第十話「氷結ダンジョン、壊滅!」③
更に、魔王様とルーシュも降りてくる。
「ふむ、ぶっつけ本番の割には上手く行ったようじゃな……ロゼ殿! エスト殿! どれくらい持ちそうじゃ? それにこの階層にかけられとった結界が消えておるな……ガーディアンも仕留めたのかのう?」
……ガーディアン? ああ、あのデッカイリビングアーマーか。
ここ……いわゆるボス部屋だったらしい。
どおりで、バーニングフレアソードのレベル1じゃ、刃が立たなかった訳だ。
「うっしゃっ! ストーンウォール設置ッ! 今、入り口塞いだから増援はしばらく止まるよーっ!」
ラッシュアワー状態のアイススケルトンに埋まってて、良く解らないけど、エストの声が聞こえた。
どうやら、出入り口は塞いだらしい。
「部屋の中にいるのもあと30体ちょっと! ふたりとも遅いよっ!
ガーディアンかどうかは知らないけど、でっかいリビングアーマーなら仕留めた!」
振り返らず、返事をする……まぁ、さすがに振り返ってお喋りするほどの余裕はない。
「なんじゃ……一人で仕留めたのか……やりおるのう。ならば、ここから先は面倒じゃからゴリ押しでぶち抜くとするかのう。ルスカ殿! エアクッションを直ちに解除し退避ッ!
HQッ! ワシじゃ! 「神々の黄昏砲」を使え……弾種はバンカーバスター! そうじゃ……芯まで鋼鉄の一番重たいやつじゃ! 指定座標、指定高度に移動後、直ちに砲撃じゃ! ええか? 間違ってもワシの上に落とすんじゃないぞっ! 一撃で、誤差も1m以内に収めてみせろ……失敗は許さん!」
ルスカが頷いて、エアクッションを解除しリアンの側まで、退避してくる……エストが魔王様に促されて、ストーンウォールを幾重にも設置する。
「サクラ! これでいいの? ホントに大丈夫なの!」
「エスト殿のストーンウォールの強度なら、持ちこたえるじゃろう。皆の者……伏せて耳を塞いで、口を大きく開けておくのじゃ……物理保護結界も展開しておくとええぞ。」
言われたように、地面に伏せて両手で耳を塞ぐ、なんとなく皆集まってひと塊になる。
エストと私で物理保護結界を二重がけした上で魔王様か何やらシールドを重ねがけする。
やがて、遠くでズシンと言う地響きが響いたと思ったら、その直後に巨大な真っ赤な鉄の塊が上から落ちてきて、床を穿つ!
凄まじいほどの轟音と共に衝撃波が吹き荒れる。
エストのストーンウォールが一枚、二枚と崩壊する……確か5枚位前に置いてたんだけど、ホントに大丈夫かな? これ。
更に、ドカンドカンドカンとほとんど繋がったような轟音が響き、最後に一際重たい地響きが響く。
立っていられないほどの激しい揺れ……天井もバラバラと崩落し、人の頭くらいのブロックも落ちてくる……それが収まると一気に静かになる。
「……うわぁ……なに、今の……無茶苦茶じゃない。」
「今のは、我が魔王城の誇る対城塞用重砲による砲撃じゃ! バンカーバスターと言う超兵器なのじゃ! 本来は城塞内部で炸裂するのじゃが、今回は対ダンジョン破壊用に最深部まで一気に貫通させるべく、貫通力に特化した砲弾を使った!
……今の様子では最下層までぶち抜いたろう! しかし、精密射撃のために敢えてわしらの頭上から砲撃させたが、こりゃいかんな……下手すりゃ生き埋めになってしまうわ。
ルスカすまんが、今度は全員まとめて降下するぞい……最下層まで一気に降りる事になる……相応の敵がおるじゃろうから、くれぐれも油断するでないぞ!」
皆、ホコリだらけで酷いカッコ……と言うか、こんなになるならもっと早く言って欲しかった。
次からは、このやり方は却下でいいと思う。
ルスカが大穴の上に巨大なエアクッションを形成すると……私達はその上に乗り込み、一気に最下層へ降下!
……ゆっくりとバンカーバスターが穿った大穴を降下する。
時より、迎撃のモンスターや守護者が現れるものの、上からの一方的な攻撃で撃破する。
敵の対応も統制が全く取れておらず、散発的なモノ……そりゃそうだろう。
総大将のダンマスが初っ端から戦死した上に、迷宮の最下層までぶち抜くような対要塞兵器の使用。
もはや、反則……こんなものに初見で対応できるわけがない。
ちなみに、ダニオのダンジョンは各層が独立空間化している上に、転移ゲートで相互接続されている構造なので、この手は通じないらしい。
このダンジョンは正統派の地中を掘り進んで階層化しているアリの巣ダンジョンのようなものだから、上から床を全部ぶち抜けば最下層まで筒抜けになる……と言うのが魔王様の言い分だったのだけど。
プランB……ダンジョンを覆う結界を破壊し、魔王城の対要塞砲で最下層まで大穴を開けて、直接最深部へ精鋭部隊を送り込む……魔王様から提案された氷結ダンジョン攻略プラン……なんだけど、実は内容よく解ってなかった。
……私に、難しい事言われてもわかんないんだけど、今度からちゃんと聞こう。
ちなみに、プランAは第一層でダンジョンコアを破壊、もしくは捕獲と言う身も蓋もないプラン。
この作戦、何気に魔王軍が支援部隊込みで、一万人くらい動員されているらしい。
なにせ、魔王様の本拠地たる真・魔王城まで出張ってきてるのだから、本気も本気、超本気!
エライことである……こんなのダンジョン攻略とか違う。
領主とか国もない空白地域だからって、もうやりたい放題、好き放題……やばいね……私もちょっと痺れた。
やがて、最下層へ到着!
……けど、そこにはとんでもない光景が広がっていた。
すり鉢状の穴の真ん中に、超巨大な円錐形の鉄の塊がゴロンと転がっていて、黒焦げのトカゲ風の奴が下敷きになっているのだけど……それはもうぐったりとしていてピクリとも動かない。
凄まじいほどの衝撃波が荒れ狂ったようで、最下層は巨大な吹き抜けのホールのようになっていて、天井もほとんど崩落したようで天井が不自然に高い……二層、下手すれば三層は吹き飛んでいる……大惨事だ。
トゲトゲしい鎧の騎士とかデカいゴーレムやらが地面に半壊状態でめり込んでいるのだけど、いずれも動かない。
似たような感じのトカゲ……いや、ドラゴンだな……これ。
それも、ズタボロになっていて、虫の息でピクピク痙攣してたりする……。
動くものは何も居ない……いや、隅っこの方でヒビだらけになった雪の結晶がカタカタと振動しているのを見つけた。
魔王様がコクリと頷くので、雪の結晶へダガーを投げつける……ダガーが刺さって、一瞬、固まったと思ったら、次の瞬間、雪の結晶は砕け散った!
その直後、ダンジョンに満ちていた魔力が消失する……。
「ふむ……ダンジョンの機能停止を地上でも確認したそうじゃ。
ロゼ殿、これで攻略完了じゃな……いやはや、やはり作戦通りに事が運ぶと言うのは爽快じゃのう。
皆の衆、お疲れじゃった……後始末は部下にやらせるんで、ひとまず我が魔王城に戻って、寛ぐと良いぞ。」
……かくして、氷結ダンジョンはあっさり陥落した。
バンカーバスターの最新式のは、粘土層なら70mの地盤をぶち抜き、鉄筋コンクリも7mの厚さを貫通する化物爆弾です。
魔王砲は口径80cmの対地砲撃用の重砲です。真下以外には撃てませんけど、魔王城飛べるのでもはや戦略兵器。
ただ、現代兵器でもこんな真下へぶっ放す重砲なんて、存在しないですからねー。
口径的にはドーラ列車砲を真下に向けて撃つ感じですね。
概念的にはUSで開発中の「神の杖」ってのがあります
20階層ブチ抜きとかそんな威力あんのかーとか言われそうですけど、対ダンジョン破壊に特化してる上にダンジョンの防御もグズグズなのでやれちゃいました。
……それに架空兵器っすから、細かいツッコミは無用っす。




