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第三話「とりあえず、お話しようか、魔王様?」④

「ロゼ嬢ちゃん、どうも魔王城に着いたみてぇだぞ。

 とりあえず、降りる支度を始めといてくれや。」


 急に馬車が止まったと思ったら、御者のおじさんが振り返ってそう告げた。

 長々と馬車に揺られている間にいつの間にか眠り込んでたんだけど、全然寝た気がしなくて、なんか無性に疲れた。

 

 板バネとか入れてて、居住性を考慮した駅馬車でこれなんだから、荷馬車とか馬なんかに乗せられてたら、ぐっでぐでになってたね……間違いなく。

 

「ありがと、バチスタさん……これいい馬車じゃない……帰りもお願いしていい?」


「もちろん……実はあいつらには、3往復分くらいの代金ふっかけちまったからな……帰りの足も任せとけって。

 魔王軍の真っ只中とか居心地ワリィけど……こう見えて俺も元冒険者だからな。

 奴らがちょっかい出してきたら、返り討ちにしてやるさ。」

 

 そう言って、バチスタさんが豪快に笑う。

 こっそりステータス魔法で見てみたら、この人何気にレベル15とかかなりの強者。

 

 ルドラルフの街の元冒険者の人達って……地味に相当な凄腕揃いなんじゃないかって気がする。

 

「……各々方おのおのがた、魔王城に到着いたしました。

 すでに出迎えの準備も出来ているとのことで、お支度が出来ているようであれば、お出で頂けないでしょうか。」

 

 魔王軍の隊長さんが恐る恐ると言った感じで、ゆっくりと馬車のドアを開けて覗き込んでくる。

 

 ちなみに、コイツなんか偉そうだったんで、渾身の腹パン決めてやったら、それだけでHP一桁になって危うく昇天しかけた。


 そんな彼を回復させて、死の淵から救ってあげたリアンはたぶん天使。

 

「はいはい……解ってるから、さっさと降りますよっと……。」


 降りようとしたら、ドアを支えてくれてた隊長さんがさり気なく手を貸してくれる。


「あらやだ……意外と紳士的じゃない……えっと、ホル隊長さんだっけ?」

 

「はっ! ……ロゼ殿の一撃でこのホル、目が覚めました!

 先の件、誠に無礼申し訳ない……重ね重ねお詫び申し上げます。

 青騎士殿も、リアン殿下、ルーシュ殿下もささ、どうぞお降りください……お足元にお気をつけて……。」


 キリッとした顔で敬礼するホル隊長。

 やっぱ、対話(物理)は口程にモノを言うってホントだね!

 

 謁見がどうのと言うのは、なんかすんなりまとまったようで、何事もなく私達4人は魔王様への謁見が叶うことになった。

 

 魔王城自体は……なんか、お城というより立派なお屋敷みたいな感じで意外とショボかった。


 でも、本来の魔王城は、空の上にあるとかでこの城はあくまで前線基地……。


 と言うか、この城……実はリアン達ラピュカ皇国のお城らしい……平和主義を掲げる国で軍備も脆弱だったせいで、魔王軍に攻められた結果、あっさり敗北してしまったらしい。

 

 ……平和主義なんて、有事においては何の役にも立たない。


 それについては、否定しないけど……いやだねぇ……力あるものこそ正義……みたいなノリ。

 戦争はんたーい。

 

 ……謁見の間みたいなとこで、お目通りとなると思ったのだけど。

 何故か、食堂みたいな所に通される。

 

 大きなテーブルには、キャンドルやら酒瓶が並べられていて、やたら豪華な食事の準備が出来ていた。

 一番奥の上座には紫髪の巻き毛ツインテールのチンチクリンなちっこいのがいて、美味そうにご飯食べてる……。

 

 ……なにこれ?

 

「ねぇ……エスト、あれ……誰?」


 小声で奥のチンチクリンについて、聞いてみる。

 

「……少なくとも魔王ギャプロンじゃないよぉ……アイツもっとメカメカしくてでっかい。

 全然知らない顔……リアンとルーシュはなんか知ってる?」

 

 二人も揃って、首を横に振る。

 

 とりあえず、何も言われないので、どうしていいのか解らず、途方に暮れる。

 

 けれども、ようやっと向こうがこっちに気付いたようで、食事を中断して顔を上げる。

 

「おお、すまんのぉ……来ておったのなら、声くらいかけてもらってよかったのじゃぞ……。

 ちょうど、食事時だったのでのう……お前達の分も用意させるから、まずは座ると良い。

 長旅ご苦労であった……食べて、飲んで一息付くといい……話はそれからでも構わんであろう?」


 チンチクリンがなんとも偉そうな口調でそう言うので皆、適当に腰掛ける。

 

 給仕が無言で出てくると、まず野菜だかなんだかの入ったゼリーっぽいのが出てきて、ワイン、スープと来て、その後は肉料理がドンと置かれる。

 

「前菜はズッキーニとカニのテリーヌ仕立て、カラフルで美味そうであろう?

 スープはトマトとバジルのスープ……バジルが香りとトマトの酸味が実に合う……。

 ワインはこの城の蔵にあったものを失敬した……なかなかの上物だと思うぞ?

 肉の方は、牛肉と完熟トマトのポアレ……甘くジューシィな焼きトマトと爽やかなバジルオイルを添えた、シンプルな塩味ステーキじゃ……これも美味いぞ……焼き加減は万人向けのミディアム・レアじゃ。

 ささ、冷めるとせっかくの料理が台無しじゃ……遠慮はいらんぞ。」

 

 まぁ、毒とか入ってないし、確かにお腹も空いてた……一口食べてみると美味しい!

 

 このチンチクリンが何者かは解らないのだけど……こっちは交渉(物理)のつもり満々だっただけに、調子狂う。

 ……なんとも妙な展開になってきた。

 

 食事のマナーとか良く解らないのだけど、隣に座ったリアンが教えてくれたので、見よう見真似で頑張ってみた!

 

 けど、途中から面倒くさくなったんで、もう適当に切り分けて好きなように食べる事にした。

 どうせ、なんちゃってメイドだし! マナーとか知らないしっ! これも全てダニオが悪いっ!

 

「……ロゼさん、ソースがほっぺに付いてますよ……もっと静かに食べないと……お行儀悪いです。」

 

 リアンが苦笑しながら口元をナプキンで拭いてくれた。

 あれー? 何この子供とお母さんみたいな構図。


「ふむ……姫殿下達はさすがに、落ち着いたもんじゃのう。

 だが、付き人の方はなんとも不慣れな感じじゃな……しかし、その豪快な食べっぷり……見てる方が嬉しくなるのう。

 お主、気に入ったぞ……使いの者達から話を聞いたが、見た目にそぐわず、なかなかの武人のようじゃのう。」

 

「褒められたと……思って良いのかな? って言うか、あんた何者?」


「ああ、すまぬの……自己紹介がまだだったな。

 ……ワシの名は魔王ルシファルファ……と言えば解るかのう?」


「……冗談でしょ? ……150年前の史上最悪、最強の災厄……。

 大陸全土を席巻した魔王の中の魔王ルシファルファ……。

 でも……伝承によると、身の丈3mの巨人だったって……名を騙るにしても大きく出すぎってもんでしょ。」

 

 呆れたようにエストが呟く。

 ルシファルファ? あの迷宮最深記録……50層まで到達としたと言う魔王かっ!

 

「なんじゃ……疑っとるのか? まぁ……仕方あるまい……ワシも随分、姿形が変わってしもうてのう。

 150年前、ギャプロン以外の四天王どもがワシを裏切って、寄ってたかってだまし討ちで封印なんぞしよってな。

 じゃが、ついぞ一週間ほど前に、その封印が解けてな……ようやっと念願の復活を遂げたばかりなんじゃ……。

 なんぞ、ギャプロンの奴も随分好き勝手やっておったらしくてのう……後始末に苦労しとるとこじゃ……。」

 

 ……てっきり魔王ギャプロンが出てくると思ってたのに……もっと上のが出て来るとか計算違いもいいとこだった!

まさかの迷宮最深記録保持者、魔王ルシファルファ様登場ッ!


ちなみに、この魔王様……拙作、『転生したら、ちびロリ娘~』に登場する千年魔王様を元にしてます。

まぁ、性格的に同一人物というわけでもないのですが、外観とか口調はほぼ一緒です。

所謂スター・システム的なものと思ってください。

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