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猫の獣人  作者: 川野満美
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命の代償

時代背景など、深く考えず気楽に読んでいただければと思います。

 月が青い光を瓦屋根に投げかけている宵の口。宴はこれから最高潮を迎えるところなのだが、今宵は少し様子が違っていた。脇役であるべき音楽が、主役の座を完全に奪ってしまっていた。大きな音でも耳障りな音でもない。舞台の隅で奏でられる静かな音色に、誰もが聴き入ってしまう。三味線の弦を撥が弾く度に響く何とも艶やかな音。尺八の深いため息に似た心に染み入る音。そして、歌い手の切なくも透き通る声。三つの音が奏でる見事な調和に、いつしか宴の騒ぎは鳴り止み、酒を酌み交わすのも忘れて耳を澄ませる。もののあわれを誘われて、涙する者もあった。曲も歌詞もありふれた内容で、特にずば抜けたところはみられないのだが、演奏があまりにも素晴らしいために、特別な音楽として、人々の心に響いた。

 奏者の変わった風貌のことはどうでも良くなっていた。

 三味線兼、歌い手の女も、尺八の男も、半分、猫であった。身体の大きさや形は人間に近かったが、顔は誤魔化しようもなく、猫そのもの。着物を着ているため、一見、精巧な猫の面を被っている人間だと思いがちだが、時折ぴくぴく動く耳と髭、それに大きな目の表面を滑って瞬きする瞼、口を開けた時に見える鋭い歯に長い舌は、到底作り物とは思えないし、着物の裾から覗く尻尾はどういう原理で動いているというのか。彼らは半分、猫なのだ。

 巷では、このように半分獣である人間がわずかばかり姿を現すようになっていた。半分物の怪の人間もいる。こちらは一般的に物の怪紛いと呼ばれている。順番としては物の怪紛いの方が先で、この、物の怪紛いを対処するために半分獣の人間が生み出されたと言われているが、正確なところは誰も分かっていない。ただ、半分獣の方は獣特有の身体能力を持ちながら、人の心をも合わせ持っており、義理人情を弁えていた。物の怪の方は身も心も物の怪で、人に害をなす。半分獣の人間は仲間であり、半分物の怪の人間は敵なのである。

 半分獣、即ち半獣は人間の生活に溶け込み、普通の人間同様に生きていた。故に、宴を盛り上げるために三味線や尺八を奏し、歌を歌う者があってもさしておかしなことではない。おかしなことではないが、若干の違和感はある。珍しい存在であることに変わりはないのだ。現に、最初彼らを目にした客人たちは、ざわめいたものである。猫だ、猫が演奏をするのか、と。しかし、ひとたび彼らの演奏を聴いて、猫であることなど誰もが忘れた。

 女は鼻から腹にかけて、そして足先が白い毛で、他は藤色の毛で覆われていた。翠玉色の瞳が印象的である。耳の後ろに金のかんざしを付けて、頭には柘植の櫛を挿していた。着物は藍色の絹地に絣が入った地味なものではあるが、橙色の地に銀糸で鶴の模様が入った帯が映えて美しかった。

 男は白地に黒の斑が入った短い毛で、痩せていて、精悍な顔つきをしていた。目は黄金色だ。黒地に猫の目に似た紋がついた着物に袴をはいている。

 二人共、前足というか手の形が半分人間だった。人間ほどの長さはないが、指が五本あり、鋭い爪は猫らしくどの指にも備わっていた。掌に肉球もあるようだ。

 さて、客人たちを虜にする演奏はこのまま続き、最後まで聴かせて拍手喝采を浴びるはずであったが、とんだ邪魔が入ってしまう。半分物の怪、即ち物の怪紛い数人が障子を突き破って乱入してきたのである。演奏に聞き耳を立てていた客人たちもこれにはさすがに驚き、わーきゃー言いながら逃げ惑った。物の怪紛いは半分人間の形をしているが、牙や角が生えていたり、眼球が飛び出していたり、腕が何本もあったりで、しかもその手には鎌や刀などの武器を握っていた。物の怪紛いはにやりと笑って品定めでもするように辺りを見廻し、逃げる客人を追まわし、武器を振るい始めた。客人の一人が後ろから肩を掴まれ、鎌で首を斬られるという時、鎌を持つ手に、何かが刺さり、鎌は手から落ちて畳に突き刺さった。物の怪紛いが手に刺さった物を抜き取ると、それは金のかんざしであった。

「うるさいねぇ。これじゃ、商売上がったりだよ。」

 正座していた猫の女がすっくと立ち上がる。脇に立っていた尺八の男が言う。

「やるのか?」

「仕方がないさ。やらなきゃ、あたしら、三味線にされちまうんだから。」

「洒落にならんな。」

 男はふっと笑って、跳んだ。客人に斬りかかろうとしている物の怪紛いに尺八を振り下ろし、後頭部を潰す。物の怪紛いは敢え無く倒れ伏す。ただの尺八ではなかった。鋼で作られた尺八だ。ついで、尺八に何かを仕込み、鋭く息を吹き込む。すると尺八から何かが飛び出し、物の怪紛いの飛び出た眼球に刺さる。金切り声をあげてもんどり打つ、物の怪紛い。尺八から飛び出したのは毒針である。

 女も負けていない。商売道具の三味線を舞台の片隅に立て掛けると、撥を逆手に持ち替えて、駆け出す。そして通りすがる物の怪紛いを片っ端から斬りつけていく。撥の先には鋼の刃が付けられている。敵が両隣にいる時は、片方を撥で、片方を爪で切り裂いた。殺傷能力の高い武器ではないが、彼女は急所を狙い、一撃で敵を倒していった。

 物の怪紛いはあっという間に骸と化した。敵を殲滅したにも関わらず、すっきりしない猫の二人。

「あーあ。客が皆いなくなっちまったよ。」

「お捻りをもらい損ねたな。」

 二人はがっかりして階下へ降りて行った。階下にも人影はない。騒ぎのせいで全員逃げてしまったようだ。

「冗談じゃないよ。今夜のお座敷代はどうしてくれるんだい?」

「その辺からもらっていくか?」

「馬鹿をお言い。半獣の身でそんなことしたら、どんな誹りを受けることか・・・!」

 彼らは、善い行いをすることしか許されていない。少しでも悪いことをしたら、その日から物の怪紛いと同じ扱いを受けることになってしまうのだ。だから彼らは半獣同士、日頃から行いには十分気を付けていた。人間の世界で平穏に暮らすために必要なことであった。彼らの心は人間なのだ。物の怪のように泥水を啜って生きるのは御免であった。

 店の者が戻ってくるまで待とうとも思ったが、事後処理に付き合わされるのも面倒だったので、金は諦めて外へ出た。

 表にも人はおらず、闇と静寂で満たされていた。二人はとぼとぼと歩き出す。夜行性なので提灯要らずだ。やがて、赤提灯を下げている一件の居酒屋を見つけて入る。店にいた客は振り返って、おや、という顔を一瞬したが、すぐに前に向き直り、何事もなく酒を煽った。

「熱燗と、何か肴になるものを頼むよ。」

「へい。毎度。」

 酒と漬物と鮎の塩焼きが出てくる。二人は各々自分で酒を注ぎ、ちびちび飲んだ。夜風に冷えた身体に染み渡る。箸を使って、器用に鮎から骨を外して食べる。丸かじりなんて下品な真似はしないのだ。と、そこへ新しい客が入ってくる。細面で、目鼻立ちが割とはっきりした、なかなかの色男だ。

「やあ、あんたたち。探したよ。」

 細面の男は許可もなしに二人の席に割り込んできた。二人は少し憮然としたが、すぐに興味をなくし、酒を飲み、鮎をつまんだ。

「さっきの店で助けられた客の一人さ。いや、本当に危なかった。命からがらとはこのことだぜ。あんたたち、芸も達者だが、腕も立つねぇ。」

 女は酒を飲み飲み言った。

「で? お捻りを渡しにわざわざきたのかい?」

 細面の男はへへへと喉の奥で笑った。

「お捻りより、いい話がある。」

 二人は手を止め、髭を上下に動かした。二人の反応に、細面の男は気を良くして、口の端を吊り上げた。

「そんなに難しいことじゃない。うちの旦那が出掛ける時に、ついて来るだけだ。」

「用心棒?」

 細面の男は楽しそうに笑う。

「話が早いねぇ。そう、用心棒だ。世の中物騒だからねぇ。あんたらはともかく、半分物の怪なんて輩がちょろちょろしてる。うちの旦那は慎重な人なのさ。・・・どうだい? 一人これで。」

 男は机の上に手を出し、人差し指と親指を立てて見せた。二人は鼻で笑う。

「他所を当たるんだね。」

 男は口だけ笑っていた。目の光は鋭く、殺気すら感じる。

「二十だぜ? 悪い話じゃないと思うが。」

 二人は眉を顰める。

「随分気前がいいじゃないか。」

「一体、どこへ出掛けるつもりだい?」

「慎重な人だと言っただろう。金で命が買えるか? さあ、どうする?」

「……。」

 二人は無言で答えた。男は嬉しそうに笑って、懐から本当にお捻りを取り出し、女の袖の下に入れた。

「前金だ。あんたたち、名はなんと?」

「鈴」

「松」

「俺は佐之助。屋敷に来たら、名を言いな。それで入れるようにしておく。じゃあな。」

 細面の男は身を翻して、さっさと店を出て行った。女、お鈴は膝の上でお捻りを開いた。十両ある。そして、包み紙に屋敷の場所が記されていた。

「前金にしては多すぎやしないか?」

「さあね。でも、あたしらの目標に少し近づいたのかもしれない。」

「どうかな。普通の悪党かも知れねぇぜ。」

「いずれにせよ、用心に越したことはないね。」

 遠くで虫の鳴く声が聞こえる。秋が近づく夏の夜は涼しい。


 お鈴と松は安宿の一室でそれぞれ物思いに耽ていた。壁際に布団を寄せ、壁を向いて横になるお鈴。松は障子を開けて、夜空にくっきりと浮かぶ三日月を立肘ついてぼんやり眺めている。二人は仕事をする時と宿に泊まる際、便宜上夫婦と名乗った。婚姻関係でもない男女が、たとえ猫の姿であろうとも、四六時中一緒にいるのは世間体がよろしくないからだ。しかし、彼らは夫婦でも愛人でも恋人でもなかった。仕事仲間であり、同じ目的をもつ同士である。それ以上でもそれ以下でもなく。お互い干渉しないこと。それが二人の暗黙の決め事であった。日常的な会話を交わすことは稀である。しかし、今宵は珍しく、月の光にでも感化されたのか、松の方から用件もなしにお鈴へ話しかけた。

「なあ、お鈴。お前には別の生活があったんだろう? 戻ったっていいんだぜ。敢えて手を汚すこたあねえ。」

「なんだい、いきなり。」

 お鈴は松の方へ寝返りを打ち、青緑の瞳に月明かりを反射させた。

「幸せだったんだろう? そいつを捨ててこの道を選んだ気がしれねえ。俺がお前なら今からでも飛んで帰るぜ。」

 お鈴は鼻筋に皺を寄せ、牙を剥いた。

「何、寝言を言ってんだい? あたしの手は最初から汚れてんのさ。知ってるだろう。今更澄んだ川の水でなんか生きられるもんかい。」

 松は三日月を黄金色の瞳に映しながら言う。

「いや、何。いろいろと勿体ねえと思ってな。お前ほどの女がこんな……」

「あたしはいつでもあんたの好きにされてもいいんだよ。」

 松は驚いて振り向いた。

「そういうつもりで言ったんじゃねえ。」

「わかってるさ。」

 ふん、と笑ってまた壁の方に向き直るお鈴。松は独り言のように呟く。

「他の男を想っている女に手を出すほど俺は飢えちゃいねえよ。」

「……。」

 お鈴も松も、それきり会話を止め、黙ってそれぞれの物思いに戻っていった。


 次の日の昼下がり、紙に書かれていた場所を訪れ、名を告げると、すぐさま屋敷の中へ通された。不愛想な男が顎でついて来るよう促す。立派な屋敷だった。磨き上げられた廊下の板が、鏡のように光っている。踏む度にギシギシ音が鳴るのは、古いからでも造りが甘いからでもなく、侵入者を察知するためで、鴬張りと言う。主の用心深さが窺える。一体何をそんなに用心しているのか知らないが。男がとある襖のところで屈み込み、おつれしやした、と声を掛ける。襖が開けられ、部屋の中へ入る二人。部屋の奥、一段高くなったところに四十路近くと思われる男が座っていた。青の紗綾型模様の着物に身を包んだ、銀杏髷の男。尖った顎に秀でた額。穏やかな表情の中で眼光が鋭い。お鈴と松は男の前に進み出て、正座し、深々と礼をして、男の言葉を待った。

「顔を上げてくれ。二人共、よく来てくれた。佐之助から話は聞いているな。私が誰で、何の商いをしているかは知っているか?」

 二人は、一応首を振った。この町に来て日は浅いが、大きな屋敷、とりわけ羽振りのいい人物の周辺はあらかじめ探りを入れてある。この町一番の大店とあらば、調べない訳がない。しかし、相手に要らぬ警戒心を与えないために、こういう場合、知らないふりを決め込むのが彼らの常套手段であった。男はにやりと笑った。

「そうか。知らないか。では、手短に説明させてもらおう。私は井原謙吉。井原屋の三代目で、材木問屋を営んでいる。これから、材木を卸しに行くのだが、道中、賊や物の怪に襲われないかと心配でね。お前さんたちに守ってもらいたい。ただ、それだけだ。」

 ただの材木ではなさそうだ。猫の目が疑心を孕むのを見て、謙吉は口元を歪めた。

「なぁに。材木は材木でも、南蛮渡来の黒檀や紫檀、それに鉄刀木たがやさんというわけだ。聞いたことくらいはあるだろう。」

 なるほど、希少価値の高い材木ならば、狙われることもありうる。そこへ持参する金も一緒にだ。

「あんたを守るのは、あたしらだけじゃないんだろう?」

「もちろん、用心棒はいるが、皆、人間でね。物の怪相手ではどうも頼りない。お前さんたちがいてくれると助かるのだ。やってくれるな?」

 異論はない。お鈴と松は沈黙をもって答える。謙吉はそれが標準であるという風に張り付いた笑みを浮かべた。

 純粋に南蛮渡来の材木だけが取引の品とは思えない。何か裏がある。髭を伝って来る得体の知れぬ感触に、お鈴と松は思わず耳をひくつかせた。心を許す気には到底なれないが、相手の方もそれは承知済みのようである。一癖も二癖もある男だ。お鈴と松に期待しているのは、懐くことではなく、ただ「力」のみ。それはお鈴と松も望むところだった。


 いざ、出立の時を迎える。謙吉は駕籠に乗り、その周りを用心棒たちが取り囲む形で移動する。先頭を行くのは佐之助、一番後ろにはお鈴と松が控える。

 まずは山を越えるのだと説明されていた。物々しい雰囲気を纏いながら、一行は街を抜けて山道へ入る。

 無駄口を利く者は誰もおらず、聞こえてくるのは自分たちが地面を踏みしめる音と、鳥の囀り、虫の声。それから木々を揺らす風の音。

 道中、お鈴と松は用心棒たちを目の端に幾度となく入れ、観察していた。人間は人間だが、どうも人間離れした様相を呈している。誰も彼もがはち切れんばかりの筋肉を有する巨漢で、至る所に残る傷跡は、過去に何事かあったのを連想させた。顔つきは揃いも揃って強面で、近づくことを躊躇わせる。人を手にかけた経験は一度や二度ではなかろう。謙吉は物の怪相手に不足であると言っていたが、謙遜としか思えない。物の怪紛いのような気配を漂わせている彼らは、宛ら、歩く凶器である。岩のような拳を見るにつけ、そんなもので殴られたら一溜りもないだろうと、冷たい汗が背筋を流れた。

 山道を暫く登ったところで、草叢が耳障りな音を立て、揺れる。すると、刃物を手にした男たちが瞬く間に一行を取り囲んだ。賊が現れたのだ。賊は、美味いものでも見つけたかのように舌なめずりをして、陰惨に笑った。

「待っていたぜ、井原屋。お前たちがここを通ることは分かっていた。さあ、大人しく金を置いて行きな。」

 お鈴と松は眉根を寄せた。賊は刃物こそ持っているが、少しばかり鍛えられた肉体を持った、汚い身なりをしているただの人。対する用心棒は、人の姿をした化け物。こんな輩を前にして、よくぞ啖呵を切れたものだ。呆れるより、同情する。

 駕籠から顔を覗かせた謙吉は、賊よりもえげつない笑みを浮かべて、言った。

「始末しろ。」

 主の命を受けて、用心棒たちが動く。腰に付けた武器には手を付けず、素手で殴りかかる。唸りをあげて振り下ろされる拳。卵が潰れるような音とともに、吹っ飛んでくる賊をお鈴がひらりと避ける。振り返れば、賊の一人が頭部を砕かれて地べたに突っ伏し、指先を痙攣させている。足下に散らばる脳味噌を見て、お鈴はうえっと口を覆った。

 賊は怯むことなく挑みかかってくる。用心棒を素早く斬りつけて、飛び退る。用心棒の着物が斜めに切れて、逞しすぎる胸を曝け出す。皮一枚は斬れたのか? 血が出ている様子がない。賊はあからさまに怯んだが、時すでに遅し。用心棒は無表情に拳を繰り出し、賊の腹を抉った。賊の口から血の塊が溢れ出す。臓物を潰されたようだ。

 賊は流石に不利を悟って、一斉に逃走を図ったが、次々と用心棒に捉えられ、一撃のもとに命を落としていった。瞬く間の出来事だった。後には賊の死体が累々と積み上げられていく。お鈴と松の出る幕はなかった。

 謙吉は、ふん、とつまらなさそうに鼻を鳴らし、「いくぞ」と号令をかける。何事もなかったかのように、歩みが再開された。

 生臭い臭いがこびりついた用心棒たちの後を行くお鈴と松は、やれやれと額を拭った。この者たちをもってしてもまだ安心できない取引とは、一体どんなものだろうか。先が思いやられた。

 山を越え、森を歩く一行。お鈴は鼻先をひくひくと動かした。潮の匂いがする。海が近い。それを肯定するように、佐之助が言った。

「もうじき海に出る。そこで材木の取引だ。気を引き締めるようにな。」

 気ならとうに引き締まっている。お鈴と松は髭をぴんと張った。


 荒波に削り取られた海岸は思いの外狭く、部外者を許さないといった気配を感じ取れた。曇り空の下に揺蕩う大海原は、墨を溶かしたように昏い。これから何か良からぬことが起きることを暗示しているかのようだった。停泊している船には縄で縛られた材木が積まれているのが見える。

 謙吉が駕籠から降りて、船に近づくと、船の人間も縄梯子を伝って降りて来た。いずれ劣らぬ屈強な男たちばかりだったが、こちらの用心棒に比べれば、ほんの子供である。

「お待ちしておりましたよ。井原屋の旦那。」

 男たちの間から抜きん出てきた背の低い男。手と手を擦り合わせて満面の笑みを浮かべている。本気で笑っているのではないことくらい、お鈴や松にもすぐに感じ取れた。まだ若いようだが、顔面を皺くちゃにして笑っているため、年を食っているようにも見えた。皺に埋もれかけた目には野心の炎が隠しようもなくぎらついている。胡散臭く、薄気味悪い男だった。

「上物ばかりを取り揃えております。きっとお気に召すことでしょう。」

 謙吉は腕組みして、砂をにじった。不敵な笑みは健在だ。

「まずは、品を見せてもらおう。」

 男の合図で、船から材木が吊り下ろされる。皮も剥がれていない、黒檀の丸太だ。丸太は砂浜に置かれた棒の上を滑りながら、謙吉の目の前まで運ばれる。謙吉が顎をしゃくると、用心棒が丸太の横に手をかけ、上の部分を取り外した。どうやら蓋となっていたようである。丸太の中はくり抜かれており、黒い木屑が詰め込まれている。用心棒がその太い指で木屑を掻き寄せると、白い布が現れた。白い布が捲られて、出てきたものは……。

 一瞬、人かと思った。それも、蝋燭のような肌の色と膨れ上がった状況、それに鼻を劈くような異臭から、屍かと。しかし、その考えは、すぐに否定されることになる。腫れた瞼がぴくりと動いたのである。生きている……? お鈴はいつの間にか後退りをしていたらしく、後ろにいた松にぶつかって、軽く飛び上がった。松は松で、神妙な面持ちをしている。

「これは、素晴らしい……!」

 謙吉から漏れる感嘆に、お鈴と松の猫耳がぴくんと立った。謙吉の目は爛々と輝いている。

「これが、物の怪の力か!」

 男はほくそ笑んで、己の手を頻りに揉んでいる。

「そうです。死後十日の屍に物の怪の心臓を植え込んだところ、このような結果に……。既に一月経ちましたが、腐敗は止まっております。」

「生きた者にもやってみたか?」

 男は腹の底からくつくつと笑い声を上げた。

「そう慌てますな。」

 船からまた丸太が運ばれてくる。蓋が取り外され、白い布から現れ出たのは、眠っている「人」らしきもの。謙吉は飛びつくようにして、目を瞠った。

「これは! 死斑すら出ていないではないか!」

 男は肩を聳やかし、したり顔で物申す。

「もちろんでございます。生きているのですから。こちらは心臓を食わせただけです。」

「それで効果は?」

 謙吉は目の前に餌をぶら下げられ、それを焦らされているかのようにそわそわしていた。

「この者はもともと齢六十を過ぎておりました。それがこれ、このように若々しく変貌を遂げましてございます。」

 謙吉は何度も頷いて、天を仰いだ。曇天の向こうに、希望の光を見ているような眼差しであった。

「噂は真であったか……!」

 噂。お鈴と松も流れ聞いたことはある。物の怪の生血には不老不死の効果があると。誰が言い出したのかは知らないが、全く馬鹿なことを考えるものだと呆れていた。それを実行に移す馬鹿もいる。目の前にいる、こいつだ。

「物の怪にはならんのだな?」

「御覧の通りです。身も心も人のままでございます。ただし……」

 男が口を濁らせる。

「物の怪同様、人の血を欲します。人の血しか飢えを凌ぐ方法はありません。眠らせているのは、そういうわけでして。」

「構わん。永遠に生きられるのであれば、やむなしだ。して、物の怪自体も用意してあるのか?」

「もちろんでございます。とびきりの上物をご用意しておりますゆえ、ご安心を。」

 今度船から降ろされたのは、丸太ではなかった。黒檀で作られた、巨大な棺のようなもの。ゆっくり、慎重に降ろされていくが、その重みに縄が耐えられず、途中で切れて、棺は敢え無く砂浜へと落下した。その衝撃で蓋が吹っ飛び、中から異形の者が転がり出た。見紛うことなき、物の怪だ。

 砂に顔を埋めて、動かない。どうやら眠っているようだ。謙吉と男の顔から笑みが削げ落ちる。

「なっ、何ということだ! 大切な商品を落とすなど!」

 そう言っている間に、物の怪の身体がぴくりと動き出す。眠りから覚めようとしているのか? 男は叫ぶように怒鳴った。

「薬矢を! 薬矢を撃てい! もう一度眠らせるのだ!!」

 船の上から無数の矢が放たれ、物の怪に突き刺さる。物の怪は頭をぶんぶん振って、身を起こすと、背中に刺さった矢をいとも容易く引き抜き、立ち上がった。

 用心棒の三倍はあろう、青黒い肉体。伸ばしっぱなしの乱れた髪。黄ばんで尖った爪。乱杭歯ががばっと開き、耳を劈く咆哮が地を揺るがす。

「何!? 薬矢が効かぬとは?」

 何度も与えられているうちに耐性がついてしまったのだろう。物の怪は吠え猛り、攻撃を仕掛けてきた者たちに向けて、拳を振り上げた。船上へ届かない代わりに、船首付近に穴を開ける。船員の悲鳴がこだました。

「ぬう……かくなる上は仕方がない。奴を殺すのだ!!」

 謙吉の怒号で用心棒たちが走り出した。ある者は殴り、ある者は蹴り、ある者は斬りつけた。しかし……

「ぐぅっ……!」

「ぎゃああああ!!」

 屈強な用心棒たちが、文字通り蹴散らされ、捻り潰されていく。その様子を傍から窺っていたお鈴と松は目を見合わせ、一つ頷くと、物の怪に向かって駆け出した。

 お鈴が猫の跳躍で高く宙を舞い、物の怪の首筋を撥で斬りつける。手ごたえはあるものの、肉を断つところまでは至らない。次いで、松が尺八を吹く。物の怪の左目に毒針が突き刺さる。壮絶な痛みに見舞われてもんどりうつ物の怪。そのとばっちりを受けて松の体は吹っ飛ばされた。

「松!」

 松はくるくると回りながら、後足で砂の上に着地した。片目を閉じて、歯を食いしばる。

「痛ててて……。」

 痛がってはいるが、大したことはなさそうだ。少しだけ安堵したお鈴は、物の怪へと向き直り、巨大な手足から逃れつつ、反撃の機会を伺った。

物の怪は逆上して用心棒たちを片っ端から薙ぎ払い、内臓を破裂させ、脳天をかち割っていく。ついに、用心棒は一人残らず殺されてしまった。人間離れしていても、人間は人間であったということか。

お鈴が物の怪の首元へと跳ぶ。先程傷つけたのと同じ場所を撥で思い切り引き裂く。青い血が首筋から噴き出した。返り血をひらりと躱しながら、後方へ退く。物の怪は大量の失血からよろめき、首を押さえて膝をついた。その脳天目がけて、松が跳び上がりざま、尺八を振り下ろす。どん、と鈍い音を立てて、尺八が脳天に食い込んだ。しかし、物の怪はまだ倒れない。

「しぶといね!」

 お鈴が三味線の棹から何やら引き抜く。それは極細身の刀であった。松が打ち付けてできた脳天の傷に、その刀を針のごとく突き刺す。物の怪は全身を痙攣させ、やがて力が抜けたように砂浜へ倒れ伏した。

 物の怪と人の血が混じり合う惨状に、お鈴は鼻を覆った。猫の優れた嗅覚と人間の感覚が忌々しい。

「鼻が千切れそうだよ。」

「早いとこ、消え失せたいもんだな。」

 松の髭はだらりと垂れさがっている。と、その時。

「ぎゃああああ!!」

 背後で叫び声が上がって、お鈴と松は慌てて振り返った。見ると、この騒ぎで眠りを妨げられた生ける屍と、物の怪の心臓を食らったという男が黒檀の丸太から起き上がり、謙吉たちに襲いかかっていたのである。

「何てこったい!」

 お鈴は額に手を当てて、新たに巻き起こった問題を解決せんと足を向けた。雇主の謙吉は、喉元を食い千切られ、既に事切れていた。あれほどぎらついていた瞳は、どんな光も受け付けていない。永遠の生を求めた結果が、これとは。哀れを通り越して、滑稽ですらある。

「あああ、あんたがた! 助けてくださいよ!」

 物の怪を売りつけようとしていた男が、縋りついてくる。お鈴は猫目を細めて一瞥した。

「ろくでもないことを考えるからだよ。あんたもいっそ、食われちまいな。」

「そ、そんな……!」

 しかし、外道でも人間だ。黙って見過ごすわけにもいかない。半獣は人を助けこそすれ、逆はやってはいけない立場なのだ。お鈴はまず、生ける屍に刀の切っ先を向けた。

 敵意を感じ取った屍は、お鈴から後退り、船員を殴り倒して、腰に括り付けられていた匕首を抜き放った。

「半獣などに殺られるか……」

 喉の奥からくちゃくちゃと妙な音を立てながら屍は言った。腫れた瞼から覗く、白濁した眼。お鈴は、ふん、と鼻を鳴らした。

「あんたはもう、死んでるんだよ!」

 お鈴の鋭い一撃を、屍が匕首で受け止める。

「くっ……!」

 お鈴は後方へ飛び退いた。死ぬ前は武士だったのかもしれない。太刀筋と気迫が半端なかった。そこへきて、物の怪の力を併せ持つ。生半可では倒せない相手だ。

 松が毒針を放つ。屍の首に刺さったが、全く効いていない。屍は針を抜き取り、腐った口を歪めて笑った。松が尺八を振りかぶったが、屍は外見とは裏腹に身軽で、さっと避けたかと思うや、松の背後へ迅速に回った。

「危ない!」

 お鈴の声が届くより先に、松は宙を舞った。屍の攻撃を間一髪で躱す。

「ふう。普通の物の怪より厄介だぜ。」

 お鈴の隣にやって来て、松は顎を伝う汗を拭った。

「さて、どうする?」

 相談している間はない。屍が電光石火の早業で二人に詰め寄り、刃を振るう。お鈴と松は二手に分かれて飛び退った。そして、同時に砂を蹴り、屍に飛びかかる。挟み撃ちのつもりであったが、寸前で躱され、危うく同士討ちをしてしまうところだった。

「くそっ、やるな!」

 松は舌打ちをして、駆けだした。

「感心してる場合じゃないよ!」

 お鈴もそれに続く。半獣二人掛かりで屍に襲いかかる。武器をやたらめったら振り回しているうち、漸く攻撃が当たるようになる。しかし、腕や胴体が少しばかり切れたところで、あまり堪えていないのが目に見えてわかる。死んだ時に痛覚は手放したのだろう。やはり、急所は脳天か。

「松!」

「おうよ!」

 松はお鈴の言わんとするところを理解し、屍ではなく、彼が持つ匕首へ狙いを定めた。而して、尺八で思い切り叩き折る。武器であり防具であった短刀を失った屍は、その刹那振りかぶられたお鈴の刀を避けようと、とっさに腕を頭上に擡げたが、無駄な足掻き。お鈴の刀は屍の腕を斬り落とし、次いで脳天を切り裂いた。屍は膝から頽れ、倒れ伏し、動かなくなった。これで本当にあの世へ旅立てたというわけだ。

「そちらの片はついたようだな。」

 一息つく間もない。お鈴と松が振り返ると、物の怪の心臓を食らった男がじっとこちらを見ていた。その手は物の怪売りの首根っこを掴んでいる。既に血を吸われた後なのか、手足はだらりと垂れさがり、俯いた顔に生気は宿っていなかった。お鈴たちがそれを確認するや、男は手を放した。物の怪売りはぼとりと砂浜に落ちた。

 屍と戦っている間にやられてしまったようだ。まあ、守ってやる気がなかったというのが本音であるが。それを見透かした男が、目の端を笑わせて言う。

「お前たちは、こいつらの仲間じゃない。違うか?」

「確かに、違うね。」

 お鈴は右手に刀を持ったまま、男に近づいた。左手でかんざしをちょいと直す。その仕草は人間でなくとも女らしく、艶っぽく見えた。

 男は物の怪の心臓を食らったせいで若返っているらしいが、一点の曇りもない肌をしていて、血色も良好であった。一見、普通の健全な若者にしか見えない。その口から血が滴ってさえいなければ。血に濡れた唇が動く。

「ならば、話は早い。俺を殺してくれ。」

 言っている意味が、始め、上手く飲み込めず、固まる。お鈴はただでさえ大きな目を見開いて聞き返した。

「何だって?」

「殺せと言った。」

 男は砂の上に降り立って、お鈴を真っ直ぐに見つめた。

 松が、状況を掴もうとやってきて、髭の根元を掻いた。その度に髭が揺れる。男はふっと穏やかに笑った。

「俺は、今のところ正常な人の心を持っている。人の血で満たされているからな。しかし、これが空腹となれば、たちどころに人の血を求め、渇望し、獰猛な獣へと変貌を遂げる。人の心など消えてなくなる。俺は、物の怪と同じだ。生きていてはいけない存在なんだ。」

「そうかもしれない。でも、だからって素直に分かったとは言いたくないね。」

 男の眉間が顰められる。

「何故だ?」

「今のあんたからは殺気も何も感じられない。至って普通の人間じゃないか。無抵抗な人間を殺すだなんて、あたしらの主義に反するんだよ。」

「そんな甘っちょろいことを言っている場合か! 現に俺は何人も殺めたんだぞ! 放っておいたら新たな犠牲を呼ぶんだ。さっさと殺せ! 人の心を持っている、今のうちに。」

 お鈴は困惑の表情を浮かべて、首を振った。嫌だ。殺したくない。男の目と口が、ふと綻ぶ。

「いいんだ。あんたみたいないい女に殺されるんなら、本望だ。どうせ長くなかった命なんだ。長生きできるなんて文句にまんまと乗せられて、気付いたらこのざまさ。人様に悪さしたことがないのが唯一の取り柄だったのに……。せめて、人間らしく死にたい。頼むよ。一思いに、やってくれ。」

 微笑みながらも、真剣な眼差しがお鈴の胸を射抜く。お鈴は、刀の先を砂につけて引っ掻いていたが、やがて徐に持ち上げた。男の表情が一層緩む。懐かしそうな、嬉しそうな顔だ。

「俺は、不死身に近いが、心臓と頭をやれば死ぬはずだ。」

 お鈴は男の笑顔に目を背け、口をきつく結んで刀を構えた。瞼をきゅっと閉じて、一頻り震えてから、目をかっと見開き、そして、突いた。男の心臓を。男は口から自らの血を吐き、よろめいて自分の胸に刺さった刀を掴んだ。

「ぐふっ……それでいい。さあ、次は頭を……」

 背後で尺八を持つ手が震えている。

「は、早く……苦しい……」

 男の本音を受けて、松は尺八を振り下ろす。尺八は男の頭蓋骨を打ち砕き、致命傷を与えた。男はひくひくと痙攣しながらも口の端に笑みを湛え、頽れる。その拍子に刀が抜けて、支えを失った男の体は仰け反るようにして後ろへ倒れた。後に残ったのは、物の怪としての悲愴な顔ではなく、生を全うした人間が持つ、誇り高い微笑みだった。

 お鈴は目を再び閉じて、身を縮めた。細い体が小刻みに震えている。松は嘆息して足を屈め、男の開きっぱなしの瞼を閉じてやった。

「許せない……やっぱり、許せないよ。」

「……ああ。」

 震える肩に後ろから手をやる松。俯く顔には、しかし、鋭い眼光が宿っている。決して許すまじ。この世に悲しみを生み出し、二人を苛酷な運命へ導いた、まだ見ぬ敵を。


 雇主が死んでしまった今、元の街へ戻れば、町奉行の取り調べを受けるのは必至だ。他人のいざこざに巻き込まれるなんてまっぴら御免である。この状況を見れば、物の怪にやられたことは明白であるし、自分たちの説明はいらないだろう。生き残った船員たちもいることだし。お鈴と松は知らぬふりを決め込んで、他の町を目指すことにした。

 血腥い現場から踵を返し、森に分け入ろうとしたその時、二人の目の前を遮る者があった。

「佐之助……!」

「お前、生きていたのか?」

 謙吉と物の怪売りの交渉が始まった辺りから、姿を晦ましていた佐之助が、ここへ来て急に出てくるとは。

「殺されて堪るかい。形を潜めていて正解だったぜ。」

 佐之助は細面の顔をにやつかせた。お鈴と松は構わず歩き出した。佐之助はその半歩後ろをうろうろしながら話しかけてくる。

「あんたら、これからどこへ行くつもりだい?」

「どこだっていいだろう。謙吉は死んじまった。金も貰えないのにおめおめと元の町になんか戻れるかい。」

「全く、ろくでもない仕事を持ってきやがって。こっちが殺られるところだったじゃねぇか。」

 佐之助はからからと乾いた笑い声を立てた。

「まあ、いいじゃねぇか。こうして生きているんだから。」

 お鈴の大きな目が幾度も瞬かれる。

「あんた、主が死んだってのに、まるで堪えてないみたいだねぇ。あたしらは別の町にいくんだ。あんたは方向違いだろう。元の町にさっさと帰んな。店の後片付けやらなんやらあるだろう。こんなところで油を売ってる場合かい。」

 佐之助は楽しそうに笑っている。

「俺は、一つ所に留まらない主義なんでね。うまい話にゃなんでも飛びつく。そりゃあ、危ない橋を渡ることにもなるが、俺の仕事はその橋渡しってわけでね。」

 つまり、彼の仕事は金のある連中に取り入って、危険な仕事を斡旋することなのか。そんな奴に取り入られては迷惑と、お鈴と松は足を速めた。

「そんな邪険にしなさんなって。あんたら、どうせわけありなんだろう? 俺が扱う仕事の中にゃ、あんたら好みの話だってあるかもしれねぇし、そう悪いことでばかりでもねぇさ。どうだい? 一蓮托生とまではいかねぇが、俺を贔屓にして損はねぇぜ。」

「冗談じゃないね。あんたみたいな奴とつるんでいたら、首がいくつあっても足りやしない。他所をあたるんだね。」

 佐之助は喉の奥でくつくつと笑って、二人の前へ進み出た。

「ま、日陰者同士、また会うこともあるさ。いい話があったら持って来るからよ。そん時ゃ、よろしくな!」

 そう言うと、森の奥へ足早に消えていった。妙な奴に目を付けられてしまったものである。お鈴と松はげんなりしながら、歩みを続けた。


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