第九話「ダンジョン撲滅運動、始めちゃいました。」②
この氷結ダンジョンの討伐……皆てっきり、反対するかと思ったら、むしろ乗り気だった。
特に、この世界には大量のダンジョンが点在していて、世界のマナ浪費の原因がダンジョンにあると言う事情を理解していた魔王様は、むしろ積極的に各地のダンジョンを攻め落とすべきだと言い出した。
かくして、この度の氷結ダンジョンの攻略ミッションは、新生なった魔王軍までもを動かしての一大作戦となってしまった。
他の皆も割りと乗り気……まぁ、世界平和のためだもんね。
それにダニオダンジョンは、色々とフラストレーションの溜まる仕様で、ラッシュアワー状態の敵との酷い戦いばかりでうんざりしてたのもあったみたい……。
実際、大迷宮と比較すると、こっちの敵って全然弱いし、数も少ない。
……実は、さっきから迎撃のモンスターとか続々と出てきてるんだけど、話をしながら、エストと魔王様が先陣切って、一方的に片付けている。
ちなみに、今回魔王様は自動迎撃クリスタルビットなんて魔道具を持ち出してきてて、余裕綽々と言った調子で空中に浮かんだクリスタルの放つレーザー攻撃みたいなので、モンスターを一方的に殲滅中。
エストとルーシュが魔王様の脇を固めつつ、遠近両方の撃ち漏らしを迎撃……もはや殲滅戦の様相を呈していた。
私は……寒さにヘコたれて、むしろ使えないコ状態。
ルスカとリアンは、どちらかと言うと私の介護要員……笑えない。
リアンが心配そうに、ベタベタ触ってくるんだけど、むしろ暖かくてそれいーわ状態。
もう帰りたい……そして、温かいオフロに入って、リアンを抱っこして寝るのだ……。
ああ……ささやかな日常が幸せだったと気づく私……もうこのまま、目を閉じて眠りたい……。
「ロゼお姉さまっ! 寝ちゃ駄目ですっ!」
リアンに耳元で叫ばれて、意識が戻る!
うぉ……ヤバイヤバイ……寒い所で寝ると死ぬんだっけ……危うい。
「フハハハハッ! 何という貧弱なダンジョンなのじゃ! まさに貧弱ぅ! 貧弱ぅ! 駄目な男の見本のようなものじゃ!」
魔王様……テンション高い上に無駄に元気。
「うぇ……魔王様、やっぱ男は筋肉とかだったりするんですかぁ? でも、逞しい漢の人って素敵ですよねぇ……私は割と好きですよぉ?」
「エスト殿もそうか? ワシも細マッチョとかたまらんぞい! きっとあっちの方も逞しいのじゃ!」
「やだもーっ! 魔王様何言ってるのかしらぁ……エストちゃん、解かんなーいっ!」
「ボ、ボクも良く解らないや……さすが魔王様、大人ですっ!」
「なんじゃ貴様ら……カマトトぶりよって……。
しかし、エスト殿もルーシュも相応の立場なんじゃから、男なんぞよりどりみどりではないのか?
その気になれば逆ハーレムも夢ではないのではないか?」
……なんか、女子トークみたいなのが始まった。
そんな話をしながらも、雑魚モンスターはバタバタと倒れていく……後ろから見てるとシュールな光景。
「ボ、ボクは立場上……そう言う話は駄目ですね……噂だけでも政治問題化しますから。」
「私の場合……男は私より強くないと駄目ですなー!
でも……今の私と互角となると、何気にロゼっちくらいかも……。」
そういや、エストってそうだった……ただでさえ、勇者の血族で聖国最強クラスだったのに、ダニオダンジョンで鍛えられた結果、恐ろしく強くなってる……エストに勝てるようなヤツって、いるのかな……。
「って言うか、ロゼっち地味に掃除、洗濯、お料理と家庭スキル、フル完備の優良物件なのよね……おまけに、私と五分の強者……ちょっと惹かれるわね……ねぇ、私のお嫁さんにならない?」
なんでそうなる……と言うか私に振るなっての!
でも、ネタ振りされたら付き合うのが流儀なのよねーしゃあないか。
「えー、そう言う事なら、逆が良いな……エストが私の嫁っ! そのおっきいヤツを毎日揉む権利は捨てがたいわっ!」
「そ、そんなっ! 私のことはカラダ目当てだったのね! あんまりだわっ!」
なんか、泣き崩れる仕草をするエスト……ホント、ノリが良いよね。
「ふはははっ! お主らも仲が良いなぁ……もう、結婚でもなんでするが良い!
実は、ワシ……性転換の秘薬と言うのを持っとるんじゃ……欲しければくれてやるぞい?」
「その話を是非、詳しく……魔王様っ!」
何故か、前のめりな様子で話に割り込むリアン。
なんかもう、魔王様に掴みかからんばかりの勢い……何、その真剣な顔……?
「リ、リアン……?」
「そ、それさえあれば私の夢がっ! 魔王様! それいくらですか! いくらだって出しますよっ! ロゼお姉さま……一回だけロゼお兄様になってみませんか?」
リアンが何言ってるのか解りません。
なんか斜め上の事を言ってギュッと抱きつくと、ルスカも負けじと張り合って、二人の間に見えない火花が散る……なんだろね。これ。
と言うか、魔王様がドン引いてる……なんとも、レアな光景だった。
まぁ……良く解らないけど。
愛されてるのは悪い気分じゃないよね……そう思っとこう! きっと考えたら負けだ!
やがて、一際大きな扉の前に私達はたどり着く。
「さて、ここがまず最初のボスルームじゃな……冗談もこれくらいにしておくとしよう。
HQ、HQッ! 魔王城CIC応答せよ! ワシじゃ! うむ、通信回線は感度良好……問題ないようじゃな……各員、作戦の準備は出来ておるな?」
魔王様が例の通信アイテムで、魔王城へ連絡を取る。
今回、魔王軍の精鋭空挺魔術師団とか言うのが、このダンジョンの地上部近辺に展開、支援作戦に当たっているとの事だった。
更に上空には空中魔王城が待機中……城というより、逆さまにした山みたいな超巨大な奴らしい。
「よしよし……空挺魔術師団もすでに魔王城より降下済みで、配置についたようじゃな……では、予定通り極大魔術”円環の理”を発動じゃ!」
「魔王様……何か凄そうなんだけど、何を始めたの?」
「まぁ、効果自体は地味なもんなんだがのう……とにかく、準備は完了じゃ! さぁ、こちらも始めるとするかのう……。
皆の衆……最初に言っておくが、これは戦いと言うより狩りじゃ……狩りは獲物と五分の条件である必要なぞないのだ……まぁ、勝負はすでに決したも同然という事じゃ……気楽にやろうぞ。」
……魔王様のドヤ顔が凄い。
魔王様って、直接戦闘じゃ微妙なんだけど……こう言う搦め手の作戦行動とかやらせると、ホント生き生きしてる。
「ホントに、大丈夫? 魔王様のやる事って意外と穴が多いしねぇ……。」
「ま、まぁ、見ておるが良いぞ……敵のダンジョンマスターとやらがワシの想定したとおり、わざわざ挨拶に出向いてくるような律儀者なら、このダンジョン……ご丁寧に攻略するまでもないわ。ひとまず、ロゼ殿……先頭を譲ってやろう。」
……そう言って、魔王様がニヤリと笑うと後ろに下がる……何を企んでいるのやら。
エストと並んで、ボスルームの扉に触れるとゆっくりと開いていく……。
この女子共……魔王様という耳年増様がいらっしゃるので、割と下ネタトークとかもしてたりします。(笑)
まぁ、全員男っ気なんてないですけどね……女子高生の下ネタトークみたいなもんです。
エストあたりは結構見栄張ってますけど、ロゼは本気で解ってない系です。
ちなみに、円環の理の英訳は”Law of Cycles”だそうですけど、あえて”Law of Torus”としてます。
ちなみに、Torusってのは位相幾何学用語で、要するにドーナツ型の事です。
詳しくはググってもいいけど、きっと何言ってるか解らなくなると思うよ。
5/12 タイトルとあらすじを変更しました。
ついでに言うと、ダニオが何気に主人公っぽくなってきたので、異世界転移タグも追加しました。




