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第四話「その名は、魔王さくらたん」②

「……ふーん、代替わりしたから諸々水に流せっての? けど、うちとの戦争はどうすんのよ?

 ぶっちゃけうちの方が勝ってるから、戦争止める理由はないんだけどさ。」


 それまで冷めた感じで、黙ってみてたエストちゃんが威圧的な感じで一言。

 いつもののんびり口調じゃなくて、武将モードだ……これ。


「……トリストリア聖国の青騎士殿か。

 じゃが話の前にまず、確認させてもらうが……お主は聖国の聖堂騎士ではなく、リアン殿下とルーシュ殿下の付き人と言う立場と言う事でよいのであろうか?」

 

「そ、そうよ……あくまで名目上だけど、そう言う事になってるわ。」


「……ならば、この場で政治的な話をするのは筋違いじゃな。

 お主も聖堂騎士と言う相応の立場なのは承知しておるが……もし、お主が聖国の聖堂騎士としてワシと話をするのであれば、その言葉……ワシと敵対する聖国の名代としての言葉として受け取らざるを得ぬのだが……その辺りはどう考えておるのじゃ?」

 

 ……うわ、それって要するに、お前の言葉を国の代表の言葉として受け取るって意味じゃない。

 エストもそれなりの立場なんだけど、いきなりハードル上げられて……これはキツい。


「そ、それは……確かにそうね……ええ、私はあくまでリアン殿下の雇われ傭兵ですからね。

 その立場という事で、あくまで一個人としてお話をさせてもらいます……。」


「ふむ、一個人として……か、ならばワシも同様一個人として話をするとしよう。

 お主、なかなか賢明じゃのう……気に入ったぞい……そう言う事なら、ワシも気兼ねなく話が出来る。

 まぁ、元々ワシとしては、聖国と無益な争いを続けるつもりはないのじゃ。

 ……と言うか、聖国もラピュカ皇国の解放が建前上の理由では無かったか?」


「そ、そうよ! 聖国とラピュカ皇国は元々同盟国だったんだから、当然でしょ。

 なにより、その目的は未だ途上……だからこそ、聖国としては戦争を止める理由がない……。」


「であれば……だ。

 ますます、このまま戦いを続けるのはスジが通らんではないか。

 先にワシが言ったようにラピュカ皇国は皇族が政権に復帰して、事実上元の鞘に戻っておる。

 ワシら魔王軍は言ってみれば、お主と同じ雇われ傭兵のようなもんなのじゃ。

 なんなら、皇族の名において聖国の行いは侵略行為だと非難声明でも発表させるかの?

 そうなったら、聖国は赤っ恥じゃぞ……なにせ、ラピュカの皇族と言えば、権威だけは世界有数じゃからの。」


「ぐ、ぐぬぬ……くっ……殺せ。」


 ……エスト、敗北宣言きました。

 

 うわぁ……魔王様、思ったより凄いな。

 ……何と言うか口も上手いし、政治的駆け引きってもんを解ってる……政治力高い!

 

 この人、少し位弱くても関係ないんじゃないかって気がしてきた。


「ほ、ほぇ? な、なんでそうなるんじゃ? わし、別に殺さんよ?

 なんでぇえええっ? ワシやっぱ悪の魔王様扱いなんかぁあああっ!」


 なんか、狼狽える魔王様……なるほど、この人想定外の出来事に弱いのかも。


「魔王様、今のはエストちゃんの敗北宣言みたいなもんだから、察してあげて!」


「そ、そうか……そ、そりゃ、すまなんだ……。

 と言うよりも、ぶっちゃけワシらも戦争どころではなくなったのでな……聖国と休戦協定を結べるならいくらでも譲歩するつもりじゃ。」

 

 それだけ言うと、魔王様は真剣な顔になる。

 

「戦争どころじゃなくなったって……あんたが弱くても、戦争に支障はないんじゃない?」


「……うむ、実はわしの封印が解けたのも、それなりの理由があるのじゃよ。

 まず、この世界に満ちる魔力……マナとも呼ばれておるのじゃが……。

 これが現状、おかしな流れになっておることに気付いておるか?」

 

「……んなこと、言われても解るわけないよ……私、魔法は全然駄目だし。

 具体的には……どゆこと?」


「……マナとはワシら生きとし生けるものの根源と言ってもいい……お主は魔法は使えんかもしれんが。

 その存在はマナによって成り立っていると言っても過言ではないのじゃ。

 そして、現状なんじゃが……本来世界中に平等に満ちているべきマナがこの世界の特定の場所に、極めて高濃度に集まってしまっておるのじゃ。

 逆にそこ以外の地域は、極端に薄まっておる……その結果、人間、魔物……すべてが弱体化しておるのじゃ。

 そして、その特定の場所とその付近では、逆の現象が起きておるのじゃ。

 これ自体は年単位で極めてゆっくり進行していたようなのじゃがな……それがここに来て一気に悪化したのじゃ。」

 

「いちいち勿体ぶるわねぇ……特定の地域ってどこ?」


「……お主らが挑戦しておったウルガン大迷宮とその周辺地域じゃな。

 なぁ、知っておったら教えて欲しい……あそこで何が起きておるのじゃ?

 本来解除に1000年かかるような多重次元封印式が自然崩壊するほどの魔力濃度低下など、ただ事ではあるまい……。

 冗談抜きで、これは世界が滅びかねん事態なのじゃぞ?」

 

 ……おいおいおい……。

 ダニオ……お前がダンマスクビになったせいで、世界規模の異常発生で、挙句に滅亡の危機とかどれだけなんだよっ!

 

 魔王様の言うとおりなら、めっちゃヤバいことになってるんじゃないの?

 

「……私は、何があったのかとかは良く知らないけど……ここ数年、各国で砂漠化の進行や不作が続いてるのは確かね。

 前魔王ギャプロンのラピュカ皇国侵攻も元を正せば魔王国での大凶作が原因なのよね……。

 迷宮については、3人に会う前の事は殆ど知らないの。

 個人的な印象としては……敵がおっそろしく強かったことかな……。

 聖国聖堂騎士でもトップクラスのはずのこの私が、一人では為す術もなかった。

 たぶん、リアン殿下やルーシュ殿下も……この二人は魔王ギャプロンの理不尽な命令に従ってたってだけだから、何も解ってない。

 詳しく知ってるとすれば、ロゼっち……かな。」

 

 そう言って、私を見つめるエスト……うん、やっぱそう来るよね?

 

 やれやれ……この魔王様には事情を話さないと納得してくれないよなぁ……。

 幸い敵対的って感じでもないし……ここはもう正直にぶっちゃけるかな。

 

「ほぅ……お主、只者では無いとは思ってはいたが……やはりか。

 そもそも、鬼神族なぞ……もう500年も前に滅んだ種族じゃからのう……。

 ワシも出来る限り、情報が欲しいのじゃ……頼む、これは世界の危機と言って差し支えないのじゃ。」


 真剣な顔の魔王様だった……あ、これマジっぽい。


「まぁ……隠しててもしょうがないか。

 まず、私のご主人様に当たるダニオって奴……そいつがウラガン大迷宮のダンジョンマスターなのよ。

 要するに、私は迷宮側……本来なら迷宮守護者になるはずだった存在よ。」


「なんと……お主、あの迷宮守護者なのか? 奴ら……どいつもこいつも厄介な奴らばかりであったぞ。

 我が一万の軍勢も精強たる部下達も次々と倒れ、このワシも50層の守護者と相討ちがやっとだったのだ……。

 お主……やはり敵に回さんで正解じゃったのう。

 しかし、何でまた守護者がダンジョンに挑んでおるのじゃ? 意味がわからん。」

 

「それがねぇ……あのバカ。

 そこの二人に迷宮クリアさせるとか言い出してさ……。

 おかげで、迷宮の管理システムに反乱起こされて、ダンマスクビになったの。

 でも、クリアさえ出来れば迷宮も用済みになるし、二人も解放される……だから、私が二人の迷宮攻略を手伝ってた。

 エストは……義によって助太刀ってとこかな。」

 

「なるほどのう……しかし、そのダニオという奴は何を思ってそんな暴挙に出たのじゃ?

 迷宮管理者がわざわざ自分の迷宮踏破の手助けをするなど、余程の理由があったのではないのか?

 と言うか……正直、トチ狂ったとしか思えんのじゃが。」

 

 物凄く気は進まなかったのだけど……事の顛末を魔王様へ説明する。

 

 最初は真剣に頷いてた魔王様……けれど、その表情がどんどん崩壊していく。

 

 やがて、最終的に膝をついて、両手を床につく例のポーズで固まる。

 エストも心の底から嫌そうな顔で脱力しきると、同じポーズに落ち着く。

 

 そうだよね……普通はそうなるよ。

 ……自分がロリコンだったことを思い出して、どうしても幼女に会いたいからって、ダンジョン捨てようとして、ダンマスクビになるとか、もうアホかバカかと。

 

 と言うか、思った以上に大事になってるんだけど、ホントどうすんだよ……これ。


ダニオの世界への影響力はんぱねー。(笑)

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