うたかた
文章は少し雑いです…。急いで作りすぎました…。
――浮かんでは消えゆく、儚い言葉――
「好き」と言えば私の気持ちは伝わるのだろうか。
伝わったとしても、いまの関係が崩れてしまうんじゃないか。
顔を合わす度に目を逸らすような関係になるのではないか。
互いに、一度も会ったことのないような素振を交わすようになるのではないか。
そんな考えばかりが頭に浮かんだ。
だから私は――――「好き」と言おうと思ったことはなかった。
物心が付いたときから、私の隣にはいつも彼――一樹がいた。両親同士が昔の同級生のようで、仲がとてもよかったのが理由だった。だから、家の中でも外でも、遊ぶ相手は一樹とばかりだった。それが嫌だったわけではない。かと言って、好きだったわけでもない。
一樹は私の〝友達〝でしかなかった。
そう。ただの友達、幼馴染として、保育園、小学校と中学校を卒業し、互いに違う高校を受験した――のだが、私は第一志望を落ちてしまった。その頃、一樹はすでに第一志望の高校に合格したばかりだった。一般ではなく、推薦で入学したと聞いた。いまさら推薦では受験できない。また、第二志望すら考えていなかった。両親とも話し合い、悩んでいた時、担任の先生に言われた高校を受験することとなった。そして、その学校の名前に気が付いたのは受験が終わった後で、いつの間にか一樹と一緒の高校に入学していた。
運命と言えば簡単すぎる。けど、偶然とは思えない。必然はあり得ないと思った。
そうして始まった高校生活は、今までの生活、日常と変わらないものだった。
朝の通学もクラスも帰り道に寄るコンビニも時間帯も、何もかもすべてが一緒だった。
こうもずっと一緒だと、胸の奥にむかむかするような感覚があった。変わらない日常への怒り。新しい出会いの期待外れ。私と一樹の誤った関係が広まる悲しみ。
私は一樹を嫌いになろうとした。それでこの感情から解放されるならいいと、本気で思った。
それなのに……嫌いになんてなれなかった。
ずっと一緒にいたからのなのかな。
むしろ、胸の中ではむかむかより、どきどきの方が大きくなっていた。嫌いになろうと一樹のことばかりを考えていたら、夜も眠れなくなったいた。容姿も性格も、私の「嫌い」にはひとつも当てはまらなかった。
これって、好きってこと?
ベッドの上でオレンジ色に灯る豆電球を見つめ、つぶやく。
「――――一緒の高校だな。よかった」
入学式のときに笑った一樹の顔が脳裏に浮かんだ。
思わず顔が赤くなる。タオルケットを頭まで被って隠れた。
「好きって言えば、一樹はどんな反応するかな……」
照れたりするのかな?
それとも反応なしだったりして。
その時だった。ふと脳裏を過ったのは――。
今更「好き」と言って私の気持ちは伝わるのだろうか。
伝わったとしても、いまの関係が崩れてしまうんじゃないか。
顔を合わす度に目を逸らすような関係になるのではないか。
互いに、一度も会ったことのないような素振を交わすようになるのではないか。
急に私の体は震えだした。「好き」の言葉が怖くなった。笑った一樹の顔が消えていく。
いや! いやだよ……。
私は次の日、一樹と真面に話すことが出来なかった。ようやく芽生えた気持ちも、浮かんでは消えゆく、儚い言葉でしかなかった。私は一生片思いをして過ごしていくんだ。
えぇっと……こういうのなんて言うんだっけ。
ああ。思い出した。うたかたの恋って言うんだ。
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