二つ目の依頼が終わる前に
「おい!兄ちゃん何だそれは!」
「見て分かりませんか?オークキングです。」
「確かに、少し見てくれは似てるかもしれんが毛が無いし、オークキングが馬に引かれて、そんな、嬉しそうな顔するか?」
そう、そうなのだ。たった一日で、こいつの中にある。Mの心を目覚めさせてしまったのだ。盗賊達に引き続き、オークキングまで。鞭一つで…
「気のせいですよ。取り敢えず、通して下さい。」
「キノセイデハゴザイマセンブヒブヒ!ゴシュジンサマニ、シテモラッテイルコトハ、イマ、ワタクシノイチバンノヨロコビデスブヒブ…アァ!」
クッソ!うるせぇ!こいつも、鞭で叩いたら喜ぶ様に成りやがって!それでも、オークの王様か!?
「何か、俺は勘違いしてたらしい。お前、ともんでもねぇ奴だな…
ああ、通っていいぞ。」
「ありがとうございます。」
もう、何言っても無駄そうだから、何も言わない。
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ギルドに着いた。オークキングには大人しく待っていたら、お仕置きしてやると言った。そしたら…
『ホントデスカブヒブヒ!?ワタクシ、イツマデモマッテイマスブヒブヒ!』って、言ってた。お前は、本当に残念な奴だよ
まずは先に、受付嬢さんに話しかけておこう。相変わらず、暇そうに頬杖を着いている…ん?少しだけ、様子がおかしいな?
「どうしたんですか?受付嬢さん?」
声をかけたら、死んだはずの人を見たかの様に目を大きく開けた。すると、直ぐに…
「アークさん!?い、生きていらしたんですか!?どうして!?」
おいおい、イキナリ物騒な事、言ったよこの人!てか、物騒の前に失礼じゃね?まだ、二日半位しかこの街離れてないのに…
「え?えぇと、俺は、こうして至って元気ですけど、普通に生きてますよ?」
「あっ、成る程!オークがいる森には入らなかったんですね。それが、一番です。命あっての物種なんですから。」
「オークキングなら、ギルドの脇に馬と一緒に、置いてありますよ。今からそれを、ギルドマスターに報告しようかと思っていまして。」
「はぁ、そうですか。分かりました。今、ギルドマスターをお呼びします。」
ん?さっきとは、打って変わってとても、落ち着いちゃいないか?まさか、捉えられる筈が無いと思って聞き流してる?…あの女失礼極まりないな。っ説教してやろうか!
どうでも良いけど、相変わらず都合のいい方に理解しようとするな。
「よ~!おかえり。仕事が速いな~。ギルドの脇だっけ?早速見に行こうか。」
そう言うと、俺と受付嬢さんを引きずって行った。何故ワザワザ引きずる?自分で歩けるわ!
おやおや、オークキングが珍しいのか?それとも、自分の手柄にしようとしているのか?かなりの人が集まっていた。
「おい!皆の衆、さっさと仕事しに行け!」
おっ!ギルドマスターらしく冒険者に命令してるよ。なんだかんだダメっぽそうに見えるけど、流石は皆に選ばれたリーダーだ。
「五月蝿いですよ!ギルドマスター!自分だって仕事してないじゃないですか!」
「そうだそうだ!知ってるんですよ。秘書兼、受付嬢さんの来ない時間を計って闘技場で賭け事に行ってるの!」
「それだけじゃないですよ!また、木剣買いに行ってたの見ましたよ!」
おいおい、仕事しろよ。秘書以外にはバレバレじゃないか。寧ろ此処までして何故秘書は気が付かない?その秘書も、どっかでサボってんじゃないのか?
「あっ!お前ら!今、それを言うか!?」
「ギルドマスター…どう言う事か説明ありますよね?」
おや?まさか、受付嬢さん貴方ですか?秘書は、貴方なんですか?数いる受付嬢で、まさか一番不真面目そうな貴方が秘書兼、受付嬢なのですね?
あ、ギルドマスターが物凄く小ちゃく見える。ダメだなこのギルド、サッサと依頼終わらせて、リタイア行きたい。
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アレから、一時間位かな?やっとギルドマス…おっさんの、説教が終了して、コッチにやって来た。半泣きだ…この人は、本当にギルドマスターなのか?年下の秘書に説教されて、泣くって…はあぁぁぁ
因みに、この一時間ドMキングを叩いてた。もう喜んでいても…否!ちゃんと嫌がってくれないと楽しくない!
「ずずぅ…すまんな、待たせてしまって。こいつがオークキングか…と言うか何で連れて来た!?」
遅っそ!もう嫌だ!調子が狂う…だけど、最初の目的である。おっさんを驚かす事は出来た。なんか知らないけど、受付嬢さんはキングを見て固まっている。一応良しとするか…
「まぁ、特に理由はありませんが。強いて言うなら驚かせてやろうと思っただけです。」
ん?何だ?気のせいか?今、一瞬笑っていた様な?そんな訳無いか。次の依頼が『奇跡の花』だっけ?
「オークキングは、お間させします。あっ、そいやぁオーク!お前、何で此処に進軍して来たんだ?」
「ソレハ、オーククイーンノメイレイデスブヒブヒ!マァ、ノリノリデシタケドブヒブヒ!ジッサイ、モウドウデモイイデスブヒブヒ!」
「やはり、オーククイーンか。」
「キングよりクイーンの方がえらいんですね。」
おお、受付嬢さん!もう、オークキングの事はいいのかい?平然と会話に入って来て、俺はビックリしたよ。
「いいや、オークキングに命令出来るオーククイーンは一体しかおらん。魔王直属魔獣である一体だけだ。」
ま、魔王!?たった三年で新しい魔王が出て来たのか?早過ぎるわ!
「ちょ!ちょっと、待ってください!魔王って、もう新しいのが現れたんですか!?」
「何だ?知らなかったのか?三ヶ月前、ご丁寧に聖王都と六王都全てに侵略を宣言したんだぞ?」
「………たった三年で、また侵略を再開するなんて………」
「ん?三年?何の話だ?魔王が前に侵略をして来たのは、約二百七十年ぶりで、初代魔王の時だけだ。二代目、三代目の魔王は、侵略に興味が無くワザワザ、侵略する気が無いからそっちからもしかけてくんな。と言って来たらしい。」
冷静になれ、俺。冷静になれ、俺。え?何?俺が地球で三年間過ごしてる内に、コッチは、二百七十年もたったの?ああ、だから六王都の事が分からなかったのか…あれ?俺コレまた、勇者活動を強制されんの?
「あの、では…勇者の方はどうなっているんですか?」
「勇者?勇者様なら、二ヶ月前に召喚されたそうだぞ。余り異世界人に迷惑はかけたくないのだか。宣言から、すぐに呼べば、少なからず今よりは強くなれただろうにな。」
ふぅ、そりゃあそうか。俺は、この世界に召喚されたのではない。転送されたのだから勇者とは、何の関係もない。少なくとも、この世界の為に戦う気は無い。それに、俺にはもう首輪はない。
…どうやら、全く関係の無い話だったな。次の依頼に行こう。
「では、もうその話は良いです。ありがとうございました。話は変わりますが、次の依頼に行きたいので、場所を教えてください。」
「おっ!もういいのか?それじゃあ、場所は東に四日ほど行くと、とても大きな山岳地帯がある。そこの何処かだ!…それと、問題があってな。この仕事が入ると、いつもやる奴がいてな。そいつが、お前と同行したいと言っているんだが…一緒連れて行ってはくれん「お断りします。」だろ、まだ言い終わってないぞ!?」
「依頼自体に問題はありませんが、誰かと一緒に仕事は無理です。」
「むぅ、まぁ仕方ないか…じゃあよろしくな。」
随分あっさりと、引き下がったな。まぁ良いか。サッサと終わらせますか。
「行く前に、花の形教えて貰って良いですか?」
「あっ、アークさん!此方の本の付箋が貼ってあるページに記載されておりますので。」
おお、受付嬢さん!貴方仕事出来るじゃないですか。本、持ってきただけだけどね。仕事が速いって意味では優秀、素晴らしいね。
「それじゃ!言って来ます。」
「ゴシュジンサマ!ワタクシハ、イッタイコラカラナニヲ、タノシミニイキテイケバヨロシイノデショウカブヒブヒ!?」
あの、バカ…まだ分からないのか?恐らく死刑だろうよ。
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「何故、進軍の次はBランクの仕事にしたんですか?」
「ん?ああ、進軍で怪我する事が、前提でこの仕事を選んでいたんだか。無傷で帰って来やがった。進軍行く前は二輪の花をとって来させる予定だったんだがな。恐っそろしいガキだよ。」
「私はもう、三つ目の依頼が何だか分かりましたが…大丈夫ですか?」
「ッククク!」
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「さっきぶりですが、通してください。」
「兄ちゃん速いな。もう、次の仕事かい?ああ、直ぐに開けるからな。…しかも、今回は良い相方がいて羨ましいよ。」
相方?何の話だ?ま、こいつにはもう事務的なこと以外、何も話すまい。
そんな決意をしている時…
「待っていたわよ。アークくん!」
え?ん~?えっと…どうも、二言…二日ぶりだね。
「……………………レベッカさん?」
「今、ちょっと間が長かったわね。もしかして無くとも、私の事忘れてた?」
うん、忘れてた。一瞬、本気で誰だ…お前?って言いそうになった。ああ、いたね。そんな人、居たいた。多分
「ま、それは良いわ。それより、私と仕事を賭けて勝負よ!」
「嫌です。」
「そうは、いかないわ!この仕事は、美味しいの、これが無いと毎月やっていけないの!」
随分と、生々しい話だな。いいじゃないか。俺から五十万円相当の金取って行ったんだから…
「いいじゃないですか。俺の金があるでしょう?」
「いいえ!貴方!奇跡の花の報酬知らないの?花で作られた薬を一つ無料で貰えるプラス!銀貨五百枚よ!?」
おいおい、こいつ一体月に幾ら使ってるんだ?銀貨は地球で一万円見たいなもんだぞ?ってか、一番マトモに普通そうに見えたけど、こいつは金の亡者だな。
「この仕事の良さも知らないで、私から奪うなんて許せないわ!」
なんて理不尽な…
「分かってる!言おうとしてる事は、分かってるわ!ギルドマスターからの依頼ですからね。簡単には降りれないわよね。でも、私も譲れない。だから、私と勝負よ!」
俺は、話を聞かない奴が大嫌いだ…イライラする。いいだろう。
「条件が一つだけあります。」
話を聞かない奴は、結論からなるべく先に言うと時々いい結果になる。
「何?」
どうやら、いい結果になったな。ラッキーだ。
「まず、先に賭けの内容を教えてください。」
「賭けは、私が勝ったら、貴方は仕事を降りてもらう。貴方が勝ったら、私は諦める。これだけよ。」
ほう、賭けの内容が普通だ。話を聞かない奴は、大抵賭けの内容が理不尽の塊…みたいな時があるかなさらな。その面でも、こいつは、まだましか?
「分かりました。じゃあ、条件を一つ…貴方が勝ったら、奇跡の花の成功報酬の二倍お支払いしましょう。」
「あら、随分といい条件じゃ無い。負けた時が怖いわね。」
「貴方が負けた場合、この仕事中ずっと着いて来て、俺の命令は絶対!っと言うのはどうですか?」
「貴方も、やっぱり男の子なのね。いやらしい上に、汚らわしいわ。でも、貴方が、負けた場合にも絶対命令を加えるのなら…受けて立つわ!」
「分かりました。良いですよ。では、始めても良いですよ。どうぞ、先手はお譲りしましょう。」
これを言っても、引き下がらない所を見るに勝てる自信が有るんだろうな。
俺は、馬から降りて仁王立ちをしている。あれ?来ないぞ?もしかして、認定試験見てたのか?背後に回られるのを随分、警戒してるっぽいな。
ふ~ん。
「来ないならこっちから行きますよ!」
「掛かっね!はあぁぁぁ!!『闇籠』!」
ああ、これを狙ってたのか。俺が、突っ込んで来た所に設置型のスキル。
「…あ」
「やったわー!勝ったー!このスキルは、私の意思でしか解く事が出来ないわ!諦めて降参しなさいな!」
これは、受けた感じ…アルだな。舐めてる?所詮はアル、レゼの俺は止められない。
あっ!そうだ。クラスが、レゼの場合その者は、その能力以外使えない。めんどくさいよね。俺には関係ないけどさ。
取り敢えず、相手の心を弱らせる為に…
「ハッ!」
バキャっと、いい音を立てて壊れる。壊し方は簡単、両手で籠を開き折る。ただの、それだけさ。
「えっ?何で?何で壊せるの?」
「何故って、貴方のスキル…新人にも、壊せちゃう位弱いって事ですよ。新人以下のレベッカさん♪」
「なっ!この!この!!」
今ので、怒ったのか。腰の細剣で向かって来た。ハッキリ言いましょう。
「…レベッカさん、剣は初心者なんですか。剣からの威圧感がこれっぽっちも有りませんが?」
もう、良いか。飽きた。ワーウルフと同じで、背後に回り足を払う。手から剣を奪い取り、おしまい。
「くっ!負け、負けよ!私の負け!私の体を好きにすればいいじゃない!どうせ、ピーーー!、ピーーー!!とかピーーーーーー!!!までやるんでしょ!」
「おいおい!やめろよ!俺が性犯罪者みたいに、見えるじゃないか!やるかそんな事!」
「じゃあ、何すんのよ。」
「えっ?いやまぁ…」
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早馬は、草原を颯爽と走って行く。早い、やっぱり早いな。青い空、新鮮な空気、緑の草花、走る馬に、それに繋がれた巨乳の美女、笑う俺、いい風景だ!
「アッハッハッハッハッハッ!」
「痛った!痛い!死んじゃう!助けて!」
チッ、五月蝿いな。まぁ、五月蝿いのは仕方ないな。しかし…
「お前も、冒険者だろうが!肉体強化でもして、痛みを和らげたりしろ!後、語尾にはモーと付けろと言ったよな!」
これを、約一週間。山岳地帯の魔獣は、確かに強いが余り居なく、ちゃんとしたルートを通れば、ほぼ魔獣に出会わないそうだ。因みに、この仕事の難易度はBだそうだ。おっさんが何をしたいのか。なんと無くだが分かった気がする。
「ご主人様!もう少しでララシェトに着きますモー!」
はい、こいつも墜ちました~。因みにララシェトとは街の事だ。えっ?山岳地帯の描写がない?気にすんな!
誤字脱字よろしくです。