第七話「紳士の戦い! ダニオは決して歪みねぇ!」②
「さぁ……お前の要求を聞かせてもらおうか! リリエンぬとやら!」
とりあえず、正座は止めにして、俺様椅子を召喚すると偉そうに足を組んで座る。
これぞ、立場を示す演出というヤツよ……なお、リリエンぬは体育座りで、デルタゾーンを公開中。
うむ! 悪くないぞ!
「あ、はい……まずリリエンヌは、苦情申し立てをさせていただきますの!
貴方様の送り込んだあの元迷宮守護者……あれは一体何なんですか!
アイツのせいで第12層は再起不能レベルの致命的損傷を受けました……酷いです! 断固抗議しますのっ!」
はぁ? 苦情申し立てとか何言ってんのコイツ……?
「ああ、なんかジャングル嫌いとかで盛大に焼き払ってたね……。
リセットとか効かないの? 迷宮内のオブジェクトとかいくら壊されたって再生なんて簡単でしょ。
って言うか、俺氏に言っても無理でーす! ロゼたんのやった事でーすっ! 俺にも止められません。
もう、泣き寝入りしかないお。」
「なんですか! それ! 無責任じゃないですかっ!
リセットはあくまでオブジェクト配置を入れ替えるってだけなので、あそこまで全部燃えてしまうと、もうどうにもなりません!
ジャングルの植物だって、成長促進させても元通りに戻すには数ヶ月はかかります!
どうしてくれるんですか! ご丁寧に緊急消火ユニットまで落とされたから、燃え広がって手に負えなくなってしまいました!
もう全焼確定です……まだ燃えてますから現状、閉鎖し一切立入禁止としています!
……ATベースも燃料と弾薬に引火して、ベースユニット自体が吹き飛んだから、再建しないと……!
ああ、もうフロア再建の見通しが全然立たないんですけどっ! もうフロア自体を放棄して、新規に作り直したほうが早いくらいです! フロア一階層まるまる焼失とか前代未聞です!」
「うん……まぁ、ご愁傷様ってヤツぅ? ロゼたん、火を見ると止まんなくなるらしいから……。
と言うか……11層からオープンフィールドで全モンスターリンクとかやりすぎでしょ。
10層までだって、精々練習ステージなのにデストラップてんこ盛りとか難しくしすぎ!
……あれじゃ、ただのクソゲーダンジョン! あえて言おうッ! カスであるとッ!
君はっきり言って、ダンジョン経営のセンスなさすぎ……ねぇ、バカなの? 死ぬの?」
「で、でもでもっ! ダンジョンは外敵を迎撃するためにあるのであって……攻略不可を目指すのは当然ですの!」
はぁ……ダンジョンコアなんかに迷宮経営やらすとこうなるのね……俺氏のようなダンジョンマスターが必要とされるのは、こう言う事なのね……まったく、使えん。
「あのさ……クソダンジョンって評判立って、誰も来ない過疎ダンジョンってもう存在価値無いでしょ。
ダンマスやるなら、侵入者のモチベーションを保てるくらいの難易度にしないと駄目。
ダンジョン・オブ・エンターティメンッツ! 解るぅ? 俺氏が何のために誰も死なない仕組みとか作ったと思ってんの?
もうちょっとでクリア出来る……いつかは最下層にたどり着ける……リスクに応じたお宝ゲット!
ハイリスク・ハイリターン! そう思わせないと、皆他行っちゃうよ……。
実際、冒険者減ってるのって気付いてる? おまけに君、マナ収支とかその辺全然、考えてないでしょ!
お前のせいで、世界ヤバいっ! 色んなとこに敵作って、どエラいことになってんのよ?
……むしろ、反省しる! もはや、全裸ジャンピング土下座でも貴様には生ぬるいわっ!」
そこまで言うと、なんかふくれっ面で涙目になってるリリエンヌ。
あれ……思ったより、人間的な反応。
んー、ちとボロカスに言い過ぎたかな? でも、こう言うのって初っ端からガツンと言ってやらないと駄目!
ベッキベキに心を折ってやってから、本題に入るのだ。
まぁ、ロゼたんみたいに物理的に心へし折ってからってのもありなんだろうけど。
俺氏、物理攻撃力とかないし……しがない文明人だもん。
「はい、なんか言い返せる? 異論があるなら、聞くお?」
「ううっ……ひぐっ……な、なんか色々すみません……リリエンヌが悪ぅございましたの……。
なので……その辺も含めて、ご相談をさせていただきたいと思いまして……駄目……ですか?
もう、マスターしか頼れないのです……リリエンヌは、もうどうしていいか解らなくなってるのですぅ……。」
あれ? こいつチョロくね? もっと反論してくるかと思ったのに、あっさり折れた……。
って言うか、泣くなよ……俺氏が悪いみたいじゃんかよ。
まぁ、俺氏としては、最終的にリアンちゃん達に迷宮クリアして貰えばいいんだけどさ。
今のままじゃ、何処かで無理ゲー状態になって行き詰まる……何よりコイツ、そもそもクリアさせる気が無いから、ひたすら何も考えずに拡張してるんだもんな。
はい、クソダンジョンです!
でも、ダンジョンコア自らご登場で、下手に出てきたってのなら、ちょっとつけ込んでこのクソガチダンジョンを少しは楽しめるように改装する……うん、それがいいよね。
なお、いくらチョロくても俺氏手出しはしない……何故なら、ノータッチは我々紳士の絶対原則だからっ!
ロリは愛でるものであり、エッチなこととかは駄目だお……絶対!
「……でも、俺氏にダンマス権限全面返還とかはしてくれないんだよね?」
「ハイ……それやったら、迷宮の機能停止コマンドを実行されるんですよね?
なので……それはなしの方向で……出来れば、私めにアドバイスなどをいただければと思いまして……。
私、あくまでダンジョンの統制システムに過ぎません……やはり、マスター様は必要なんですの。
なんでしたら、この身体も好きにしてもらっていいですよ? どうせ、使い捨ての人形のようなものですから。」
「……なにそれ、虫が良すぎ! その顔で好きにしてとか言われるとちょっとぐっと来たけど……。
俺氏、紳士の掟は絶対だから、色仕掛けとかやるだけ無駄だかんね!
でも、今度からその高度な痴女スタイルは止めて、コスチュームはスク水かセーラー服にしろ!
……セーラー服の場合はミニスカ生足か黒タイツ! パンツは縞パン! うん、これ絶対な!
まず、そこはいいね? 早速実践! 俺氏最初のお願い! この場で生コスチェン行ってみようか!」
「わ、解りました……お着替え……ですね!
見本は……マスターの脳内イメージをスキャンします……ちょっと失礼します。」
なんか、立ち上がって一瞬俺の頭に触ったと思ったら……。
リリエンヌたん、ピカッと光って次の瞬間にはセーラー服姿に変身した……。
一瞬裸になってたけど、見事なまでの絶壁&つるつるだったのを俺は見逃さなかった。
「こ、こうですか? 解りません!」
お、おう……セーラー服とかまじで、俺のイメージ通りのデザインだし……。
こうなったら徹底的に注文付けてやる!
「そうだな……髪型はポニーテールがいいなぁ……あと、パンツもちゃんと見せなさい。
リクエスト通りかちゃんとチェックするからね!」
俺が言うがままに、髪の毛をキュキュッと縛ってポニーテールにすると、少しだけ恥ずかしそうにスカートをたくし上げるリリエンヌ。
目線を合わせないようにしてるあたり、ちょっとは進歩したのか、本気で恥ずかしがってるのか。
さっきまで、フルオープンの痴女だったくせに……コイツ、侮れん!
うん、やっぱピンクの縞パンはイイネ! ロゼにあげたのと一緒だけど。
にしても、冷静に考えてみるとやっべ……なんだ、このシチェーション。
今なら、ちょっと手を伸ばして、その布切れを下にずらすだけで、リリエンヌたんの秘密ゾーンがご開帳っ!
ちょ、ちょっとグッと来るな……思わず、本当に手が伸びそうになる……。
いかんでー、俺氏! ここで、手を出すとか絶対ないからっ!
収まれ! 欲望にまみれた我が右腕よっ!
……いいか? これは要するに美人局ってやつなのだ。
手を出した所で、黒服がワラワラと出てきて、ちょっとお兄さん裏の事務所まで……ってなるのだ。
だが、鑑賞してる分には問題ない……向こうが勝手にやってるだけだもん。
俺氏は、あくまで見てるだけ……見てるだけなのだ! イエスロリータ! ノータッチ!
「あ、あのマスター……これでいいんですか?」
……まだスカートたくし上げ中のリリエンヌ。
だから、堂々とするなっての……あ、駄目だ……やっぱ萎えるわコイツ。
「まぁ、一応妥協できなくもないか……今度から、そのロリセーラー服姿で来るように! イイネ?
パンツチェックも毎回やるからな……早くスカートも下ろせ……なんか凄く犯罪臭がする……この絵面。
まぁいい……約束だからな、話を聞いてやろう!」
……このダンジョン、俺の管理離れてから問題だらけだから、色々改善して欲しいのは確かなのよね。
俺氏、これまで役立たずだったけど、ついにリアンちゃん達のお役に立てる機会がやってきたのだっ!
きっとロゼだって、俺氏に惚れ直すに違いない……デレるロゼの顔が思い浮かぶようだ。
「あ、はい! ありがとうございます!」
うん……なんか主導権取れたっぽいな……まじチョロいんですけどー。
とりあえず、このチョロインダンジョンコアに現状の問題点を列挙し、アドバイスもしてやることにした。
要約すると、もうちょっとユーザーフレンドリーな感じにしろと。
それと無駄にマナ食ってる下層のダンジョンもガンガン削って、今のマナ収入ととんとんまで縮小。
とりあえず、現状の数値を聞かせてもらった限りだと、今のマナ収入は最盛期の半分近くまで落ちてる。
やっぱ、マナ不活性期入ってるな……これ。
……200年位前にも一度あったけど、あの頃はまだまだ30階層くらいだったから、あんま影響なかったんだけど……。
マナ不活性期って、植物の生育とかも悪くなって、食料生産とかも激減するから大体戦乱が起きる……。
隣の芝は青く見えるもんで、食料が無くなると大抵手近なとこへ略奪だの侵略だのを始めるのが人の世の常なのだ。
その戦乱の中、彗星のように現れて、群雄割拠を平定し50年かけて魔王国を建国したのがサクラたんだったんだよな……。
魔王様がいなくなった後……もう一度軽めの不活性期が来て、リーダー不在のまま群雄割拠の大戦乱時代へ突入!
そして、魔王軍へ対抗する為に、各国をまとめ上げたカリスマリア充、勇者サナトスと魔王の後継者アッシュマーとの決戦……そして、勇者は死んで平和への礎となる……か。
うーん、俺氏もなにげに300年も生きてると壮大な歴史ドラマの一部になるのだなぁ……。
動かない世界の生き字引……俺氏! なんか、すげーぜ!
すまない……今回のダニオ回は、世界観説明回も兼ねてるんで割と長いんだ。
パッと出チョロイン、リリエンヌ。
残念ながら、色々残念なコです。




