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第三話「とりあえず、お話しようか、魔王様?」②

 ……迷宮攻略を目指す冒険者たちの為に自然発生した街ルドラルフ。

 

 宿屋からお風呂屋さん、武器、防具、雑貨に食料……ダンジョン攻略に必要な物の大抵がここには揃っていた。


 いくつかある冒険者向けの宿屋『浅煎りにぼし亭』……なんでこんな名前なのか知らないけど。

 私達はここを拠点として逗留している。

 

 お金はダンジョンのモンスター狩ってれば、素材とかお金をボロボロ落とすんで、全然不自由してない。

 

 ベテラン冒険達の中には、無理に奥を目指さずに10層くらいまでをウロウロして安全に狩りをして生計立ててるような人も多いらしい。

 ある意味、職業冒険者……そう言うのもアリっちゃアリなのね。


 さて……。

 いつも通り目を覚まし、起き上がって部屋を見渡すとエストに腕枕されながら、寝息を立てるリアンの姿が目に入る。

 

 エストももうすでに目を覚ましているようなのだけど、敢えてリアンが目を覚ますまで、そのままでいるつもりらしかった。

 

 目が合うと、ニッコリと微笑んで人差し指を口に当てて、静かにと言うジェスチャーをされる。

 なんか、妙に嬉しそうな感じ……。

 

 それにしても、ほとんど毎日のようにリアンの抱き枕にされていたものだから、いざ一人の目覚めとなると何となく寂しくもあった。

 

 ……一人じゃ寝れないと言うリアンの気持ちも少しはわかった気がする。

 

 どうしよう……そうか! なら、ルーシュを抱きまくらにすればいいのか。

 

 そのルーシュは……というと、またベッドから転げ落ちてる。

 この娘、一応まがりなりにも第一皇女殿下なんだけど、寝相が凄い。

 

 一番身近なお姉ちゃんなのに、リアンが寄り付かないのは、それもあるのかも。

 

 結論、抱枕要員はリアン一択!

 

 ぐぬぬ……明日から、エストとどっちがリアンを抱枕にするか勝負して決めよう!

 エストって、結構強いから練習相手にはもってこいなんだよね。

 

 まぁ、それはともかく……なんか下が騒がしい。

 

 昨日は第十層攻略したって言ったら、皆我が事のように喜んでくれて大宴会みたいになった。

 

 私達は、リアンとルーシュが寝てしまったので、早々に引き上げたんだけど。

 皆は、そのまま朝まで飲んでたみたい。

 

 ……ダニオ解雇による迷宮ハード化の影響はあっちこっちに飛び火してて、皆、迷宮攻略に行き詰ってるらしく、こう言うニュースは素直に嬉しいんだってさ。

 

「……エスト、なんか下が騒々しいから見てくるね! 二人をよろしく。」

 

「頼まれたよぉ……そうだねぇ……私もさっきから気になってたのよねぇ。

 なんか、すっごいピリピリする……どうも嫌な感じだよ……これ?

 私も二人起こして追い掛けるから先に行って、様子見お願いね……すぐ行くからさぁ。」

 

 ちゃちゃっと寝間着から、いつものメイド服に着替えて一階に降りると、すぐに解るくらい常連の皆が殺気立っていた。

 

「……おはよぉ……って、皆……どうしたの? すっごいピリピリしてんだけどさ。」


 見ると、髭のドワーフおじさんや傭兵のおっちゃん、静かに座ってる人達も油断なくそいつらを睨みつけていた。


 ……黒いローブに身を包んだなんとも胡散臭い奴……それも三人もいる。

 逆三角形の鳥っぽいのに流れ星を描いたエンブレムをこれ見よがしに見せつけながら、終始無言。

 何と言っても、全員変な仮面被ってて超怪しい。


「……ロゼっち、あれ……魔王軍の奴らだよぉ……。」


 いつの間にか背後に来ていたエストちゃんが小声でそう言いながら、私のダガーを手渡してくる。

 エストちゃんも、普段着のワンピース姿なんだけど、後ろ手に剣を隠し持ってる。

 

 露骨に臨戦態勢……思ったより、ヤバい相手なのか?


 でも、考えても見れば、警戒するのも当然だろう……エストちゃん、魔王軍と戦ってる聖国の聖堂騎士だし。

 魔王軍はあちこちで好き放題侵略しまくりで、かなり無茶苦茶……正直、何するか解らない。

 

 皆もだけど、はっきり言って一触即発のムード。

 

「……ワリィけど、うちは魔王軍お断りなんだ。

 何しに来たんだか知らんが……さっさとお引き取り願いたいな。」

 

 店主のボルカーノさんが威圧感たっぷりで前に出ると魔王軍の兵へそう告げた。

 

「……人間風情が吠えるな。

 リアン殿下とルーシュ殿下がここに逗留してるのは解っている。

 店主……迷惑は承知の上だ、さっさと呼んでこい……出てくるまで、ここで待たせてもらう。

 ああ……迷惑料なら先にくれてやろう……これで文句はあるまい?」

 

 そう言って、金貨の詰まった袋を床に投げ落とすと、横柄な態度のまま空いているテーブルに座り込む魔王軍の兵達。

 

 なんか面倒くさいのが来たなぁ……。

 

 ここは、保護者たる私が代わりに相手しよう……一応、リアン達も降りてきたみたいだけど。

 常連の皆がさりげなく壁を作って、女将さんが引っ込ませてくれたらしい。


 さすが、愛され系……ここの人達は、全員私達の味方だった。


「あのさぁ……魔王軍だかなんだか、知らないけどね……それが人に物を頼む態度?」


「子供? 何者だ……貴様。」


「私はリアン殿下とルーシュ殿下の家臣ロゼ……お二方に用があるってのなら、まずは私が話を聞かせてもらうわ。

 クソみたいな用件だったら……叩き斬られても文句は言わせない。

 私とあんたらどっちが強いか? それくらい解ってるよね?」

 

 そう言って、テーブルにダガーをドンと突き立てながら、凶悪な笑みを浮かべてみる。

 話し合いって、まずお互いの力関係を示してからってのが基本だと思うのよね。

 

「なにしやがる! このチビ! 小娘……我らを何だと思っている!」

 

 なんか一番の雑魚っぽいのが威勢よく立ち上がろうとしたのだけど、隊長っぽいのが抑える。

 

「待て! 貴様……その赤い蛇眼と髪……まさか、鬼神族なのか?

 わ、解った……我らも事を荒立てるつもりはない……殿下の代理人と言う事なら、貴様で構わん。

 まずは、話合おうじゃないか!」

 

 あれほど、強気で横柄だったくせになんかあっさり、日和ったコイツ。

 目がメッチャ泳いでる……ふふん、私の勝ち!

 

 後ろでエストちゃんや冒険者たちがサムズアップとかしてる。

 

 私に軽く威嚇された程度で、この有様では問題ないと思ったようで、立ち上がって魔王軍の兵士を囲んでた人達も三々五々、自分たちの居場所へ戻っていく。

 

「んで、殿下に何の用? 三行で手短にお願い。」


「お、おのれ……ガキが舐めるな……。」


 なんか小声で反抗的なセリフが聞こえたんで、もう一本のダガーを無言でテーブルに突き刺す。


 テーブルに穴開けちゃって、申し訳ないかなーと思いつつ、ボルカーノさんをちら見すると、いい笑顔でサムズアップ……気にすんなもっとやれって事かな。


「よく聞こえなかったんだけど、も一回言ってみ? ん?」


 もう一回、ダガーを突き立てる……ドコンと言う音と共に、ダガーがテーブルを貫通。


「……い、いや、なんでもない……です。

 ご、ご存知かもしれませんが……魔王様が殿下の見張りとして付けていた使い魔からの連絡が途絶えましてな。

 事故かもしれないと言うのは承知なのですが……。

 一度、釈明の為、魔王様の元へ出頭せよと……それを伝えに来た次第。」

 

 ……使い魔? ああ、なんか使い魔っぽいのがお風呂覗こうとしてたから、叩き落としちゃったんだっけ。

 ダニオは知らないって言い張ってたから、どこのどいつの仕業だって思ってたんだけど。

 あれ魔王の付けた見張りだったんだね……。

 

「うん、あれは事故だね……鳥みたいなやつでしょ? ごめんごめん、私がうっかり叩き落としちゃった!

 と言うか、乙女がお風呂入ってるとこにまで使い魔忍び込ませるとか、魔王様の品性疑っちゃうよ。

 どっかのクソ変態とやってることが一緒じゃない……やだやだ。」


 とりあえず、向かいの椅子に座って、足を組んでふんぞり返ってやる。 

 

「貴様! 我らが魔王様を愚弄するか! 重ね重ねの無礼! もはや許さぬ!」


 ガタッと雑魚っぽいのが剣を抜いて立ち上がるのを見て、冒険者の皆もガタッと一斉に立ち上がる。

 とりあえず、やりあうのが目的じゃないから、手を挙げて皆を抑える。

 

「あんた馬鹿? ちょっと煽られたくらいで、何熱くなってのよ……ここでやりあって、どうすんの?

 全員、首だけになって帰りたいなら、遠慮なくそうさせてもらうけど?」


 私がテーブルからダガーを引き抜くと、隊長の雑魚Bへの鉄拳制裁が炸裂する!


「貴様、何をやっているのだ! す……すまなかった。

 この馬鹿にはキツく言っておきますので……どうか、この場は穏便に済ませて欲しい。

 貴様もわきまえろ……いいから大人しくしてろっ!」

 

「な、何故です! 隊長! このような小娘風情に我らタイタンズがここまで愚弄されて、大人しく引き下がれと言うのですか!」


「……貴様は相手の実力も解らんのか? 戦ったら、間違いなくこちらが皆殺しにされる。

 そもそも、魔王様からも、事を荒立てるなと言われている。

 いいから、貴様はもう黙ってろ……以後、許可なく口を開くな……次は斬る。

 二度は言わない。」

 

 チンピラ雑魚兵Bもここまで言われては、引き下がるしか無かったようで、無言で座り込む。

 ……みせしめに、一人くらい始末したかったんだけど……ま、いいか。


「さすが、年長者……賢明ね。」


「あ、当たり前だ……伝説の鬼神族なんぞとやりあってたまるか……。

 貴様ら、とっくの昔に絶滅したはずではなかったのか……。」


 鬼神族? そういや私、そんなんだっけ。

 今の私ロゼとして召喚される前の私……最初の頃は覚えてたけど、この身体に馴染んじゃったから、なんかもうすっかり忘れてる。


 まぁ、どうでもいいんだけどね。


よし、ちょっとはファンタジーっぽくなってきた!


そして、ある意味、ロゼたん無双回。(笑)

ちなみに、ロゼは所謂オーガの眷属だったりします。


でも、なんかロリメイドにされちゃったし、リアン達と触れ合ううちに食人衝動とかは消えてなくなってます。

もっとも、基本的に脳筋でなにかと攻撃的なんで、彼女に交渉なんてさせると、まぁこうなります。(笑)


ちなみに、ロゼ達は毎日ダンジョン行ってる訳ではなく、宿屋でぼーっと過ごしたり、オープンフィールドで素材集めたりとかしてたりします。

宿屋でたまにウェイトレスみたいな事もしてるので、何気に皆のアイドル状態。

その辺の日常回もやってみてもいいかなー。

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