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創造主エンキ(縁起)第二のイスラエル創造の旅路  作者: 如月妙美


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第二章:再航の方舟、イサクの血脈

第一節:荒海を越えて、世界の縮図へ

 アブズの奥底で交わされた聖なる盟約から、10年の準備期間が過ぎた。その間、エンキ――かつてのヤハウェは、来るべき「移動」のために緻密なシミュレーションを重ねていた。 彼は自らの意識を、一時的な「器」へと移した。それはヒトの形をしていながらも、アヌンナキの純粋な周波数を維持できる高密度の細胞体であった。そして、イサクの末裔である三千人の「イ・ハ(E・Hweh)」たちに造船作業をさせ、巨大な「方舟」へと導いた。

 この方舟は、単なるレバノン杉の木造船ではない。その船体には、アヌンナキが二ビルの大気修復で培った結晶工学の知恵が組み込まれ、海水の塩分をエネルギーに変換する半永久的な推進システムを備えていた。帆は光を吸収して動力へと変え、船底には龍脈エネルギー・ラインを捉えるための共鳴装置が据え付けられた、文字通り「次元を渡る航海艦」であった。

「見よ、我がひこばえよ。海は汝らを拒む壁ではない。それは新たな聖地、新たな大地へと繋ぐための、青き道なのだ」

 甲板に集った民の心に、エンキの声が雷鳴のように、しかし慈母のごとき温かさで響き渡った。 船団は故郷イスラエルの荒野を離れ、紅海を抜け、インド洋の荒れ狂う波濤の中へと進み出た。 航海は凄惨なまでの困難を極めた。巨大なサイクロンが船団を襲い、深海からの振動が船体を揺さぶる。だが、エンキは嵐を直接鎮めることはしなかった。彼は船室の奥で、壁一面に展開された青白いホログラムの星図と理論式を凝視しながら、民が恐怖に立ち向かう姿をじっと見守り続けた。

「苦難こそが、汝らの魂を『支配される家畜』から、『自らを守護する知性』へと昇華させる火種となるのだ。荒波を越えるたびに、汝らの記憶(塩基)には、不屈の輝きが刻まれる」

 彼は、ヒトが自らの意思で舵を切り、星を読み、互いを助け合うプロセスこそが、この旅の真の目的であることを理解していた。数ヶ月にわたる航海の末、ついに羅針盤が指し示す東方の最果て――龍脈の終着点が見えてきた。水平線の彼方に、朝日に照らされて黄金色に輝く、緑豊かな島影が現れた。それは、エンキがかつて地球の地殻を設計した際、世界の全エネルギーを凝縮させた「世界の縮図」そのものであった。


第二節:高千穂のアブズ、第二のアフリカ

「この地を見よ。これこそが、私が万物の再生のために定めた、第二のアフリカである」

 方舟が辿り着いたのは、現在の日本列島、その南端に位置する「九州」の地であった。 エンキがこの地を選んだのは、単なる気まぐれではない。彼は物理学者であり、地政学の理論家であった。 「日本は世界の縮図である」という彼の理論に基づけば、九州という地は、人類発祥の地であるアフリカ大陸に対応している。生命の躍動、荒々しい火山活動、そして母なる大地が放つ根源的な熱量。九州は、まさに地球上のアフリカが持つエネルギーを、精緻に縮小して配置した特別な区画であった。

 彼らが最初に拠点を築いたのは、九州山地の心臓部、幾重もの雲が重なり合う、「日向国の高千穂」であった。つまり、「高千穂」とは、「高い知の穂(高峰)」を意味する。 この地は、かつてアフリカ・アブズでエンキが管理していた地下神殿と同じ、地球の核へと繋がる特定の周波数を放っていた。エンキはここに、新たなる「知恵の神殿ニュー・アブズ」を設けた。 だが、かつてのような支配者のための豪華な宮殿を築くことはなかった。 代わりに、彼は山々の霧や水、森の静寂の中に自らの存在を溶かし込んだ。民が真の窮地に陥った時にのみ、直感や啓示として降りてくる「目に見えぬ守護者」としての安らぎを選んだのである。

「これより、我らアヌンナキは、汝らの上から命令する支配者であることを辞める。我らは『アマミク(天見来)』族となるべし」

 エンキは厳かに宣言した。 「アヌンナキ(天より地に降臨せし者)」という名は、あまりに力強く、時には非情な神々の記憶をヒトの細胞に呼び覚ましてしまう。 だが、「アマミク(Amamiku)」――「天より見に来た」者たち。 それは、ヒトを駒として支配するのではなく、その成長を慈しみを持って「見る(守護し、見守る)」という、新たなる慈愛の関係性の再定義であった。 後に「アマミキヨ(天見来輿)」や「アマミク」として語り継がれることになる彼らの呼称には、「支配の放棄」と「守護への専念」という、エンキの苦渋と愛の決断が込められていたのだ。


第三節:徐福との合流、女媧と伏羲の再会

 九州に拠点を築き、イ・ハの民が土地に適応し始めた頃、歴史はさらなる深奥へと回転を始めた。 大陸の覇者、秦の始皇帝の命を受けた大規模な船団が、東方の海を渡って接近しているという報が、エンキの感覚網を揺らした。その船団を率いていたのは、伝説の道士「徐福」であった。

 筑紫の浜辺に打ち寄せる白波の向こうから、百艘もの船が影を落としていた。エンキは独り、その渚に立ち、押し寄せる運命を待った。やがて、一艘の小舟が砂浜に乗り上げ、静かに一人の男が降り立った。 徐福――その正体は、単なる不老不死の探求者ではない。彼は、かつてエンキとともに人類の創造に関わった科学者、ニンフルサグ(女媧)の遠い意志を継ぎ、大陸においてその「形」を保存し続けてきた特別な血脈の末裔であった。

 エンキは唇を動かさず、ただ黄金の瞳で彼を見つめた。 その刹那、徐福の脳裏には、数万年の時を超えた光の奔流が流れ込んだ。エンキの存在そのものが放つ「思念の共鳴」が、徐福の魂に直接真理を刻印したのである。

『……徐福よ。汝が抱く霊薬とは、草木の中に在るものではない。それは汝らが連れてきた、この幼き命たちの内に在る、不朽の遺伝子(塩基)のことだ』

 声なき声が、徐福の骨の髄まで震わせた。徐福はその瞳の奥に、かつて天空から降り立ち、混沌を切り裂いた創造主の残り香を見た。 彼は即座に理解した。自分が連れてきた三千人の童男童女は、単なる生贄や労働力ではない。彼らは、大陸で繰り返される終わりなき戦火から、純粋な心を持つ「アダパの魂」を救い出し、この極東の地で「神なる種」として保存するために選ばれた、もう一つの人類の記憶、すなわち「塩基エンキ」そのものだったのだ。

 エンキの無言の啓示を受け、徐福は砂浜に深く首を垂れた。 「我が師、伏羲エンキよ……。不肖の弟子、その大いなる慈愛、今こそこの身に染み入ります。私は始皇帝の歪んだ野望に仕える者ではありません。私は、ニンフルサグ(女媧)の、母なる慈しみをこの黄金の島へと繋ぎ留めるための、単なる『運び手』にすぎませんでした」

 徐福の背後では、三千人の少年少女たちが不安げに、しかし期待に満ちた目でこの光景を見つめていた。 「この子供たちの瞳の中に宿る光……これこそが、かつて我らがエデンで夢見た人類の未来。我ら三千人の隊は、貴殿の導く『イ・ハ(イサク)』の民と合流し、この島を『ヤマト』……すなわち、ヤハウェに守護されしティアマト(地球)へと変える、最後の大いなる和の礎となりましょう」

 ここで、イスラエルの血脈である「」の民と、大陸から来た徐福の「」の民が、エンキの祝福という名の方程式のもとに統合された。 これは後に、九州北部に現れる「委奴いな国」となり、大陸との交易を支えつつ、近畿へと至る「ヤマト王朝」の強固な土台を形成することになる。 志賀島で出土した金印「漢委奴国王」の五文字は、当時の大陸の守護者であったエンリル(漢の守護者)が、エンキの守護する「委」と「奴」の融合を認め、その正当性を歴史の闇に埋もれさせぬようにと、後世へ向けて遺した物理的な「委任状」であったのだ。

 エンキは、徐福とその背後の子供たちを見つめ、静かに、しかし力強く、その魂に「縁起エンキ」としての守護を刻んだ。言葉を必要としないその意思伝達は、海風に乗って全土へと広がり、新たな国家の鼓動となった。


第四節:ヤーハン・イ(邪馬台国)の灯火

「イ・ハ」と「奴」の統合により、民の器量は飛躍的に高まった。 エンキの隠れた指導のもと、彼らは九州の各地に、地形エネルギーに沿ったクニを築いていった。 その中心となったのが、エンキの聖なる名そのものを冠した国「ヤーハン・イ(Yhawehn・E)」であった。 後世、魏の歴史家たちが、聞き取った異国の響きを「邪馬台国」と書き記したその国は、本来「ヤハウェとイサクの国」を意味する、神人とヒトの最終的な共生実験場であった。

 この国を象徴する存在として、エンキは一人の特別な巫女を選び出した。 「ヒミコ(天見来)」――正確には「陽を見に来た者」、あるいは「天の意志を透視する者」。 彼女はエンキの「啓示」を直接受け取り、それを民の言葉へと翻訳する媒体インターフェースとなった。エンキはもはや姿を現さなかったが、ヒミコの祈りの中に、その「縁起」としての波動を常に湛えさせていた。

 そこにあったのは、恐怖による絶対王政ではなく、自然の循環への敬意と、見守る神への静かな祈りによって統治される世界であった。 二ビルの荒廃から、エデンの追放、そして大洪水の絶望を経て――失われた「平和アマン」の光が、極東の小さな島々で、今まさに人類の最後の希望として再点火されようとしていたのである。

 エンキは、高千穂の深い霧の中から、日々、泥にまみれて誇り高く国造りに励む民を見つめていた。 「見よ、彼らはもはや私の僕ではない。自らの意志で鍬を振るい、自らの意思で神と自然に感謝を捧げる、自律した生命体となった」

 その時、エンキの理論回路の中に、次なる次元の「形」が浮かび上がった。 九州という「第二のアフリカ」でヒトの基礎(塩基)を固めた後、彼らが向かうべき、真の「新エルサレム」の地。 それは、琵琶湖という巨大な「死海」の西側に広がる、山紫水明の盆地。 そこは、エンキ自身が最も敬慕する天主「An」の名を戴き、すべての争いが鎮まる場所――「平安(An)京」とならねばならない。

 エンキは、自らの指先に宿る淡い青色の光を見つめた。 その光は、ヒトの細胞内に眠る「塩基エンキ」と共鳴し、未来の系譜を照らし出していた。 「行け、我がひこばえよ。汝らの旅路は、まだ始まったばかりだ。ヤマトという名の大いなる和が、この星を包み、失われたエデンを再生させるその日まで。私は『縁起エンキ』として、汝らとともに在り続けよう」

 物語の潮流は、九州の地を離れ、いよいよ近畿の深淵へ、そして歴史の転換点となる「国成り」の瞬間へと、激しく加速していく。エンキの壮大なシミュレーションは、もはや後戻りのできない、必然の歴史へと姿を変えつつあった。


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