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流れ星パムの喫茶店 〜癒しで叶える不思議メニュー〜  作者: かなちょろ


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3/3

家出少女とアプリコットティー

 親と喧嘩した……理由は大した事は無い。

 お互いの意見がぶつかっただけだ……なのに親と言うだけでマウントを取ってくる……。


「私の意見をもっと聞いてくれたっていいのに……」


 私には母親しかいない。

 幼い頃に両親は離婚している……だから父の顔はもう覚えていない。

 私をここまで育ててくれた事には感謝しつつも、父と別れた事については恨んでいる。

 そんな中での些細な喧嘩だ……でも今は母の顔は見たく無い……だから家出をした。

 行く当ても無く、お小遣いも残り少ない。

 家を出て一人で生きて行く事なんて出来るわけが無い……そんな事はわかってる。

 親に心配をかけるための私のわずかな抵抗だ。

 本気で家出する気持ちは無く、割と近くの公園に今はいる。


「あーあ、これからどうしよう……」


 ブランコに揺られながら今日の事を考える。

 明日は日曜日で学校も休み……だからこそ土曜日の今日に家出をしたのだ。


「お腹も空いたしコンビニで何か買ってこよ」


 菓子パンを一つかって公園に戻る。

 ブランコに乗ってパンを食べて腹を満たしたから、寝れそうな場所を探そうと公園を出た。

 こんな女子高生が夜中一人、路上で寝てるなんて事をして変な人に絡まれたりしたらこの家出が台無しになってしまう。


「何処かに良い場所無いかな〜」


 友達の家に泊めてもらうと言う考えも浮かんだけど迷惑はかけたく無い。


「暗くなって来たし早く良い場所探さなきゃ……せめて雨風が防げる場所があればな……」


 そんな場所も見つかる訳もなく、フラフラと街を彷徨い歩く。


「こんな所にお店? なんだろ……でも良い匂い……」


 お金も少ないので中に入る事は出来ないけど、匂いに釣られてお店を覗いて見た。

 すると扉が開かれ、女性の店員さんが出て来てしまった。


「あら? お客様? 中にどうぞ」

「え、いえ……」


 お金ないからとお店から離れようとするけど、この良い香りに釣られて離れられない……。

 あれ? 私いつの間に……。


 私の想いとは裏腹にお店の中に入ってしまっている。


「いらっしゃいませ」


 渋めのイケオジの店員さんがお店の中にいる。


「ご注文をどうぞ」


 ご注文って言っても……。


「あの……この良い香りのする物は……?」

「こちらはアプリコットティーですね」

「アプリコット……杏ですか?」

「はいそうです……如何ですか?」

「そ、それじゃそれをお願いします……」


 思わず注文してしまった……お金足りるかな?


「お待たせいたしました。 こちらはストレートでもミルクを淹れていただいても美味しいですよ……それとこちらはサービスです」


 女性の店員さんが持って来てくれたのは一口サイズのチーズケーキ。


「いいんですか?」

「ええ、かまいませんよ」

「ありがとうございます」


 アプリコットティーは甘酸っぱく、チーズケーキの濃厚さがとても合う。

 静かに流れる音楽、落ち着いた雰囲気の店内、アプリコットティーの懐かしく落ち着く香り……。

 私はいつの間にか眠ってしまっていた……。


「ここが今日から一緒に暮らす場所だ」


 見たことの無い男性と女性が肩を並べて一軒家の前にいる。

 誰なんだろう……これは夢?

 私が手を触れようとすると二人の姿は消えて景色も変わってしまう。


「この子が俺の娘か……これから頑張っていこうな」

「そうね」


 ゆりかごに揺られている赤ちゃんを見ている二人……さっきの人達だよね?

 わっ! また景色が変わった……。


「なんでこんな事も出来ないんだ!」

「私だって忙しいのよ!」


 喧嘩してる……あんなに幸せそうだったのに……。

 赤ちゃんももう2、3歳になって、不安そうに二人を見てる。


「もう無理だな……」

「……そうね……」


 女の子は母親に連れられ家を出て行っていた……。

 古いアパート……ここって……。


「お母さん頑張るからね……ごめんね……ごめんね……」


 泣き叫んでいる女の子を抱きしめて謝っていた……。


 女の子は小学生へとなっている。

 そして母が淹れてくれるアプリコットティーを美味しそうに飲んでいた。


 そうだ……あの女の子は私だ……小学校の時は良くお母さんがアプリコットティーを淹れてくれてたんだっけ……中学生になってから淹れてるの見た事ないな……。


「ただいま〜、ごめんね遅くなって……夕飯の準備するから」

「もういいよ、お菓子食べたし。 明日お弁当だから忘れないでよ」

「ええ、わかってるわ」


 朝、私のお弁当を作ってる母の背中……私を起こして朝ごはんの準備、お弁当を渡して仕事に行く準備……。

 パートで働く母は掛け持ちもしていてたまに遅くなる時がある……私はそれを知っていながらも気にもとめていなかった……。

 母は好きなアプリコットティーなんて飲んでる暇が無いほど私のために頑張ってくれていたんだ……そんな母が段々と消えて行く。


「……起きて! ほら起きて!」

「ん……お母さん!?」

「まったく……心配させないで……早く帰りましょ」

「お母さん……ごめんなさい……」


 私が母に起こされた場所は公園のブランコ。

 そこで眠ってしまっていたらしい。


「言いたい事があるんでしょ? ちゃんと話しましょ」

「うん!」

「それにしてもなんか良い香りがするわね」

「お母さん、家に帰ったらアプリコットティー飲まない?」

「あら、珍しいわね。 でもいいかも知れないわね」


 私はまだ高校生……出来る事は少ない……でも出来る事はある。

 出来る事をすれば母はまた好きなアプリコットティーが飲めるようになるだろう。

 私も好きなアプリコットティーを……。



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