第8話 旅立ち
連続投稿2個目です
よーやっと旅に出ます。
お待たせして申し訳ないです...
エヌ歴2747年11月10日
学校終わりのいつも通りレイとの帰り道。
俺達は会話をするわけでもなくとぼとぼ歩いていた
...そろそろ、行くか
あれから俺は資金集めをしていた。
もっぱら金になる鉱石を売ったりしていただけだが。
旅をするのだ、資金が無くては話しにならん。
その期間、約2年。
そうして俺はなんと20万Gを貯めた。
...気づけば俺はもう中学生3年だ。
今日から俺は旅に出る。
目的は明確だが、それはとても長い旅になるだろう。
俺は一人で行く。
これは俺の問題だしな、他人を巻き込みたくはない。
みんなが寝た後に手紙だけ書いて、それで行こう。
「ゾール?そんな思い詰めた顔をしてどうしたの?」
...沈黙に耐えかねたのか、レイは俺の顔を見つめながら尋ねてくる。
突然の事だったから、俺は言葉が上手くまとまらなかった。
「あっ...ああいや別に何も無いよ!」
レイは疑いの眼差しで俺を見つめてきた。
「な、なんだよ...その目は。」
「ゾール...前から思っていたんだけどさ。 」
レイは一呼吸置いた後、立ち止まってから言った。
「...ゾールはあの事故の犯人を探しに行こうとしていない?」
「...!」
バレてる...!?
長い付き合いだけあって、さすが俺のことをわかっているな。
だが、本当のことを言うわけにはいかない。
そんな事言ったら、間違いなくコイツは付いてくるからな。
他人を巻き込みたくないし、白々しくても嘘をつかなくては...。
よし。
「い、いいいいいいや!な、何を言い出すんだよ...そっそんなわけ...」
噛んだ。
「...図星ね。」
「...」
バレてしまった、完全に。
さすがに白々し過ぎたかな...。
「はぁ...さすがね、ゾール。そのわかりやすさ、どうにかした方がいいわよ?」
レイは首振りながらヤレヤレといったポーズを取った。
「う、うっせぇ!」
「ま、大体わかってたよ。お母さんが亡くなった後から言い出すだろうなってね。...で、エルムさんやラシャには言ってるの?」
「...いや。」
「ふーん、わかった。出発は今日よね?私も準備するから待ってて。集合場所は駅でいい?」
「わかった、じゃあ夜の12時くらいに...って、は?」
「私も行くから、2人なら安心ね。」
やっぱり...
そーなるよねぇ...。
「こ、これは俺の問題だ!お前を巻き込むわけには...!」
「私、ゾールのお母さんに頼まれたのよ?ゾールの面倒の事。なにか危ないことをしそうになったらそばにいてあげてって。だから、付いてくのは当然でしょ?それに...」
「?」
「む、昔...約束したじゃない、一緒に旅に出るって...。」
...はいぃ?
「それは子供の頃の約束だろう!?」
「どちらにせよ!...私は絶対行くから。」
「し、しかし...!危険だってあるかも!」
「それは大丈夫よ」
レイは即答した。
「は、はぁ!?なんでまた...!」
「だって、ゾール言ったじゃない。守ってくれるって...私、信じてるから。」
......そういえば、昔そんな事言ってたなぁ〜俺...
「だ、だけど...!」
なおも反論しようとする俺に、レイは冷たい目で俺を睨みつけて、口を開く。
「ゾール、身の回りの事できる?料理、お金の管理やスケジュールとか...まさか外食で過ごそうって訳ないわよね?それに...」
「OK、今夜12時に俺の家の少し前くらいに集合な。」
「わかればよろしい。」
おお、神様。
俺の決意が揺らいだことをどうかお許しください...!
仕方が無いんです。
身の回りの整理ができるのは、レイしかいないんですから...!!
ーーーーーーーーーーーーーーー
フリードライト邸
「ただいま〜」
「おかえり!おにいちゃん!」
「おかえりなさいませ!」
いつも通りの光景。
俺が帰るとラシャとビロードが出迎えてくれる。
「...」
だが、しばらくはこの光景は見れなくなってしまう。
「...お兄ちゃん?」
「あっ...いや、なんでもないよ。」
はぁ...覚悟してはいたけど、やはりなんとも言えないものがある。
そりゃあ家族だもの、離れるのはツラい。
だけど...今回の旅は1人ではない。
...正直1人だけで行くのには少し不安があった。
だが、レイ1人居てくれるだけでも大変助かる。
危険はつきものだ、だけどそんなもの俺がどうにかしてやればいいな。
「お兄ちゃん変なの〜、今日は寝たら?」
ラシャはそんな俺の顔をのぞき込んでくる。
「ゾール様...お疲れのようでしたらお休みになられた方が...」
ビロードも心配そうだ。
「心遣いだけ、貰っとこうかな...でも大丈夫だよ。」
「...」
ラシャは何故か俺をすごい見つめてくるが、見なかった事にした。
2階に上がった俺は自分の部屋に入る。
「...この部屋ともしばらくお別れ、だな」
自室のベッドに腰をかけて、部屋を見渡す。
正直部屋に思い入れはないけども、やっぱり安心感が違う。
「...枕だけでも、持っていこうかな?」
しかしそんなもの持ち歩いて旅なんかしてられない。
枕は諦めよう...。
あ、そうだ。
前から書いてあった書き置きの手紙を、出して置こう...。
「...あれ?」
無いな...この机の上に置いてあったはずなんだけど。
念のため、引き出しや本棚などを探してみる。
が、無かった。
「...また書き直すかぁ」
また手紙を書き直すために引き出しから新しい紙を取り出してペンを持ったところで。
「たっだいま〜」
エルムが帰ってきた。
なので俺は手紙を中断し下に行き出迎える。
「おかえり姉ちゃん」
「おかえり〜!ねえ聞いてよ!お兄ちゃんちょっと元気ないんだよ〜、ね、ビロード?」
「えっいや別に」
「はい...ゾール様、お疲れのご様子で...」
余計なこと言わないでぇ!
エルム心配するじゃん!
「ゾールそれホント?寝てていいんだよ?」
「...そーいって俺の『甘苦エクスポーション・ガマガエル味』飲むつもりだろ?」
「......飲まんわ!!」
よし、話逸れた。
...甘苦エクスポーションの良さが分からぬ愚民め...
「元気そうならなによりです...ささ、ご飯の準備も出来ておりますよ!」
「おっ待ってました!」
「わーい!」
ビロードがそう言うと二人とも食堂に走っていってしまった。
俺もあとに続く。
「ん〜今日も美味しいねぇ」
「ホントですか!ありがとうございます!!」
エルムは基本何でも美味しいと言って平らげてしまう。
ま、実際ビロードの飯は美味しいんだが。
「ビロードさん、料理出来て顔もいいのになんで結婚出来ないんだろうね?」
「ぐっ...」
ラシャはいつもビロードに毒を吐く。
...なにか恨みでもあるのだろうか?
「あっこら、ラシャ...やめたげて」
そしてエルムが止めに入る頃になるとビロードは...
「どうせ...どうせ僕なんか...ブツブツ」
ネガティブスイッチが入る。
見慣れた光景だ...
「...」
「ゾール?生きてる??」
「あっ、あぁ姉ちゃん...生きてるよ」
エルムに話しかけられて慌てて返す、するとラシャはおもむろに立ち上がり
「...お兄ちゃん」
ポケットの中から一通の手紙を取り出した。
その手紙は...
「あっ...ラシャ...!お前!」
俺がついさっき探していた書き置きの手紙だった。
「これ...どういう事なの?」
ここで見られたかぁ...、ラシャめ、俺の部屋に勝手に入ったな。
「...ラシャ、どうしたの?」
事情を知らないエルムは飯を食いながら呑気にラシャに尋ねる。
「...お兄ちゃんは、お父さんとお母さんが死んじゃった事故が事件って分かった時から、ずっと犯人探しのために準備をしていたんだよ。」
「えっ...ということは...」
「...お兄ちゃん、一人で出てって犯人を探すみたいだよ。...私達家族に黙ってね」
「!!」
「そ、それは本当ですか...!」
クソ、こうなるのが嫌だから黙って出て行きたかったんだ!
「...俺は、お父さんとお母さんの仇を討ちたい。優しかった2人を殺した犯人にな。」
「ふーん...もし犯人を見つけたら、どうするのさ?お兄ちゃんは」
ラシャはいつものふんわりとした雰囲気がどこへ行ったのやら、とても冷たい目でこちらを問い詰めている。
「...制裁を加えるんだよ、俺のこの手で。」
「制裁...ね。お兄ちゃん」
「なんだよ...」
「〝殺す〟でしょ、見つけたら。」
「...」
「やっぱりね、お兄ちゃん単純だもんね。」
ラシャはおもむろに手紙を机に叩きつけた。
「ふざけないで、そんな事をしてお母さんとお父さんが喜ぶとでも?」
「それは...」
「お兄ちゃんがやろうとしてる事は、ただの殺しだよ。復讐とか言ったって、殺しは殺しなんだよ。」
「...」
「そんなもの、ただのお兄ちゃんの自己満足。誰も喜ばない。何も残らない。復讐なんて、何も生まないんだよ...なんでわからないの?」
...
薄々、わかっていた
殺した所で、何になるのか?
誰かが喜ぶのか?
答えはノーだ。
喜ぶのは...俺だけだ。
そう、ただの自己満足。
ようやく生き甲斐を見つけた俺にとって、これはある種の目標だったんだ。
わかっている、わかっているとも。
だが、それ以上に。
人を殺して自分はのうのうと生きてるヤツを許してやるほど...
俺は優しくはないんだ。
だから、俺は行く。
行かなければならない。
自己満足だとしても。
ただの殺しだとしても。
俺は、犯人を
殺す。
「わかった?お兄ちゃん...こんな事はもうやめて...」
「断る」
「...あのね、お兄ちゃん。私怒るよ?」
ラシャが怒るとこなんて見た事ねぇな...。
「誰がなんと言おうと、俺は行く。」
「ふざけんな!テメェの野郎としてることはフリードライトの名前に泥を塗ることなんだよ!わかってんのか!!」
「えっちょっ、ラシャ?」
「ラシャ様...」
エルムとビロードはお互いに肩を寄せ合い震えている。
俺も正直ちょっとブルってるけどここで負けるわけにはいかない。
「なら、俺はフリードライトの名前を...捨てるよ。」
「はぁ!?寝言は寝てから言えよ!!だいたい...」
このままじゃ埒があかない。
俺も強気でいくしかないな。
なので俺も机を思い切り叩いた。
「俺は真面目だ!!!誰がなんと言おうと!俺は行く!!もう決めたんだよ!!」
「勝手抜かすな!」
「俺はっ...!お父さんとお母さんを殺したヤツが!!今ものうのうと生きてるのが許せない!!!そんな奴を野放しにしておきたくないんだよォ!!!」
そして再び机を叩く。
...この机が結構高いブランド品だと思い出した時にはもう遅かった。
「あぁ...カ〇モクの机が...!」
エルムはとても悲しそうだ
...悪いけど、今はそれどころじゃない。
まだ何か言われるか、身構えていたが...ラシャは諦めたのか、心無しか雰囲気が元に戻ったような気がした。
「...そう、そこまで言うんならもうわたし達の意見は聞かないんだよね。」
「...ごめん」
「えっ長女抜きで話まとまっちゃう感じ!?...うぇーんビロードォ!」
「ちょっエルム様!抱きつかないでください!!」
エルムはよほど会話に入れなかったのがショックだったのか、ビロードに泣きついてしまった。
「お兄ちゃん、旅立ちは今日なんでしょ?」
「お、おう...そうだな。」
「わたしもついて行きたいけど...流石に無理かなぁ、お姉ちゃんの面倒みないといけないし。だから応援してるね。」
「えっ、私の面倒ってどういうことよ...!コホン、私もフリードライトの長女として家を開けれはしないわ。だから...せめてたまには連絡よこしてよね?」
「僕も、執事ですので...ゾール様をお見送りするしか出来ないです。...いつでも出迎えられるよう、掃除などは任せておいてください!」
「皆...ありがとう。...本当に、ごめん。」
「いいっていいって!ゾールも立派なフリード...」
「お兄ちゃんもフリードライトの家族なんだから!...でもこれだけは約束して」
「私のセリフ...」
「犯人を見つけても、殺さないこと。もし殺したらタダじゃ置かないからね?」
ラシャは裏を含んだ笑顔で見つめてくる。
「し、しかし...。」
「大丈夫!犯人連れて帰ってきたら、わたしが生きるのも辛いくらいのとっておきをするから...フフフ」
うん、犯人には少し同情してやらんでもない。
「わかった...頑張る。」
「よろしい!...あ」
ラシャはおもむろに手を叩いてこう尋ねてきた。
「旅はひとりで行くの?」
「いや、レイと...。」
瞬間、ラシャの目つきが変わる。
「お姉ちゃん、やっぱり私も行く。」
「えぇ!?」
「はぁ!?」
「行くの!行かないとダメなのぉ!!!」
「えっちょ、ええ!?」
なんてこった...
迷惑かけないって決意したばっかりでこれかよォ!
「いやいや...危険だぞ!」
「危険でもいいのぉ!いくの!!!」
ラシャはまるで聞く耳を持たない。
俺はエルムの方を向いた。
エルムはしばらく考えた後...
「...まぁ、いいんじゃね?」
と、とんでもない事を言い出した。
「はぁ!?」
ラシャは大喜びで飛び跳ねた。
「やったぁ!!これで決まりね!!」
......
まぁ、いいかぁ...
「はぁ...わかったよ、いざと言う時は守るけど、自衛手段持てよ」
「うん!わかってる!」
ラシャはドタバタと慌ただしく準備を始めた。
ラシャが準備している間
「なぁ...なんでラシャに旅の許可したんだよ。」
エルムに、さっきのことを聞いてみた。
「ん?それお前聞く?黙って行こうとしたヤツが??」
うっ...
「...あんた、危なさそうだから。
ラシャがいれば、無理はしないでしょ。」
ははぁ...なるほど。
まぁ、うん。
身内がいれば、安心感は違うよな。
...これは気を引き締めないとなぁ。
「...がんばりなさいよ?」
「わかってるって」
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フリードライト邸 玄関
ついに出発の時。
エルムとビロードが玄関まで見送りに来ていた。
二人とも、旅のためになにかものを用意してくれたようだ。
まずはエルムから、古ぼけた本を渡してきた
「はいこれ、旅のお役にどうぞ。」
「ありがとう...なにこれ?」
「魔道書よ」
「嫌味か!」
俺はもらった魔道書を叩きつけた。
「ラシャはこれ」
エルムはなんとお小遣い15000Gをラシャに渡した
「えっいいの!?ありがとうお姉ちゃん大好きっ!!」
「ゾールたかるなよ〜」
エルムがニヤニヤ笑いながらこちらを見つめる。
...世の中金じゃない、金じゃない...
そう言い聞かせて心を保つ事にした。
そんな俺に今度はビロードが物を持ってきた。
「僕はこれを...」
「...」
えっなにこれ
フォークじゃん
「食事に困らないように...」
「......ありがとう...」
「あ、あとこれも...」
こ、これは...
「渋甘ハイポーション...」
「旅のお供にとうぞ!」
......
「ありがとう...!!!!」
大切に飲もう。
「...さて、と。二人とも頑張ってね?定期的に連絡よこしてよね?」
「ゾール様、ラシャ様...頑張って下さいね!僕応援してます!」
「おう」
「うんっ!」
そして俺達は背を向ける。
「いってらっしゃ〜い!」
「いってらっしゃいませ!」
二人の声が聞こえる。
俺は少し涙ぐみそうになる...が。
それをこらえて、振り返り
そして大声で返した。
「...いってきます!」
「いってきまーす!」
進もう
先が長くても。
ここへ必ず、帰ってこれるためにも。
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「...遅い」
「ごめんごめん、家族に話してたんだよ。」
駅につくと、そこには待ちくたびれた様子のレイがいた。
「ま、いいわ...所で、さ」
レイは俺の腕にガッチリ抱きついてきているラシャを指さした。
「なんでいるの?」
「えへへ...私も行くの!」
「...ゾール。」
レイの目線が俺に来る。
「俺に言うなよ...色々、あったんだよ。」
「...そう、ラシャちゃん。あまり迷惑かけないでね」
「ふん、その言葉そのままかえすよ!」
レイとラシャの間にピリピリとした空気が流れる。
...先が思いやられる。
そういえば、レイは親の許可取ってるんだろうか?
「取ってるよ」
「まだ俺何も話してない」
「顔見れば大体わかるわ...うちの親、ゾールくんがいるならいいだろうってさ。」
俺を過大評価しないでくれ!!
「そんな事はいいのよ...ゾール、目的地は決まってるの?」
あぁ、そうだった...
まだコイツらに行くべきところを言ってなかったな。
「あぁ、まずはな...フリースの家に行こうと思うんだ。」
フリースの指紋が見つかってる。
やったかどうかは別としても、関わっていることは確かだ。
行かないわけにはいかないだろう。
「...まぁそれが妥当ね」
「だねー」
二人とも、それに納得してくれたようだった。
「よし、じゃあ...行くか。」
...俺達3人は、こうして旅の一歩を歩み出した。
続
ありがとうございます。
この先、頑張って旅を盛り上げたいと思います。
これからもよろしくお願いします!