解決は意外とあっさり。そして……
とりあえず投下。
「名前は大道商也……こっちだとショウヤ オオミチかな。年齢が十九で、出身地は……」
さあ、問題の出身地だ。どうすれば良いのだろうか。
「あの……」
俺は思い切って聞いてみた。
「出身地って言いたくない場合はどうすれば良いんですか?」
窓口の女性は、ふふふと笑って優しく答えてくれた。
「言いたくない場合はぼかしたり言わなかったりしても大丈夫ですよ。身分証としては信頼性が無くなると言いますが……」
「そ、そうですか……」
意外とあっさり解決してしまった。なやむ必要なかったじゃん。
「それじゃ、東方の島国です」
うん、ぶっちゃけ間違ってないから堂々と言える。
「そうですか、分かりました……それでは、この真聡玉に手をかざしてください……」
真聡玉っていうのか、あの水晶っぽい玉は。
「分かりました……」
俺はそう言うとその真聡玉に手をかざしてみた。
そのまま数秒。
「はい、OKです!」
女性はそう言うと、俺にアキエのものと同じようなカードを手渡してくれた。
そこには、こんな内容が。
ショウヤ・オオミチ 年齢 十九
出身地 東方の島国
種族 人間(種族補正装備品効果微UP)
クラス 無し
レベル 五
能力
HP 三十八(MAX三十八)
MP 二十九(MAX二十九)
攻撃 二十
防御 十五
魔攻 二十一
魔防 十三
才能 商の才能 物づくりの才能 武の才能
装備
異国の服
異国のズボン(特殊な素材)
異国の靴
スキル
製薬初級(下級HP回復薬、下級魔力回復薬、下級解毒剤)
搦め手(防御していない所へ攻撃)
交渉術初級(多少高値で売却 成功確率十%)
「はい、どうぞ! 才能三つ持ちですか……すごい、ですね……後、攻撃と魔法攻撃も他より高い水準なので、中々良い物を持って生まれてますよ」
「そうですか、ありがとうございます」
なんだろう、周りの目つきが怖い。限りなく怖い。
「そ、それではギルドやギルドカードについて説明させて頂きますね!
まず、冒険者ギルドとは、商業ギルド等と違い、冒険者に仕事を仲介する所です。あちら……」
女性は、右隣にあるなにやら大きな掲示板のような物を手で差した。
「あそこに仕事……『依頼』が貼ってある掲示板です。依頼とは『希望ランク』と『仕事内容』、『報酬』が書いてあります。場所など具体的なことも仕事内容に含まれていますよ」
うん、定番の設定だ。
「ランクとは、称号のような物で、下から順にF、E、D、C、D、B、A、Sランクです。ちなみに、SランクのみS-、S、S+と分かれています。S+は記録に残る限り未だ4人しかおられません上、存命中の人はたった一人です。ショウヤさんも……頑張って下さいね!」
う……なんか期待掛けられた。
「仕事時は常時出されている緑色の紙の『常時依頼』以外はあちらの窓口で言ってから仕事をして下さい。報告はそちらのカウンターです。ちなみに、あちらは売却カウンターです。後は……ああ、だめだ! ……ごめんなさい、説明しないといけないことが多すぎて……こちらの本でご確認下さい」
女性がそう言って取り出したのは、超とドがつくほどの分厚い本だった。
なにあれ……あれを読めと? 世界事典二巻分はあるんじゃないの?
しかし、その女性はニコニコ顔で重いはずの本を楽々そうに持ってこちらに渡してきた。
あの人意外と力持ちなのか。
「あ、ありがとうございます……」
「いえいえ! あ、ご存知の通り紙は貴重なので読み終わり次第お返し下さいね」
あら。紙って高級なんだ。
まあ、地球より文明も進んでいないし当然なのかな。
それにしてもこの紙なんていうんだろう。
パピルス……かな。それとも羊皮紙?
……まあいいや。
「それじゃ、次はクラスを設定しましょうか」
「クラス?」
一瞬学校の方が浮かんできて思わず聞き返してしまった。だが、すぐにジョブや職業とも言われるやつだと気づいて納得するのだが……
「ああっ! 申し訳ございません。その本の四十七ページに書いてある筈ですよ」
謝って教えてくれました。しかし周りの男性の冒険者の視線が突然痛くなった。しかも、なにやら呟いている。
「メイたんに謝らせるなんて…… 死にさらせ!」
うん、聞かなかった事にしよう。
しかし、あの女性はメイさんというのか。
とりあえず、そのページを開いてみた。
~クラスについて~
クラスとは、冒険者がなる職業のようなもので、『戦士』や『魔術師』などがあります……
はい、しゅーりょー。
ここまで読めばもう大丈夫。隣のアキエに渡した。その手のゲームやりこんでましたからね。
アキエは、ふんふんと大げさに相槌を打って読んでいたが、途中でパタンと閉じて床に置いた。
……君も分かるのね。
「それじゃあ、分かりましたね。では、こちらに来てください」
メイさんは、そう言うとカウンターを出て何処かに歩き出した。それに慌ててついていくと、しばらくして『クラス登録・変更所』と書かれた部屋に着いた。
そこにいたのは一人の老人。彼が担当しているのだろうか。メイさんは、そこまで案内し終えると
「それじゃあ、続きはこの人が話してくれます」
と言って部屋を出て行った。おじいさんは一呼吸すると、話し出した。
「こんにちは、わしはカロライと言う者だ。クラスを登録しにきたのじゃな?」
「あ、はい」
「そうか、それじゃあ、まずこの真聡玉に手を置いてくだされ、どのクラスになれるか調べるからのう」
カロライさんは、懐から小さな真聡玉を取り出した。ギルドカードを作った時の物より少し赤味を帯びている。
「分かりました」
といっても、小さいので掌で包み込むような感じになったが、三秒程で結果が出てきた。
「おお、すごいのお!」
カロライさんが小さく叫んだ。
「そうしたんです?」
「レ、レアクラスに反応があったんじゃからの、ちょっと取り乱してしまった」
「そんなに珍しいんですか?」
「ああ、そりゃあレアじゃしのう」
カロライさんによると、こういう話だった。
レアクラスとは、ほとんどなれない貴重なクラスで百人中三人位なんだとか。
その中でも『使える』レアクラスは三人の中の1人。
使えないレアクラスっていうのは、『引き篭もりニート』とかちょっと異次元に行っちゃってる系の物らしい。
「そなたは『使える』レアクラス持ちじゃったからのう」
「そうすか」
ちょっとビックリ。レア機能駆使して異世界無双なんていうのもアリかなー。
「それじゃ、お主がなれるレアクラスを発表するぞ……」
「……はい」
物凄く緊張。隣のアキエもゴクリと喉を鳴らしてるし。
「お主がなれるレアクラスは……『魔聖剣士』じゃ!」
「『魔聖剣士』ぃ?」
なんか強そうだけど語呂が悪いの来た。
「ああ、魔聖剣士とは、その名の通り聖の加護を受けた剣士じゃ。通常能力も高めじゃし、水、雷の魔法……聖と闇も使える魔法剣士の最終形態といった感じじゃ」
「そうですか」
聞いてて魂が離れそうになった。
「すごいですね!」
アキエもしきりに関心している。
ん? さりげなく聞き流したが、なぜ聖なのに闇なんだ?
そう思って聞いてみると、
「なんでも、『大切なのは一方的な光ではなく、調和が取れているということ』らしい」
「あ、そうすか」
便利な事には変わりないのだから、ご都合の一環として捉えておくか。
「他には……『職人』なんてのもあるぞ。これは、一つに凝らず様々な物を作れる限りなくレアクラスに近いと言われる普通のクラスだ。サブのクラスにするといいだろう。ん、不思議そうな顔をしちょるな」
げ、鋭いな。
サブクラスなんてあるんだって考えていたんだが……
「ああ、その調子じゃ図星だな。仕方ない、教えてやろう。サブクラスとはメインと違ってなれるクラスのことじゃよ。その代わり、スキルを覚えるのが遅いんだが、一応全部覚えるしな。」
ええっ!
なんで考えてること分かるの!? 引く。ちょっと引く。限りなく引く。
これからカロライさんを見かけても話しかけないようにしよう。自分でも
「はっはっは! わしにはなんでもお見通しじゃぞい!」
とか言っちゃってるし。まあ、とりあえず
「じゃあ、メインとサブはそれでいいです」
って言って置かなきゃ。
「それじゃあ、カードを貸してみそい」
カロライさんがそう言うので、カードを渡す。
すると、カロライさんは脇にあったパソコンのような機械の画面の前にカードを置き画面に何度か触れる。
……タッチパネル式なんだ。
しばらくすると、カロライさんはカードを持って戻ってきた。
「ほらよ、これで終了したぞ」
カードが少し白に染まっている。
「これに触れればお前は晴れて『魔聖剣士』じゃ」
俺は、カロライさんからカードを受け取った。
その途端、物凄い力がカードから俺に流れ込んでくるような……とても不思議な感覚に襲われる。
収まってきて、少し俯いていた体を元に戻すと、カロライさんは小さな声で
「やっぱレアクラスは力封入も激しいのじゃろう」
と呟いてた。
その次はアキエの番。
なんとアキエも『使える』レアクラス持ちで、『緑の大魔道師』という、植物や植物に関係する水などに特化した魔術師系の高位クラスをメインに、サブはなぜ適正があるのか分からない『侍』にしていた。
アキエのカードは木漏れ日の色だった。
……俺達は、今日晴れて冒険者となりました。
金の目処はついたが店舗ってどう開くんだろう。
商業ギルド入れば家買って商品並べてハイ開店でいいのかな。
とりあえず仕事をして金を稼いでからその辺は調べてみるか。
開店まで何話掛けるつもりだ。