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第一章 腐った世界、動けない俺
最初に異変に気づいたのは、配達の兄ちゃんが来なくなったことだった。
いつもなら昼の二時、ピザを届けに来てくれる。
でも三日経っても、アプリの通知は鳴らない。
腹が減った。
けど、外に出るのは面倒だ。
俺は五年目のニート、体重は110キロ。
部屋から出るのはトイレと冷蔵庫だけ。
それでもWi-Fiと冷凍食品があれば、世界は完結していた。
──昨日までは、な。
窓の外で、何かがぶつかる音がした。
覗くと、道路に人が倒れていて、その上にもう一人がのしかかっていた。
いや、違う。噛みついてる。
血が、溢れていた。
テレビをつける。ニュースは繰り返している。
「感染」「避難」「安全区域」——現実感のない単語ばかり。
俺は呟いた。
「……終わったな」
でも、すぐに気づいた。
俺はもう、何年も外に出ていない。
つまり、この部屋こそが一番安全ってことだ。
——そう思っていた。
ドアの向こうから、ノックの音がするまでは。




