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第十話「氷結ダンジョン、壊滅!」②

「うわっ……伝説級の不死の獣を一撃で塵にしちゃったよ……魔王様、マジ凄いのねぇっ!

 と言うか、この剣……くれるとか言ってたけど、マジでいいの? これすげくね? な、名前つけてもいいかな?」


 エストが感極まったように、魔王様を褒める。

 目がキラキラなんですけど……。

 

 そういや、コイツ……一応、一国を滅ぼしておとぎ話のタイトルになったような逸話持ちなんだよね……。

 ほとんど瞬殺に近かったけど、本来は結構強かったのかもしれない。


「ふははっ! エスト殿、そう褒めるな! その剣、ワシの自作でのう……我が魔王城に行けば、ダース単位で転がっとる……気に入ったのなら、くれてやるわい!」


「やったぁ! なら、この剣の名はぴょんぴょんブリンガーにしよう! 聖剣ぴょんぴょんブリンガー! この剣、うちの家宝にしようっ!」


 エストのネーミングセンス……微妙過ぎるんだけど。

 そんな名前の聖剣を家宝にするとかどうなの? ……きっと後世の人も首かしげると思う。

 

「ともかく……この程度の半端な不死の怪物なんぞ、ワシの敵ではない……じゃが、コアの方はどうやら逃げたらしいな。

ダンジョンの床と同化しすり抜けるとは、なかなかやってくれるわい……追うぞ……迎撃態勢を整える隙を与えるな!」

 

 魔王様がそう言うと、床に爆裂魔法を放つ!

 氷の床に大穴が出来て、更にドカドカと立て続けに撃ち込むと、数階層分の吹き抜けが出来る。

 

「ふむ……これ以上は抜けんか……ルスカ! ロゼ! 二人とも先行せいっ! 良く解らんが5階層ほど下にやたら頑丈なフロアがあるようでな……とりあえず、そこまで一気に侵攻する!

ルスカは降り立ったら、エアクッションを用意して、合図を送るのじゃ……準備でき次第、ワシらも後を追う! ダンジョンマスターを失って、この迷宮の機能は麻痺しとるはずじゃが、この分だとガーディアンくらいはおるじゃろう。

ロゼ殿は……ルスカの護衛じゃ! HQ! 作戦プランの修正じゃ……プランBへ移行! そうじゃ、マスターは灰にしたが、コアが逃げた。

……ワシらはやつを追う! 魔王城の支援砲撃を要請する! 準備急げっ! プランBはスピードが命じゃ!」


 魔王様が指示を出す……今回の氷結ダンジョン殲滅作戦については、魔王様に一任してるからその判断に任せる。

 私達はあくまで最前線で戦うのみだ……なんにも考えなくていいって、気楽でいいなぁ……。


「解った! ルスカお願い……着地任せた!」


 ルスカに声をかけて、躊躇わず二人で飛び降りる!


 風魔法を使っての高所降下……練習しとけと言われていたので、皆、キャーキャー言いながら、宿屋の屋根から飛び降りるってのをやってたんだけど。

 

 それは、こう言う状況を想定してたのね……と、今更ながら思う。

 

 ルスカと手を繋いだまま、大穴を落ちていく……床が見えてきた辺りで急減速し、無事着地っ!

 宿屋の屋根なんか比較にならない高さに、ちょーっと死ぬかと思ったけど……その辺はルスカと散々練習したから、任せて安心だとよく解ってる。

 

 ルスカがエアクッションと言う衝撃緩和の高密度の空気の塊を生成し始める。

 後続の皆は、これ目掛けて、フリーダイブ……当然、超巨大なのを作らないと危ないから、相応に時間がかかる。


 これも一応、練習はしたんだけど……この高さ……下が見えないのが不幸中の幸いかな~って気がする。

 

 私の役割は……待ち構えているであろう雑魚モンスターの迎撃ッ!

 

 案の定、青いスケルトンが取り囲むように現れる。

 ルスカに向かおうとする所へ飛び蹴りをカマして、切り伏せる!

 

「ルスカ……敵のことは気にせず、魔術に集中して……君の背中は私が守るからっ! うらぁっ! 雑魚ども! 私が相手だっ!」


 鬼士の構えと咆哮を発動……赤いオーラを身にまとう……20m四方の部屋の入り口から青いスケルトンの大群がわさわさとこちらへ向かってくる。

 

 うん……このダンジョンでも、ちゃんとヘイトスキルが効いてる。

 

 氷のスケルトン……けれども、こっちの火力の方が上らしく斬りつけるとバターみたいに溶けて、サクサク切れる!

 火が水に弱い? 氷を溶かすなら、むしろ火で炙るのが一番早いっ! やっぱ、火力よ火力っ!

 

 調子よく、スケルトンを切り伏せていくと、不意に燃え盛るダガーが掴み取られると、その炎がジュッと音を立てて、消えてしまう。

 

 3m近くある冷気を纏った白い重鎧の戦士……リビングアーマー! なんとなく、エストっぽい!

 炎耐性でも持ってるっていうのかな? ダガーを掴み取られて持ち上げられてしまったせいで、こちらも身動きが取れない!

 

 この体勢で、力比べは少々分が悪そうだ……諦めて、ダガーを捨てるか……それとも……!

 

「バーニングフレアソード! バーストッ!」


 思いつきでダガーに更なる魔力を込めると再びダガーが炎に包まれた! 刀身自体も1mほどに伸びて真っ赤に染まる!

 ジュッと言う音を立てて、リビングアーマーの腕が蒸発する!

 

 落下しながら、左手の赤化したダガーで斬りつけると、リビングアーマーがスパッと両断される! 更に返す刀で飛び上がって横薙ぎっ!

 

 十文字に切り裂かれたリビングアーマーが音を立てて倒れ伏す。

 

 なんだろう……バーニングフレアソードレベル2ってとこ? 体の中を通る魔力ラインが広がったような感覚! あれほど寒かったのに、身体中がカッカと熱を持ったような感じになって、寒さを感じなくなった。

 

 ……私、なんか覚醒した! 戦闘中に新しい力に、目覚めるとかさすが私っ!

 

 更に両手のダガーを振り回して、当たるを幸い薙ぎ払っていく! 

 

 あからさまに炎も強化されていて、掠めただけでアイススケルトンが溶けて消えていく。

 

「ふわぁあああああっ! 死っぬぅううううっ!」


 背後でエストが絶叫とともに落ちてきて、ボヨーンボヨーンとバウンドしている。

 自由降下中、落ちてる側はムササビみたいに両手両足を広げるくらいしか出来ないけど、実は降下速度制御なんかはルスカがやってくれるから、むしろ力を抜いて身を任せるのが一番……なんだけど。

 

 重鎧装備のエストは一番重たいんで、一番降下に気を使うらしい……逆にエストが上手く行けば、残りのメンツは割と楽勝!

 

 何度もバウンドした挙句、ドベチャッと私のすぐ後ろに潰れたカエルみたいな格好でエストが落ちてくる。

 うん、何度も見た光景……街での訓練の時もエストは実戦を想定して、重鎧装備でやってたもんで、たぶんエストが一番痛い目見てる。

 

「エスト! 大丈夫?! 動けるなら、早く手伝う! とりあえず、部屋の外にこいつらを追い出すよ!」


 そう言って、エストに手を貸すと鼻を押さえながら起き上がる。

 一応、ルスカがエアプロテクションでカバーしてくれたみたいなんだけど、本人も受け身取らなきゃ駄目じゃん。


「うう……思い切りお鼻打ったんですけど、鼻血とか出てないよね? さすがに鼻血乙女とか嫌すぎ……って、ナニこの団体さん!」


 アイススケルトン……増えに増えて総勢、50体と言ったところ。

 まぁ、全然雑魚だから余裕っぽいんだけど……まだまだ、扉の向こうにはごっちゃりいるはずだった。

 

「とりあえず、向こうの扉からじゃんじゃん来てるから、エストのストーンウォールで扉を塞いじゃって! 部屋の中のは私が引きつけて、殲滅するから! 行ったれ! ゴーゴーゴーッ!」


「お、おう……任されたよぉ! こりゃ責任重大だっ! と、突撃ーッ! 我こそは青騎士エストリアなりーっ!」


 エストがシールドを構えて、ヤケクソのようにシールドでアイススケルトンを轢き潰しながら、突撃っ!

 

 ちなみに、エストは土と水の複合属性なんて割と珍しいタイプらしい。

 土系や水系の魔術やらスキルやら、実は結構色々取得出来るっぽい。

 

 そいや、この娘……勇者の血族なんだっけ……おまけに聖国の新たな象徴、聖龍が消えた後に生えてきた聖樹様とやらの加護を受けてるとか何とか。

 

 地味にチート……まぁ、私も大概なんだけど。

 

 ちなみに、そんな彼女がとりあえずって事で覚えた魔術は石壁を召喚できるストーンウォールって言う超地味な魔術。

 もっとも……地味なように見えて、汎用性は物凄く高い……エスト侮りがたし。

 今もボコボコとストーンウォールを生成して、団体さんを上手くまとめてあしらってる。


 ……地形操作とか言って、地味だけど相当使えるんじゃないかって気がするよ。

 

 続いて、リアンが降下してくる。

 

 リアンは軽く一回だけバウンドすると、猫のように空中でクルリと回って綺麗に着地! 実はリアンも体術については、私に合わせてトレーニングやら模擬戦に付き合ってくれてるもんで、相当なものになってる。

 ……最初の頃のヘナチョコぶりが嘘のよう。


 お姉さん、リアンの成長ぶりに涙が出そうだよ……人の親ってこんな気持なのだろうか。

 

 リアンもすかさず、私の背後に陣取ると、ヒールをかけてくれる。

 

 ダメージはほとんど受けてないけど、ヒールには疲労回復の効果もあるので、実はこれが結構ありがたい。

 

「リアンあんがと! 割りと数が多いけど、エストが入り口封鎖してくれれば、後は掃討するだけ! 私はいいからエストのバックアップをお願いっ!」


 エストは現在、単身突撃中……一際ダンゴになってて、時折バラバラになったスケルトンが吹っ飛んでるから、位置は何となく分かる。

 

 さすがに、あの数相手では手間取ってる様子だった……うん、無謀だった……すまないエスト。


「アンデッド系なら、わたしも戦えます! エストさん、援護します!

塵は塵に、骸は骸に! 光よっ! 不浄なる骸を在るべき姿に還せ……浄化ノ陣ターンアンデッドサークルッ!!」


 スケルトンの団体へ突撃中のエストの周囲に10mほどの巨大な魔法陣が出現すると、巨大な光の柱が立ち上り、付近のスケルトンやリビングアーマーがごっそりまとめて消滅していく……凄いっ! エストに群がってた20体くらいがごっそりまとめて巻き込まれる!

 

「リアンちゃん! ありがとーっ! 最高のタイミングだよっ! 愛してるーっ!」

 

 エストが振り返って、ピョンピョン飛び跳ねてる……あれだけの団体さんに囲まれてたのに、実は結構、余裕らしかった……さすが!

珍しくリアンがプリーストっぽいことしてるし!(笑)

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