出来たそうじゃ! 晴れてヌシらも魔王軍の一員じゃぞ!」


 戻ってくるなり、満面の笑顔と共にそんな事を言った。

 

 慌てて、ステータスを見ると所属が魔王軍とかなってる!


「えーと……これは?」


「まぁ、別にぬしらを部下としてコキ使うとかそんなつもりはないぞ……これでワシの加護と魔王城のマナ供給が直接受けられることになる……ロゼ殿も現界を保てるじゃろう。それに、いつでもどこでも魔王城にならひとっ飛びで来れる! 魔王城なら世界中どこだって自由自在じゃ!」


 よく見ると、能力補正とかも山ほどかかってる……なんだこれ……ダニオのとこで正式な守護者登録しても何の恩恵もなかったのに……。

 

「すごい……能力値が2割、3割増しになってる……けど、これって何か制限あったりするの? 例えば、魔王城から離れられないとか」


「離れても加護が弱まる程度でデメリットとしてはそんなもんじゃよ……戻る分にはいつでも戻れるしのう。外で死んでも何事もなかったかのように死に戻りも出来るそうじゃ。それにしても、ロゼ殿もこれで晴れて自由の身じゃな……ダニオが死んだのなら、もうそんな辛気臭い迷宮にも用はあるまい。もし旅に出るとか平和な暮らしを望むのなら、守護者登録を解除した上で現界を保つことも出来るぞ?」


「うわぁ……魔王様、素敵すぎ……うん、ならそう言う事でお願いっ!」


「なら決まりじゃな……リアンやルーシュも考えてみれば、もう戦う理由がないんじゃな。……エスト殿も聖国に帰るなら止めはせんぞ? まぁ……皆が居なくなると、ワシも寂しくなるけどのう……いや、べ、別に寂しくなんか無いもんっ!」

 

 そんな風に、寂しそうに呟く魔王さまの言葉に、全員顔を見合わせると笑いあって頷き合う。

 

 ーー何をするのも自由。

 

 そう言う事なら、私はこのメンツでの冒険の旅を続けたい……そう思って、皆の顔を見渡すと……皆まで言うな……皆、そう目で語っていた。

 

「ま、皆……私がいないと駄目みたいだもんね! サクラだって、目を離すとすぐ死んじゃうだろうから、引き続きアンタも含めて、皆まとめて守ってあげるわ!」


 エスト……ホントは聖国の英雄なんだけど……まぁ、頼もしいからいいよね。

 なんとなく、嬉しくなったんで、背中からギュッと抱きしめてやると、ニコッと微笑み返される。


「私も今更、戦いのない平和な暮らしとか無理だしねー! 魔王さま、この調子でダニオみたいなクソダンジョンマスターをどんどん狩っていこうよ!」


 うん、私達の戦いはまだまだ終わってないのだ!

 

「ロゼさんは結局そうなるんですね……いいですよ……ボクも付き合いますよ」

 

「ロゼお姉さま! こうなったら、わたしと結婚しましょう! お姉様と一緒なら、わたし何も怖くありません!」


「エ、エルフ族は同性婚もみとめられる……しゅ、種族を超えた愛を育み……ませんか!」


 なんか、二人同時に告られた……。

 答える代わりに二人まとめて抱きしめる!

 

「話がまとまったなら、転送を開始するぞい……今夜は、マスターダニオの追悼と、ウラガン大迷宮完全攻略の祝勝会、そして魔王城の新たなる守護者達の誕生を祝して……宴会じゃ!」


 ーーかくして、私達の迷宮の旅は一旦幕を下ろすことになる。

 

 ダニオ……貴方の犠牲は……とりあえず、2-3日くらいは忘れないよ!

 そんだけ覚えとけば義理としては十分だよね?

 

 

 さらば! ダニオ! そして、ウラガン大迷宮もさようならっ!



 そして……こんにちわ! 私の自由なる日々!

 

 きっと今日は……私の人生において、祝福すべき日。


 明日からは、可愛くて素敵な仲間達との冒険が……私のほんとうの意味での人生が……始まるっ!

さてさて……このドタバタ変態異世界ファンタジーもこれにて終了。


最終回……如何でしたでしょうか? ちょっとした余韻と寂しさとか感じていただけたら、作者冥利につきます。


……と言いたいとこですが。

実は、最後にもう一つだけエピソードがあります。


この物語のもう一人の主人公のこと……忘れちゃいけませんぜ。

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