試験が終わる前に 二日目Part6
一週間音沙汰無しを巻き返す!でも、もう電池切れ。
「ぐっ…ううぅ、こ、ココは?」
「あ、イールさん。起きましたか。おはようございます。中々起きないんで、オレたちが泊まってる宿に連れて来ちゃいましたけど、構いませんよね。」
「なんで、俺の名前を言ってないよな?」
「パーレから聞きました。包帯巻いたばっかりなんであまり動かないでください。」
「…ああ、俺は負けたのか?思い出せないんだ。アーク君と対面したところまでは覚えてるんだけど、そこから先が…思い出せない。と言うか思い出してはいけない気がするんだ。」
「…それを、師匠に言ってください。ま、今はパーレとどっかに行きましたけどね。」
「そうだね。分かったよ…それじゃ、幾つか質問しても良いかな。」
「師匠が帰って来るまで暇ですし、何ですか?答えられる物であれば、答えますよ。」
「ありがとう。じゃあ、俺とアーク君の戦いが終わってからどの位寝てた?一日とか?」
「コレはまた、どうでも良い質問ですね。そんな事で良いのなら答えますよ。勝負がついてから、まぁ大体半日位ですかね。」
「そうか…じゃあ次は、なんでパーレは呼び捨てで俺はさん付けなの?」
「コレもまた、どうでも良い質問ですね。オレは、自分より強い人にしか敬語を使いたくないんです。」
「ヘェ~じゃあ、アーク君と戦った事でもあるのかい?彼、見た目はとても弱そうじゃん。」
「いえ、戦った事なんてありませんよ。」
「?じゃあなんで、アーク君の弟子になったの?君…中々強いよね?それだけ、強ければ冒険者にでも、王宮騎士にも慣れただろうに…」
「そうですね。オレはこの国が嫌いなんです。この嫌いな国でオレの魔法、師匠が言うには能力を公に使ったら、スラム生まれのオレを、何が何でもこの国の物にしようとすると思いましてね。頑張ってスリとかしてお金を稼いで、冒険者になり他の国で賞金稼ぎの試験を受けてやろうと思っていたんです。」
「まぁ、確かにね。この国なら、やりかねない。他の六王都と比べても貧困率が多いし、強い奴を国から出さない、手放さない様にするからね。でも、それなら直ぐに酒場に行けば良かったじゃないか。」
「酒場に行ったって、ライセンスか紹介状がなきゃ入れないじゃないですか。」
「一応、賞金稼ぎになるための特別学校があるんだけど…しかも、無料で」
「なんですか!それ知りませんよ!?」
「二年前にできたんだ。知名度が低すぎ、その上授業が厳しすがるために、在校生が八人しか居ないんだから、仕方ないよ。宣伝する気はないけどね。」
「そんな…アホな。」
「どうする?俺の紹介なら直ぐにでも、授業を受けれる様にするよ?」
「…師匠が試験に落ちるとは思えませんし、断っと来ます。」
「ハハ、全くその通りだよ。アーク君について行けば明日…まぁ、明後日までには国を出れるだろうからね。直ぐにでも、自由になれるよ。」
「分かっています。因みに、なんでそんな質問したんですか?」
「気分だよ。気分!暇だったしさ。結局は弟子になった理由聞いてないけどね。様分からない回答為れたし。」
「そうでしたっけ?」
「うん!だから、聞かせてよ。なんで、戦っても居ないのにアーク君に、ついて行ってるの?」
「はぁ、強い人はこんなの、ばっかりですね。自由気まま己のやりたい様にやる。」
「そう?強くても誰かの下で戦ってる奴だっているよ?それに、君も大概に会話グダグダだけどね。それより、ついて行ってる理由を教えてよ!」
「グダグダって…はぁ、はいはい。わかりましたよ。そんなのなら幾らでも教えます。えっと…オレは、金づるで冒険者になった様な奴を狙ってスリやってたんです。で、冒険者ギルドから出て来た師匠を見て弱そうだと思ったんで、スッたんですよ。そしたら、スラれ返されてしまいましてね。スラれた時は忘れてたんですけど、見た目に反する強さを持った人の弟子になってやろうと思ってたんですよ。そしたら、直ぐに外に出られると思いましてね。まさか、賞金稼ぎの試験を受けてるとは…」
「なんで、見た目に反する人なの?」
「え?だって、オレも弱そうに見えるじゃないですか。」
「…理由?」
「?理由ですよ?」
「な、成る程ね!うんうん!じゃ…」
?なんかうるさいな。独り言?まぁ、なんでも良いか。コレ邪魔だし置いていこう。
「ただいま~、シェアル悪いけど、晩飯取って来て。」
「あ、はい…何人分ですか?」
何人分?不思議な事を聞くな。
「何人分?そりゃあ、俺とお前の分だよ。二人分のお金しか払ってないしね。」
「イールさんも起きましたし、ご飯は外で!硬いパンと野菜スープも良いけど、お肉をお肉を食べさしてください!」
やっと起きたのか。このために買ってきた蝋燭と新しいこの縄で遊ぼう!
「…あ、なに?イール起きたの?じゃあ、尋問タイムしなきゃ。」
「ご飯は!?」
うるさいな。いつからそんな、腹ペコガールになったんだよ。
「そんなに食べたきゃ、ドアの向こうで寝てるゴミと一緒に食って来い。」
「ゴミですか?…うわ!パ、パーレ!?…またか。」」
扉を開けると、さぁ大変!ボロボロの雑巾みたいなパーレが寝ている。治癒の事を忘れさせる為に、あえてフレンドリーに接し、買い物に付き合わせ…背後から不意、否!闇討ち!そのまま眠っちゃったから何処位記憶が飛んだか分からないんだよね…お?
「うぅ、ココは何処?私は誰?何も思い出せない。」
いっけね。やり過ぎた。でも、まぁいっかな。うまく行けば、このままストーカーの同僚エンとゴールイン。男に取って人生の墓場。そこへの片道切符をあげただけだし、良いよな。クク、良いよな!何それ面白い!
「師匠、物凄い悪い顔してますよ。」
「シェアルちゃんどいてくれるかい?」
「いきなりどうしたんですか?」
「いや、一応は仲間だし病院に連れて行ってやろうかなって…」
「いいじゃないですか。確かにボロボロですけど、怪我はしてないですし。」
「た、確かに…なんで?」
「さぁ、俺は知らないな。運悪く頭に石でも当たったんじゃないか?」
ククク、笑が止まらない!
「あ、そうだ。師匠、イールさん師匠との戦い覚えてないらしいですよ。」
「え!そうなの?じゃあ、新しく買った蝋燭も縄も使えないじゃん!」
「何に使うかが何と無く分かるのが嫌だ。」
「はぁ、仕方ない。じゃあ、イールもう一人は何処に居る?」
「いや、そんな事より記憶があった時の事を聞き…やっぱりいいです。ごめんなさい!すいませんでした!笑顔でコッチに来ないで下さい!」
「チッ、じゃあさっさと答えろよ。」
「知らないよ。そんな事、って言うところだけど…その笑顔が怖いから言います。すいませんでした!だから、笑顔で来ないで!」
「だったら遠回しに言おうとすんな!このムチで、引っ叩くぞ!」
「酒場の裏で、待ってるって言ってたよ。来たら、広い場所に移動して手合わせ願いたいだと。」
「「そ、そんな所に居たのかよ!!」」
お、シェアルと息ピッタリ。じゃないじゃない!なんだそれ!ふざけんな!くそ!なんかアッチは悪くないのに、ムカつく!しかし、今日はもう面倒だから、明日行こう。
「シェアル、今日はもう良いや。飯食って寝よう。」
「うぇぇ!?今行ったら、寝てるかもしれませんよ?それでも、いかないんですか?」
「不意打ちなんてかっこ悪いじゃないか。やるなら真剣勝負だ!」
え?さっき、パーレを闇討ちした?知らんな。覚えてない。
「おお!かっこ良いです!」
「何よりめんどくさい!さぁ、飯を取って来い!」
「その一言が全てを台無しにするんだよ。はぁ、仕方ない。パーレの財布でご飯買って来よう。師匠何食べたいですか?」
あ、やっぱり。外の飯を食いたいのか。まぁ、良いけど。それまで、寝てよ。
「串焼きよろしく。」
「いって来ます!」
明日、明日だ!自由にブラブラ出来る様になる!楽しみで仕方ないな。最後の鬼はウェイ。イール絶賛の強さを持っている…考え方によれば、隠れるの確かにうまいな。でも、やっぱり腹が立つ!人を馬鹿にするのも大概にしろ!飯を持ってくるまで暇だな。寝てよ。お休み…誰に言ってんだ?まぁ、良いか。
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フンフフンフーン♪お!肉団子シチューとな!アレも買って行こう!
「叔母さん肉団子二つね!」
「ハイよ。銀貨二枚ね。」
「ありがとう。ふぅ、だいぶ買ったな…なんか急に言いたくなったな。師匠、なんでそんなメタくない終わり方にしたの?」
しかし、なんで言いたくなったのかな?考えたくないな。ん?なんだろこのいいにおい…あれ?コレで終わり?