海中の夢
イリは前触れもなく、水の中にいた。
息苦しさと圧迫感の中、これは夢だ、と判断する。
夢だ、と思えば現状をすんなり受け入れられたから。
たとえ非現実的なことが起ころうと奇怪な存在があろうと、夢と理解すれば混乱しない。
どうしても我慢ならないときはひたすら現実を求めれば、そのうち覚めるだろう。
(たまに無理やり脳を起こせば、体が起ききらず金縛り、になることはあるけど。あれは、呼吸も止まるから、つらい)
さて、今日はどんな夢を見るのだろう、なんて考えるくらいには余裕があった。
夢と認識してからは呼吸に問題はない。海、のようなところだろうか。
自分が漂う足の下は、ひたすら水に飲まれて底が見えない。
足?
違う。
改めて見れば、足なんてない。
自分の体を見ようとして、うねる漆黒が視界を覆った。
鱗のある細長い体。
蛇?
なんだ、この巨大な蛇の体。
私は今、蛇になっているのか。
なんとも奇妙な夢。なのに妙にリアルに表現されている
疲れがたまっていたのだろうか。
瞬間
水が、うねる。泡立つ。視界が歪む
何かが起こった。
何かが変わった。
まずい。ここにいてはまずい
視界に黒が入り乱れる。
この場を離れなければ、そう思った。
現状を把握していないのに、ただ思ったのは。
に げ て
声を上げた同時に崩れる。この世界が。
水が歪む。黒がにじむ。あぁ、覚めるのかと、思ったとき――――
ド コ ヘ