2/6
第二章 ピンクの杖と、腐った手
ノックの音は、すぐに叩き壊すような音に変わった。
ドアが軋む。ドンドン、ドンドン。
「……やべぇ」
俺は咄嗟に周りを見回した。武器になりそうなものを探す。
包丁? 錆びてる。
椅子? 重いし、振り回したら息が上がる。
バット? そんなリア充アイテム、あるわけない。
視線が止まったのは、棚の上。
そこにあったのは、埃をかぶったピンク色の棒。
「……まさか、これしかないのかよ」
昔、姪っ子が置いていった“魔法少女プリティ☆ルナ”のステッキ。
ボタンを押すと、「キラキラパワー☆」と電子音が鳴るオモチャだ。
ふざけた見た目。プラスチック製。
けど、ドアが破られようとしている今、俺にはそれしかなかった。
俺は震える手でステッキを握った。
ドアが開く。腐った腕がのびる。腐臭。呻き声。
「……こっち来んなッ!」
思い切り振り下ろした。
バキッ、とプラスチックが割れる音。
ゾンビの頭がのけぞる。
倒れた。動かない。
息を荒げながら、俺は見下ろした。
割れたステッキの先端が、ゾンビのこめかみに突き刺さっていた。
「……まじかよ」
ピンクのステッキが、俺の命を救った。
姪っ子の玩具が、最初の武器になった。




