第七話「紳士の戦い! ダニオは決して歪みねぇ!」④
「……マスター様! そんなっ! 私を捨てないでっ! あうっ!」
またしがみついて来るロリーを足蹴にして、追い払う。
……なんか、傍から見たら俺、金色夜叉みたいだお? 俺氏、あの話良く知らんのだけど、しつこい女を学ラン野郎が振るリア充死ね的な話なんだよね?
やっべ、俺氏いよいよリア充だわ……マジ、つれー。
「ええいっ! まとわりつくなこのポンコツダンジョンコアがっ!
と言うか……それだけじゃないんでしょ! どうせお前一人じゃどうにもならない位に困ったことになったから、俺氏に泣きついてきたんじゃないの?
すっげぇ必死だし! もうなりふりとか後先、考えてないでしょ! このチョロインッ!」
「そ、そうです……実はそっちが本題なんです! 実は、北の山向うの氷結ダンジョンの主から、苦情と挑戦状が来てるんです……。ダンジョンコアには、その辺対応する権限がないので、困ってます!
話し合おうにも、まずはマスターを出せと言われてしまい……話しにならないのです! それもあって、私はこうやってマスター様の前に出てきたんです!」
ああ……そういや、そんなイベントもあったなぁ……。
地脈マナの奪い合いとか、周辺地域の利権調整とかの手段で、お互いの守護者をダンジョンに送り込みあって、一定期間でどこまで攻略できるか競うってやつだ。
昔は各地のダンジョンを仕切る調停者ってのがいたらしいんだけど……そいつも飽きたんだか知らないけど、随分前に居なくなって久しいらしい……。
俺氏なんて、完全に伝聞のみ……そいつが居たのって、いつの事なんだか知らねーし。
けど、今のところ、そいつの作ったルールの名残がかろうじて機能している感じ。
なにせ、このダンジョン……世界の敵認定されるくらいだから、そりゃ当然挑戦とかされるわなー。
氷結ダンジョンは、山一つ向こう側なんだけど、接続してる地脈自体は裏のバンナム山って事で共通してる訳で……。
マナ不活性期だから、どこもマナの消費には神経質になってるし……そんな中、マナの流れがおかしくなるくらいの勢いで分捕り始めちゃったら、そりゃあ向こうにも盛大に迷惑かけるだろうから、キレるわなー。
こりゃ、ロゼ達の迷宮攻略以前にあっちこっちから挑戦される流れなんじゃねーの?
俺の時は、そもそもそう言う風にならないように色々気を使ってたし、たまに賄賂とか送って黙らせてたけど。
こいつ……その手の調整もしてねぇだろうし、マナも足りなきゃそこら辺から分捕りとか好き放題……。
はっきり言って、無能オブ無能ッ!
ホント、こいつ自滅街道まっしぐらなんだよな……。
「ああ……他のダンジョンから挑戦されたって事ね……そりゃ、マスター不在じゃ話にならんから困ってるだろうさ。とりあえず……俺氏、名ばかりマスターだけど氷結ダンジョンの主と話してやるよ……。
ホワイトウルフとか言う獣人だったと思ったんだけど、挑戦は受けるしかない……。そもそも、断ったら問答無用でマナ利権ごっそり持ってかれるから、一気にジリ貧だお。」
「あ、はい……ありがとうございます! 私も全面的に賛同します! 不戦敗とかや~ですの!」
「そうすると……こっちはロゼ達にでも攻略に行かせてみるか……他の奴は基本命令受け待ち君だから使えないっしょ。
一応、ロゼって迷宮守護者だから、参戦資格はあると思う……相手がゴネたら、そこはゴリ押しで! 氷結ダンジョンって確か20層程度のしょっぼいとこだろ……あいつらなら楽勝だろうよ。
迎撃フェイズは……あっちの守護者とかたかが知れてるし、ボリノークマッサーV2バスターでも上層に持ってくりゃ、なんとかなんだろ。」
「さ、さすがはマスター様! もう素晴らしすぎます……お礼代わりと言ってはなんですが、私の事好きにしてください。私のこの感情……きっと愛というものだと思いますの……マスターにだったら、何されても平気です! でも……その代わり、初めては優しくしてください。」
そう言って、頬を赤く染めて、抱きつこうとするリリエンヌ。
何が初めては優しくしてぇ……なんだか、こいつホントに意味解って言ってんのかな? たぶん、解ってない!
「だから、そう言うのは止めて……別に要りませんから。」
俺が冷たくそう返すとリリエンヌの表情がショボーンって感じになる。
ちょっと悪いことしたかなーって気にはなってくる……一応、今の愛の告白……だったりする?
だが、断るっ! 俺氏のような主人公ポジの奴は告られたって、なびかないって相場が決まってるのだ!
これぞ、まさにラブでコメな王道って奴だな……。
「とにかく、ここは元々俺のダンジョンなんだお……。だから、挑戦されたって事なら俺氏も手伝ってやるのは当然だお!」
それを聞いて、リリエンヌの表情がさっきと真逆にパァッと輝く……やっぱ、コイツちょろすぎ。
「あ、ありがとうございます! やっぱり、マスター様はマスター様です! 愛してます!」
こいつ……そんなアイシテルとか軽々しく連呼すんじゃねーよ。
照れるぜ……モテる俺氏はつれーわ。
「その代わり、あとでいくつか権限よこせよ……アイテム製作権限とか守護者の召喚権限とか欲しいんだけどさ! 今、やっとパンツとか作れるようになって、ロゼたんとこに転送出来るようになったんだ! 他の皆のコスチュームとか俺氏デザインしたいし、そろそろ武装とかもいいのあげたいんだ! な? それくらいいーじゃん!」
そう言うと、リリエンヌは真剣な顔でコクコクと頷く。
お、なんかこの調子だと押し切れる流れだ。
「なにせ、あいつら強化しないと、他のダンジョンで負けちゃったら元も子もないしな! それに機動騎士シリーズに対抗できるように、機動装甲とか実装させたりしたいな! 守護者も正直、やりすぎた感があるからさ……冒険者側を強化する! やっぱそうでないと面白くないじゃん。」
「わ、解りました……それ位なら、構いませんから! ……もう、マスター様にお手伝いいただけるなんて、それだけでリリエンヌ感激ですの! 今なら、私を自由にする権利も差し上げますのっ!」
あっさり受け入れられたよっ! ……こいつ、やっぱアホなんじゃないかなー。
まぁ、チョロイン状態だから、文字通りチョロい。
でも、自由にする権利とか要らない……俺氏の自制心がマッハで有頂天になりかねん。
こいつ、くぱぁしろとか言ったら、本気でやりかねん……そうなったら、この作品はR18確ッ!
……主人公を自覚するなら、この場は頑として耐えるんだ俺氏ッ!
「あのさ……ボク達ずっと友達だよねエンドだって、いいじゃんよ……清い関係でいようよ! なっ!
そんな事よりもだ! 飛天の眼の中継を再開するようにッ! なるべく早く! 今すぐに! あ、でも……君は見ない方がいいかもしれないな……きっと、大変な事になってると思うからね……これからは、大人の時間なんだぜ……君のような子供が見るもんじゃない。」
そう言って、俺は髪をかきあげると不敵に笑う……やべ、ちょっと俺氏カッコイイ!
紳士ゲージもフルマックス! やっぱ、俺って完全無欠の素敵紳士だよな。
絶対、ロゼとかああ見えて、内心俺に惚れてるし、リアンたんもきっと眼と眼があった瞬間ズキューン……抱いてってなるお。
「はぁ……解りました。マスターとの話し合いの邪魔になるからって、切ってましたが……マスターのご要望なら聞きますね……どうぞ。」
リリエンヌがそう言うと、飛天の眼の中継が再開される……。
だがしかしっ! 俺氏が期待していた百合百合プレイ……なんて光景はなかった。
いつも通り……暗闇の中、ロゼたんとリアンたんが抱き合って寝てるだけ……なんかどっちも裸っぽいけど、肝心なとこはシーツ被ってて見えない。
「な、なん……だと?」
「良く解りませんけど、このお二人はとっても仲良しさんなんですね……なんか、凄く満足そうな寝顔ですね……人間は女性同士でもこういう事をするんですね……。リリエンヌ、また一つ学習しました!」
よく見るとリアンたん……なんかほっぺとかツヤツヤだお!
俺氏断言します! これ事後です! 事後っ!
よく見ると手とか恋人繋ぎ状態で絡めあってるし! リアンたん……シーツの中でごそごそロゼの胸とか触ってるよね?
ロゼの首筋とかもよく見ると赤い痣みたいなのが出来てるし……これはいわゆるチスマークッ!!
うわぁ……なんてこった……全ては終わっていたのだぁああああっ!
絶望に打ちひしがれ、ブリッジ状態でガサガサと走り回る俺をなんかオロオロしながら、見守るリリエンヌ。
「畜生ッ! 畜生ッ! コンチクショウッ! フッザケルなぁあああああっ!」
血の涙を流す俺氏の絶叫と共に夜が更けていった……。
えーと、皆さん……お疲れ様でした。
ダニオ回は基本、こんな調子です……でも、ダニオにも相方が爆誕しました。(笑)
たぶん、今後も色々絡んできます。
ちなみに、金色夜叉はダニオが言うような話じゃありません。
絵面的にそう見えるだけで、実際はお宮が貫一を裏切って金持ちの嫁になるって言い出したもんで、炸裂カンイチキック! って感じだったりします。
なお、作品自体は作者尾崎紅葉死去によりエター化する所を、弟子の小栗風葉が引き継いで続き書いて完結させてたりします……凄いなぁ……。
なお、ダニオは主人公じゃありませんから!(笑)
次回はロゼたんのターンッ!




