第2話 悪戦苦闘中...
第2話です。
まだまだゲームで例えるとチュートリアルです。
うーん、落ち着かない。
赤ん坊の体ってやりずらいな・・・
トイレにも行けないし態勢も変えるとキツイ・・・
ことある事に不本意だが泣くしかないのだ。
唯一の救いは異世界なのに言語は日本語だという事である、何でかは知らないけど。
だけど俺は久しぶりに家族の温もりを感じることになった。
「はいはいゾール~・・・ご飯食べたいの?よしよし・・・」
お母さんはとても優しかった。
魔法の素質がないと医者に聞かされた時、お父さんもお母さんも驚きを隠せなかったようだが、それでも俺を可愛がってくれたのだ。
「あなたが魔法の素質が無くっても私の可愛い息子であることは変わらないわ・・・元気に育ってね。」
俺は不審がられないように子供っぽく振る舞うことに務めた。
だけど早く動き回りたい・・・
赤ん坊の体はいくら力を入れようとしても立ち上がることも出来ないし喋ろうとしても上手く行かない。
親に不審がられないように俺は親がいない時を見計らい歩く練習や喋る練習をした。
そんな努力が実ってか、俺が1歳を少し過ぎた後に歩けるようになった。
よし、お母さんに見せてやろう・・・
「ママー、ママー。」
子供っぽく、子供っぽく・・・
「ん?ゾール・・・?え、あ、あ・・・歩いてる!?」
びっくりしてるな・・・フフ、面白い。
「す、すごい・・・!!アナタ!ゾールが歩いてるわ!!」
お母さんは慌ててお父さんに声をかけた。
「んな馬鹿な事があるか・・・って、うおおおおお!?ほ、ホントじゃないか・・・!!?」
お父さんも清々しいくらいのリアクションを見せてくれる。
練習の甲斐があったな・・・よし次のステップだ!
「どう?すごいでしょ!」
言葉を喋れるアピールだっ!
「えっ・・・!?」
「なっ・・・!!」
おお、驚いてる驚いてる。
「ゾール・・・あなたもう喋れるの!?」
「そんな馬鹿な・・・!!?」
「すごい?すごい?」
俺はわざとそう聞く。
「ええ、凄いわ・・・!エルムの時よりかなり早いわ・・・!!」
「ゆ、夢でも見てる気分だ・・・!ゾール、お前はすごいヤツだ・・・!」
お父さんとお母さんは俺を抱き上げて喜んでいる。
「将来が楽しみね!」
「あぁ・・・魔法の素質なんてお前には要らないよ!ゾールはホントに僕らの自慢の息子だ!」
それ以来俺は動き回れることを活かし勉強を始めた。と言っても本を読むだけだが。
地球の時もやることが無くずっと勉強をしていたので勉強は得意だった。
そしてこの世界の色々なことが分かった。
まずこの世界の言語のこと、この世界各国での共通語はアルフランゲージと呼ばれている。が、まぁ日本語だ・・・漢字もご丁寧にある。
次に国や大陸の話、俺の住むこの国はアルフヘイムと呼ばれて、世界有数の大国家で治安も良い。
この世界には5つの大陸があり
①アトランティス
②レムリア
③メガラニカ
④ムー
⑤パシフィス
と言うらしい...俺の住むアルフヘイムはアトランティスにあるとの事。
また国や大陸以外にも冥界や天界、
はては死者の国までもある・・・信じられないが。
次に知ったのは世界に住む者達の事。
ご多分に漏れずやはりこの異世界には人間と呼ばれるもの以外にも色んな種族の者が生きているらしい。
その中でも見た目が人間に近く、理性的思考ができる者は人間族と呼ばれ
①ヒューマン
②エルフ
③ビースト
の3つに区分される。
ヒューマンは俺達人間の事だ、特に何も特殊能力も持たず平均的な能力を持っている。
エルフはヒューマンやビーストよりも古代から存在が確認されている種族だ。特徴は尖った耳、そしてこの世界の空気に含まれる魔力を自分の魔力として使用できる事である。
ヒューマンは体内の魔力が尽きたら休まないと魔力の再充填が行えないがエルフは空気中の魔力を吸い込み、自分の魔力として使えるのである。個人差はあるので連発できるかはまちまちだが優れた者は魔力切れを起こさず戦えるらしい。
ビーストは獣の力を持っていて有事の際は獣状態に変身して戦う、能力は様々で狼や狐、猫など獣の数だけ種類があり、それによって呼称も多少変わる。総じて力はほかの二種族を上回るが反面魔法を使うのは苦手。
この3種族は昔から友好関係で現在は協定を組んでおり過去争い合ったことは無い。また法律の権利で保証されていて殺せば当然罪となる。
その他は動物と魔物で区別されている。
動物はおなじみの犬や猫など地球でも存在する獣たちだ。
魔物と呼ばれている奴らはゴブリン、オークなどだ・・・。コイツらは人間とは敵対していて昔から何度か大きな戦争が起きている。
後は幻獣種と呼ばれるやつだろうか。
コイツらは極端に目撃情報が少ない、
ドラゴンやユニコーンなどがこれに当たり、コイツらの遺体などを研究所に出すと多額の報酬が貰えるらしい・・・
が、過去それを成し得たものは数少ない、目撃情報が少ないということもあるが問題はその強大な力である。
過去にドラゴンが1回だけ人間族に牙を向いたことがある、その時は悲惨だったらしく数々の英雄や国が散っていったらしい・・・。一国の総力戦をもってようやくそのドラゴンを討伐出来たほど。
現在は魔術も進歩しているので国が滅ぶ所までは行かないと思うがそれでも強大なことは変わりないのである。
後は・・・一番重要なのが残っているな、魔法の事だ。
魔法はこの世界で最も普及している技術だ、皆当たり前のように使える。
生活から戦争まで。ありとあらゆる場面で魔法はは使われ、技術は日々進歩している。そしてその進歩を進めているのが俺の家系、魔術研究家だ。
魔法にはそれぞれ属性があって
【ガーネット】・・・火属性。
【トルマリン】・・・水属性。
【サーペンティン】・・・雷属性。
【トリフェーン】・・・風属性。
【オブシディアン】・・・土属性。
【クォーツ】・・・光属性。
【スピネル】・・・闇属性。
と区分されている。
俺は超初級魔法とされるガーネットの放火魔法を使おうとした。
結果はマッチレベルの小さな炎が指からポッと出ただけで終わり。
お父さんもお母さんもこれには苦笑いしていた。
このことをアテナに報告したら
「壊滅的ですね!」
と思い切り笑われてしまった・・・。
「ホントにアテにならないんだな・・・!」
魔法は本気で諦めることにしよう。
俺は自己鍛錬を始めた、魔法がダメならそれ以外でカバーしなければ。
「ゾール~またその棒振り回してるの?」
「あっ・・・お姉ちゃん」
俺が庭でいつものように素振りをしていたら俺のお姉ちゃん・・・エルムが来てそう声をかけてきた。
姉ちゃんと言っても中身は子供だ。
精神年齢では圧倒的に俺の方が上である。
「あきないの?」
エルムは首をかしげて聞いてきた
「ん~だって俺魔法使えないから、それ以外で頑張らなくちゃ。」
「頑張り屋さんね、ゾール。偉い子、よしよし」
とエルムは俺の頭をよしよしと撫でてきた。
「や、やめてよ~・・・恥ずかしいよ」
やはり子供に頭を撫でられるのは恥ずかしい、俺は
「お、俺また素振りするから!お姉ちゃんもお勉強してなよ!」
と言いヤケクソに素振りを始めた。
「ちぇっ・・・わかったよ、頑張ってね。」
エルムは渋々部屋に戻っていった。
この世界には保育園や幼稚園はない、なので幼少期はこうして本で勉強するか自己鍛錬ばかりしていた。
そして、そんな生活を続けて5歳の時。
「201・・・202・・・」
いつもと変わらずに素振りを庭でしていたら
「・・・よく飽きないね」
と、どこからともなく声が聞こえた。
「ん?誰?」
周りをよく見渡すと隣の家の窓から女の子が顔を出していた。
「君は・・・?」
すると女の子はいきなり窓を閉めた。
「・・・?」
しばらくして隣の家の扉が勢いよく開き先程の女の子がこちらへやって来た。
「私の名前はレイ・コーデュロイ、いつも君を見てたんだ。」
金色の長い髪をサイドテールで縛ったエルフの少女はキリッとした凛々しい顔立ちでそう自己紹介をした。
「僕はゾール・フリードライト・・・いつも見てたってどういうこと?」
「私、友達居なくってね・・・いつも窓から剣を振ってる君を見てたんだ。」
毎回見られてたのか・・・恥ずかしいな。
「でね、今日声かけたのは・・・その・・・」
レイは少し頬を赤らめながらこういった
「私と・・・友達になってくれない?」
友達、か・・・
この世界に来てからそんな事考えてなかったなぁ。
断る理由もないし。
「いいよ!これから宜しくね、レイ!」
ベルベットはパアっと明るい表情となり
「うんっ!宜しくね!ゾール君!」
とにこやかにそう言ってきた。
うーん、君付けされるとなんともなぁ・・・
「君はいらないよ、そのままで大丈夫」
「そ、そう・・・?じゃあよろしくね!ゾール!」
こうして俺の始めての友達が出来たのであった。
俺はこの事もアテナに報告した、そしたら喜んでくれたのか
「大切にしてあげてくださいね!」
と言ってくれた。
それから毎日の日課である素振りはレイと一緒にするようになった。
ある時はごっこ遊びをしたり、ある時は一緒に本を読んだりした。
「ふっ・・・!ふっ・・・!」
「300!ゾールお疲れさま!」
今まで自分でしてたカウントをレイが代わりにやってくれた。
「ふぅーっ・・・疲れた・・・」
「ゾール~レイちゃん~お疲れさま」
お母さんが見計らったのかケーキとジュースをもって庭に来た。
「あっ、お母さん」
「ゾールのお母さん!こんにちは!」
「レイちゃん今日も元気だね~」
「はいっ!いつも元気です!」
レイはもう俺の家族ぐるみでの友達だった。
「ケーキ美味しい~!」
「私の手作りなのよ!どんどん食べてね!」
「ありがとう!ゾールのお母さん!」
うん、運動の後の甘いものは格別だよなぁ・・・!
ケーキを食べた後、レイの大好きな冒険ごっこをした。
「みて!あそこにコブリンが!」
レイは岩を指さしてそう言った。
「よぉーし、じゃあレイはそこで魔法を撃ってね!ボクは切り込む!」
俺はいつも剣を使った戦士役で、レイは魔法使い役だった。
「わかった!バーン!バーン!」
「えいっ!やぁ!」
「やったぁ!倒したね!」
レイがそう言ったので、俺も
「やったー!レイのお陰だよ!」
と、それに合わせる。
「はー楽しかった・・・!」
「そうだね・・・!」
遊び終わり、俺らは庭の草むらで並んで座っていた。
「私ね、将来旅団で旅がしたいんだ!敵を倒したり、困ってる人を助けたり!あとは世界の美味しいものとかを見つけたいんだ~!」
「レイはむしろその食べ物メインじゃない?」
俺はそうからかう
「も~馬鹿にしないでよ!冒険メインだよっ!」
レイは頬を膨らませて怒った。
「ごめんごめん・・・」
「まったくもう・・・、でもさ、やっぱり旅はゾールと行きたいなぁ~!」
「えっ、ボクと?」
「うん!ゾールいつも剣振ってて強いし!優しいし・・・それにかっこいいし・・・」
レイは最後の方になるにつれゴニョゴニョと聞き取りずらい音量になっていった
「ん?最後の方聞き取れなかった・・・もう一回言ってくれないか?」
「な、なんでもない!」
レイはわわわ!と大袈裟に否定した。
「・・・良かった、私ゾールと友達になれて。」
「なんで?」
「私、今までホントに友達居なかったからさ・・・ゾールに声かける時も不安でさ。でもゾールは友達になってくれて、それから毎回楽しくてさ!」
レイは上機嫌に笑顔でそう言った
「ボクもだよ・・・毎日の素振りもレイが来てくれてから楽しくなったし、ごっこ遊びもホントに楽しいよ。」
実際、ごっこ遊びは最初は抵抗があったがやってみると童心に帰って気がつけば夢中で遊んでいた。
「ね、私・・・これからも友達だよね!」
レイはこちらを見つめながら問いかけた。
「当たり前じゃないか!」
俺は笑顔を見せ元気よく答えた。
「えへへ・・・いつかホントに旅、でようね!」
「うん・・・もしもの時は、ボクがごっこ遊びの時みたいにレイを守るよ!」
言ってから、自分で少し恥ずかしいことを言ってしまったかな、と反省していた。しかし
「うん!その約束忘れないでよね!」
と、レイは本気にしてしまった。
俺は吹っ切れて
「任せてよ!」
そう答えた。
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「ゾール、いよいよ明日はアナタも小学生ね!」
そうか・・・もうそんな歳か。
「お父さんもお母さんも、期待しているよ!」
「ああ、お前ならやれる・・・あれから毎日勉強や自己鍛錬していたの、お父さん知っているからな。」
お父さんとお母さんは俺にそう言ってきた。
「うん!俺頑張るよ!」
「ゾールも遂に小学校か~」
と、エルムも話に入ってきた。
エルムは今小学2年生だ。
「小学校は恐ろしいぞ~頑張れよ~」
と俺の恐怖を煽るようにそう言ってきた。
「俺は姉ちゃんが魔法失敗した時の表情のが怖いけどね」
俺は皮肉で返した。
「ハハハ、こりゃ一本取られたなエルム!」
お父さんも思わず笑っていた
「なっ!?ゾール、この~!」
エルムは怒った
「お兄ちゃん、がっこう、がんばってて。」
コイツは俺の妹のラシャ、最近いろいろな言葉を覚え始めていた
「うん、ありがとうラシャ!」
「えへへ~」
ラシャは嬉しそうだ。
「ゾールー!」
「あっ、レイ」
レイが家にやってきた。
「やぁレイちゃん、いらっしゃい!」
「レイちゃんこんにちは~」
お父さんとお母さんはいつもどうり優しく迎えた。
「お父さんお母さんこんにちは!エルムさんもラシャちゃんもこんにちは!」
「こんにちは~」
「こんにちは!」
ふたりも元気よく返す
「ゾール!明日はいよいよ小学校ね!一緒にいこっ!」
レイは元気よくそう持ちかけてきた、俺もそのつもりだったので
「勿論、そのつもりだよ。」
「わーい!学校楽しみだね!」
俺にとっては2回目の小学校生活か・・・楽しみと言うより、変な気分だ。
周りは子供ばかりだろう、変に浮かないようにしないとな・・・。
ふとお母さんは何かを考えた後に手をポン、と叩き
「よしっ!今夜はご馳走しなきゃね!レイちゃんも御飯どう?お父さんとお母さん呼んで!」
そう張り切った顔で言った。
「いいの!?やったー!お父さんとお母さんに聞いてくるね!」
レイは顔を輝かせ走っていった。
その夜はレイの家族も交えてとても賑やかな晩御飯となった。
「レイちゃんも小学校頑張ってね!」
お母さんはレイに向かって声をかけた
「はいっ!がんばります!」
レイは元気よく返事した。
「わざわざこんなご馳走をすいません・・・!いつも娘がお世話になってます!」
レイの両親は深々と頭を下げた。
「いえいえ!レイちゃんにはうちのゾールもよくお世話になってます!むしろ今日無理言って来てくださってありがとうございます!」
お父さんは慌ててそう返す
「こほん・・・それでは今日は楽しく2人の小学進学祝いを行いましょー!」
お母さんはテンション高めでそう宣言した。
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晩御飯を食べ終えた後・・・レイは一人席を外していた俺に声をかけてきた。
「ゾール、明日ホントに楽しみだね!」
「あぁ・・・よっぽど楽しみなんだな、レイは。」
レイは先程からその話しかしていない、余程楽しみなのだろう。
「へへ、でもね。少し不安なんだ・・・友達出来るかな、とか勉強出来るかな、とか・・・」
まぁもっともである、俺も昔はそうだったし・・・。
「友達はレイならいっぱい出来るさ、勉強だって俺が付いてる、安心しなよ。」
俺はそう答えた。
「そう、かな?」
レイは不安そうに聞いてきた。
「ああ、俺が保証するよ。イザとなったら俺が助けるよ!」
俺はレイに元気を出してもらうためわざとらしく胸を張った。
「ふふ・・・レイはやっぱり優しいね!ありがとう!」
レイは元気になったようだ、それから夜ももう遅いからとコーデュロイ一家は帰っていった。
明日は小学校、子供とはいえ社会の一端に触れることになる。
今日はもう早くねることにしよう・・・。
続
どうでしたか?まだ続きます。
基本的に不定期なんで...(趣味だから)
ストーリーの突っ込みあれば遠慮なく。