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この作品には 〔ボーイズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

この恋を何度でも

ボーイズラブandハッピーエンドです。最後まで読んで頂ければ嬉しいです。

 バレンタインデーって、街全体が浮かれてる感じがする。赤やピンクのハートが飛び交って、僕は毎年ウキウキしていた。、、、去年までは、、、。



*****



 僕にはずっと好きだった子がいる。もう、「子」って感じじゃ無い。「男の人」だな、、、。


 知り合ったのは幼稚園の年少さん、凄く綺麗な子だった。

 今では身長が、僕より15センチも高くなって、いつも見上げている。


 幼稚園で初めてのバレンタインチョコを買った。

「みーくん、たかちゃんに上げるの?」

と、母さんに言われたのを覚えている。

 年少さんクラスで1番仲の良い友達だった。

 僕は一目惚れだったんだ。その瞬間は今でもちゃんと覚えている。


 幼稚園の間、バレンタインのチョコレートはいつもたかちゃんに上げていた。たかちゃんも毎年喜んでくれて、必ずお返しにチョコレートをくれた。

 本当は、お返しにはキャンディとかクッキーなんだろうけど、僕がチョコレートが大好きだって知っているからチョコレートをくれる。


 でも、お返しは小学生の2年生までだった。3年生からは貰えなかった。


 まぁ、何となくわかるよ。僕は男の子だから、嫌なんだって、、、。


 それなのに、毎年チョコレートは受け取ってくれた。


 小学生の頃は、放課後たかちゃんの住んでるマンションの下まで行って、直接渡していた。

 中学生になったら、お互い部活や塾があったから、マンションの集合ポストに入れる様になった。

 たかちゃんはポストから回収すると、翌日、僕の教室まで来てお礼を言う。

 ただそれだけ、、、。


 高校生になってからは、お礼も直接じゃ無くなった。同じ高校に通っているのにな、、、。



*****



 そして、高2のバレンタインデー。

「来年は大事な受験もあるし、今年で最後にします。いつもチョコレート受け取ってくれてありがとう。」


 メッセージカードに書いて、ポストに入れた。

 そして、いつも通りスマホで

「チョコレート、ポストに入れました」

と送る。すぐに既読が着いて、しばらくポストの前で待っていると、反対側でカタンと音がして受け取ったのがわかった。

 僕は、たかちゃんが受け取ったのを確認して家に帰る。

 

 毎年、ポストからチョコレートを持って行くのは、たかちゃんだと思っていたけど、もしかしたら、たかちゃんじゃ無いかもな、、、。なんて思いながら家に向かって歩く。



 今年はとうとう、たかちゃんからお礼の言葉も無かった。



*****



トンッと何かが当たり振り向くと

「ん」

と言って、たかちゃんが板チョコをくれた。びっくりして

「あ、ありがとう、、、」

と言うと、たかちゃんは去って行った。


 僕はため息をいた。

(急にどうしたんだろう、、、。誰かに貰ったのかな?)



*****



 春になって、クラス替えがあった。受験に向けて、国公立、私立、文系、理系でクラスが分かれた。目指す大学に寄って、少しずつ授業内容が変わるからだ。

 僕は同じクラスにたかちゃんがいてびっくりした。


 でも、僕達の距離は変わらない。只の友達だった。お昼だって、一緒に食べる訳でも無い。

 たかちゃんにはたかちゃんの友達がいて、僕には僕の友達がいる。

 別にお互い避けている訳では無い。特別じゃ無いだけだった。フツーに挨拶して、同じグループになればフツーに話しもする。

 ただ、一緒にご飯を食べようとわざわざ誘うとか、同じ委員をやろうと約束する事はなかった。


 高校3年生の文化祭は、あっけなく終わった。女子が上手に仕切り、男子は言われた事を熟す。飾り付けとかやっぱり女子はセンスが良くて、教室は可愛いカフェに変わった。

 僕達のクラスはジュースとお菓子を販売した。所謂喫茶室だった。

 ジュースは紙パックのジュースを5種類準備した、ペットボトルだと、大きすぎて効率が悪いから、小さいけど、種類もある紙パックのジュースになった。お菓子は、駄菓子屋さんで詰め合わせを作って貰って販売した。

 クラスの打ち上げとかも無い。

 仲の良い友達同士でちょっとご飯を食べに行く位だった。


 僕は気の合う、熊倉君とご飯を食べに行った。席に案内されて、何を食べようか選んでいたら、隣のテーブルにたかちゃん達のグループが来た。 

「お疲れ」

「お疲れ様」 

「やっと、一つイベントが終わったな」

「次は体育祭と持久走だね」

なんて話しながら、席に着いた。

 たかちゃんは僕のすぐ後ろに座った。


 熊倉君の彼女の話しになった時、たかちゃんの隣りに座っていた、真壁君が

「何、何?熊倉の彼女?」

とノリノリで参加して来た。

 熊倉君は中学1年の頃から好きだった女の子に、卒業式の日に告白されて付き合っていた。

「へぇ〜!長いねぇ、今でも仲良しなの?」

「喧嘩はないね。マンネリと言われればそうかも」

「いいねぇ〜。こいつなんて、ずっと好きだった人に嫌われたらしいよ!」

とたかちゃんの肩を叩く。

 たかちゃんは

「やめろ、、、」

と言って少しムッとした。



 そっか、、、やっぱり好きな人がいたんだ、、、。



 それから、みんなで熊倉君の恋愛話しに花を咲かせ、真壁君の話しになり、田中君や芳賀君の好きな子の話しになった。


 僕とたかちゃんは聞き役に徹した。


 熊倉君の携帯に彼女から着信があって

「ごめん、ちょっと」

と照れながら席を外した。僕もついでに飲み物を取りに行く。

 たかちゃんも一緒にコップを持って立ち上がり、後ろを着いて来た。

 ジュースを注ぎながら

「好きな子に嫌われちゃったの?」

と聞くと

「まぁ、、、」

と返事をした。

「たかちゃんなら、きっと大丈夫だよ。頑張れ!」

と言って、先に席に戻る。

(何が、頑張れだよ、、、)

と思いながら、窓の外を見る。

 熊倉君がニコニコ笑いながら通話している。マンネリって何だろう、、、。あんなに幸せそうなのに。



*****



 僕達の日常は受験一色になって行った。体育祭や持久走大会に休む生徒も多い。家で勉強するんだって。


 クリスマスもお正月も、今年は盛り上がりに欠けて、受験が終わったらアレをやろう、コレもやろうと妄想していた。

 


*****



 そして今年もバレンタインデーが来た。


 今年は買わないと考えていたのに、やっぱりこの時期になるとチョコレートを選びたくなる。

 駅ビルで、気晴らしにチョコレートを眺める。毎年売り切れる前に、早目に選びに来ていた。バレンタインデー当日に来たのは初めてで、こんなに売り場がスカスカになっちゃうんだとびっくりした。

 丁度良い感じの、僕のお小遣いで買える様なチョコレートは全部売り切れだった。


 少し予算オーバーだけど、、、買っちゃおうかな、、、。自分で食べれば良いし。



 たかちゃんのチョコレートを選ぶ時は、すごく楽しくて、あんなに時間を掛けて選んでいたのに、今、チョコレートを見てもウキウキしない。

 変なの、、、。



*****



 お金を払い、プレゼント用の袋に入れて貰ってお店を後にした。


「みーくん」

たかちゃんがいた。

「あの、、、さ、、、」

たかちゃんはチョコレートの小さな紙袋を持っていた。僕の目は、たかちゃんの持っている紙袋に釘付けだった。

「流石、たかちゃん!モテるねぇ〜!」

「違、、、」

「じゃ、僕、急いでるから!」

僕は走って逃げた。そう、逃げたんだ。



 駐輪場から自転車を出し、急いで家に帰る。

 こーゆう時は事故に遭いやすいから気を付けないと、と考えながら自転車を走らせる。


 家に着いて、自分の部屋に入るとやっと自由になった気がする。買ったチョコレートを布団に叩き付けて、僕は思いっきり泣いた。



*****



 ずっとずっと、わかっていた事じゃ無いか!

 たかちゃんは僕に興味なんか無かったし。

 毎年チョコレートは受け取ってくれたけど、迷惑そうだった。

 僕は気付かないフリをして渡してたんだ、、、。

 だって、好きだったから、、、。


 前に真壁君が言っていた。

 たかちゃんにはずっと好きな人がいるって、、、。

 たかちゃんはモテるから、恋人がいても当たり前だ。



 コンコン


「拓未、尊士くん来てるけど」 

「いないって言って」

「、、、ここにいるんだけど、、、」

僕はため息をく。

(母さんのバカ、、、)


 僕はドアを開けた。

「今、コーヒーでも入れるね」 

母さんが言うと

「すみません」

と、たかちゃんが言った。


 たかちゃんは僕の布団の上のチョコレートを見つけた。

 居留守を使おうとした上に、チョコレートまで見られて恥ずかしかった。しかも、さっき迄泣いてたんだ。

(なんで来るんだよ、、、)

 二人で無言でコーヒーを待つ時間は地獄だった。

ドアをノックする音で、コーヒーを受け取りに行く。

「ありがとう」

と言うと、母さんはにっこり笑った。



*****



「どうぞ」

と言ってコーヒーを置く。

「あの、、、受験勉強、、、どう?」

「まぁまぁ、、、」

「そっか、、、」

(たかちゃんは一体何しに来たんだろう?)

そう思いながら、コーヒーを飲む。

「え、、、と、、、。これ」

さっき持ってたチョコレート。

「何?彼女から貰ったの、見せびらかしに来たの?」

と笑うと

「違う、俺からみーくんに」 

「え?何で?」

意味がわからなかった。

「いつも貰ってばかりだったから、、、」

僕はため息をいて

「僕が勝手にやってた事だよ」

と言った。

「うん、、、」

(うん、、、って、、、)

「、、、受験、頑張ろうね、、、」

そう言って、たかちゃんは立ち上がった。

「チョコレート、ありがとう」 

たかちゃんは、僕の顔を見るとちょっと泣きそうな顔をした。

「俺、彼女なんていないから、、、」


 玄関まで送り、たかちゃんが靴を履いてドアを開ける。

「勉強頑張ってね」

と声を掛けた。たかちゃんは

「みーくんもね」

と言って帰って行った。



*****



 この時期になると勉強もほぼ完成していて、後は体調と天気の心配ばかりしていた。


 試験当日は何事も無く、私立の合格発表を待った。

 卒業式も終わり、後は公立の合格発表を待つだけだった。



*****



 僕は無事に第一希望の大学に入学が決まった。



 たかちゃんからスマホに連絡が入ってた。

「今日、会いたい」

急だな、、、と思いながら

「いいよ」

と返事をした。

「今から迎えに行く」

って来て。

「わかった」

と返した。



「バレンタインデーに買ったチョコレート、、、。取り敢えず持って行くか」

と考えて、袋から出して鞄に入れる。


 玄関のインターホンが鳴って、たかちゃんが迎えに来た。


 玄関を開けると、たかちゃんが

「来て」

と言う。なんか機嫌悪そうなんだけど、、、。

 たかちゃんが黙々と歩くから、僕は必死に話し掛ける。

「たかちゃん、大学決まった?どこに行くの?」

「地元の公立」

「え?一緒だね」

僕は驚いた。

「知ってる。同じ所にしたから」

淡々と答える。

「ん?どうゆう事?」

「みーくんと同じ大学に行きたかったから、頑張った」

「そうなの?」

「高校もそう。みーくんが受ける高校にした」

えー、、、何も聞いて無いけど、、、。

「ねぇ、なんで怒ってるの?」

たかちゃんのマンションに着いた。たかちゃんが鍵を開けて、自動ドアを入って行く。

「怒ってない」

「怒ってるよ」

エレベーターを呼ぶ。

「、、、違う。緊張してるだけ、、、」

緊張?

「何で?」

「みーくんを家に呼ぶから、、、」

、、、?えっと、、、よくわからないんだけど、、、。


 玄関の鍵を開けて

「どうぞ」

とドアを開ける。玄関のすぐ横がたかちゃんの部屋だ。昔と変わらない。

「ジュース持って来るから、待ってて」

「うん」

僕はたかちゃんの部屋に入った。本棚に沢山問題集があって、頑張ったんだなって思った。

 たかちゃんはジュースを持って来ると、小さいテーブルに置いて僕の隣に座る。


「まだ、緊張してるの?」

僕が聞くと

「うん」

と言う。仕方ないな、、、と思いながら、こちらから話し掛ける。

「急に連絡が来て、びっくりしたよ」

僕はジュースに手を伸ばす。

「頂きます」

たかちゃんも手を伸ばす。

「受験終わったからさ」

「僕、この一年が1番勉強したよ」

「俺も、めちゃくちゃ頑張った」

「どうして、僕と同じ大学にしたの?」

「、、、」

たかちゃんが僕の顔をじっと見た。一度視線を落とす。

 たかちゃんは立ち上がると、机の上の紙袋を持って来た。

「ずっと渡せなくてごめん。、、、開けて」

「うん、、、」

シールをそっと剥がして、紙袋を開けると沢山の色んな箱が入っている。

「なぁに?これ」

「チョコレートのお返し、10年分」

「は?え?10年分?」



*****



 たかちゃんは僕の横に座り直した。

「小2の時、女の子にチョコレートを貰ったんだ。その時、その子から「大好きって気持ちを伝えてるんだから、ちゃんと考えて返事をしてね」って言われた」

(たかちゃんは小2からモテてたんだな、、、いや?もっと前からかな?)

「その時はそれだけだったんだけど、3年生のバレンタインデーにみーくんからチョコレートを貰った時、その子の言葉を思い出して、、、。俺、みーくんの事ちゃんと考えた、、、大好きだった、、、」

「うん、それが?」

「えっと、幼稚園の時から好きだったんだけど、恋愛の好きだって認識したのが小3のバレンタインデーで、、、それから、変に意識する様になったんだ、、、」

「だから急にお返しが無くなったんだ、、、」

「本当は、毎年準備してあった」

「え?これって、、、」

「違う、違う!それは、今年買い直したから古く無いよ!、、、でも、みーくんは幼稚園の頃と変わらないから、きっと俺の好きとは違う好きだと思ってた。俺ばっかり恋愛の方の好きだと思ったら、何だか恥ずかしくて、、、渡せなかった」

「、、、失礼だな。ちゃんと恋愛の方の好きだったよ」

「え?」

「僕は年少さんで、たかちゃんに一目惚れしたんだよ」

「、、、ごめん」



「去年貰ったメッセージカード、、、今年で最後にしますって書いてあってびっくりしたんだ。頭が真っ白になって、お礼を言うのも忘れて、、、。俺が何もしなかったから嫌われたんだなって」

「、、、そうだね、、、」

「うっ、、、。だから、今年のバレンタインデーは俺がチョコレートを上げようと思ったんだ」

「、、、そっか」

「チョコレート選びながら、みーくんもこんな気持ちだったのかな?とか、喜んでくれるかな?ってずっと考えてた。、、、考えながら、俺、ずっとお返しを渡せなかった事も思い出しちゃって、、、。本当にごめん。買うだけで渡せないなんて、みーくんの気持ち無視してたのと同じだよね」

「、、、うん」

ホント、そうだよ、、、。

「みーくんにチョコレート渡して、ありがとうって言われた時、嬉しかった。俺、高校生になってからちゃんとお礼も言って無かったなって、、、」

「、、、ははっ、、」

「みーくん、毎年チョコレートありがとう。10年も遅くなってごめんね」

「、、、ごめんねチョコって事かな?」

「うん?うん」

なんだ、チョコレートの意味は「ごめんね」なんだ、、、。

「わかった、、、ありがとう」

「?」

「あ、僕もチョコレート持ってるよ」

そう言って、鞄からチョコレートを取り出した。

「この間は、チョコレートありがとう。これはチョコレートのお礼のチョコレート。食べてね」


「?」

「、、、僕、帰ってもいいかな?」

にっこり笑う。

「あの、、、みーくん、、、」 

たかちゃんが不安な顔をする。

「なぁに?」

「怒ってる?」

「怒ってる」

僕が答えると、ピクリと反応した。

「何で?」

「このチョコレートはいらない。僕、別にお返しが欲しくてチョコレートを上げたんじゃない。好きだって気持ちを伝えたいから上げたんだ」

「うん」

「このチョコレート、10年間チョコレート貰ったけど、お返ししなくてごめんね。って意味だよね?」

「うん」

「、、、僕は、たかちゃんから「僕も好きだよ」って意味のチョコレートが欲しかった」

「あ、、、」

たかちゃんは「しまった、、、」って顔をした。

「僕はずっと、たかちゃんに好きだよって気持ちを込めて、チョコレートを選んでた。渡してた。だから、お返しが無くても、、、そりゃ、淋しかったけど、、、毎年続けられたんだ。でも、高校に入って、同じ高校なのに、スマホでお礼を言われた時、たかちゃんは僕の事何とも思って無いんだな、、、って感じた」

「そんな事ないよ」

そうだろうとは思う。

「そうだね、、、たかちゃんは僕の事、恋愛の好きって言ってくれたもんね。でも、高1の僕にはわからなかった」

僕は別にたかちゃんに意地悪をしたい訳じゃ無い。

 でも、感情が抑えられないのか、気持ちを全部話してしまいそうだった。

「去年最後にしたのは、僕も疲れちゃったからなんだ。それまでは頑張れたけど、もういいかな?って、、、。高3は受験もあるしね」

「もう、俺の事嫌い?」

「好きだよ」

たかちゃんがホッとした顔をする。

「でも、もう良いんだ。好きって伝えるのも疲れたし、別に付き合いたい訳じゃ無いし、、、」

「俺は付き合いたい、、、」

ギュッと握り拳を作っている。

「どうして?、、、」

「みーくんとは、ずっとこのままこの関係だと思ってた。でも、みーくんがバレンタインデーの日にチョコレート買ってるのを見た時、みーくんを誰かに取られるって思ったんだ」

「取られるって、、、」

「だって、みーくん去年が最後って言ったのに、チョコレート買ってるから、誰か好きな人が出来たのかと思ったんだよ。、、、そう思ったら、すごく嫌だった、、、」

「勝手だなぁ、、、」

本当に勝手だと思う。

「ごめん、、、」

「まぁ、良いけど、、、」

たかちゃんらしいと言えば、たかちゃんらしいし、、、。


「あの、、、みーくん、俺と付き合ってくれる?」

「どうして付き合いたいの?」

「好きだから」

「、、、先にそっちを言ってよ」

僕が仕方ないな、と笑うとたかちゃんは

「みーくん、好きです。付き合って下さい」

と微笑んだ。僕が、頭を下げて

「お願いします」

と言うと何だか可笑しくなって、2人で笑った。


 僕達はジュースを飲んで、チョコレートを食べた。たかちゃんが買ったチョコレートは一箱一箱は小さいけれど、どれ一つ同じ物は無くて、こんなに沢山選ぶの大変だったろうな、、、と思った。

 


 そして、家に帰ってから、今日がホワイトデーだって気が付いた。



*****



 大学の入学式はたかちゃんと一緒に行く事にした。たかちゃんは背が高いからスーツがめちゃくちゃ似合っていた。

「拓未!スーツ似合ってる。カッコいいね」

「いや、カッコいいのは尊士だからね」

 二人で歩けるなんて嬉しかった。毎日一緒に大学に行って、毎日一緒に帰った。

 今まで出来なかった時間を取り返す様に、いつもいつも一緒にいた。



*****



夏も終わり、少し涼しくなった頃。

「あの、市川君」

たかちゃんが、女の子に呼び止められる。

「はい」

たかちゃんはそっけなく返事をする。

「2人きりで話したいんだけど、、、」

「イヤだ。何かあるなら今言って」

「あ、、、」

たかちゃんは意外と冷たい所があるんだな、、、なんて考える。

 僕の肩を組んで

「何?」

と聞く。

「えっと、、、市川君と付き合いたいなって、思ってて、、、」

「無理。俺、長山で手一杯だから」

僕はたかちゃんの顔を見る。

「そっか、そっか、、、ごめんね」

彼女は恥ずかしそうに帰って行った。



「やっぱり恋人同士には見えないのかな、、、」

「まぁ、、、男同士だからね。」

大学に入学してから、たかちゃんはよく告白される。今までもたくさんあったみたいだけど、僕が知らないだけだったみたいだ。

 だからかな?意外とはっきりと断っている。僕なんて、一度も告白された事無いからビビっちゃうよ。



*****



「なーがやまっ!」

肩をポンッと叩かれた。

「おはよう」

「市川は?」

「すぐ戻ると思うよ」

「ね。長山、俺と付き合わない?」

「は?」

「だから、俺と付き合ってって言ってるの」

「え?」

「ま、いいや。考えておいて、返事はまた」

「はぁ」

そう言って、森くんは去って行った。

「市川、おはよう」

「おはよう、、、」

2人がすれ違い様に挨拶をしていた。



たかちゃんが、ホットココアの缶を渡しながら

「森、何だったの?」

と聞いて来た。僕は両手で受け取り

「え?、、、なんか付き合おうって言われた。ありがとう」

「は?」

「は?だよねぇ。僕も「は?」って言っちゃったよ」

プルタブを押し上げて、元に戻す。

「ダメだからね?」

「わかってるよ」

一口飲む。あったかい。

「みーくん、ちゃんとわかってる?」 

「わかってるって」

たかちゃんは、自分のコーヒーの蓋を開けながら、僕をジッと見た。

 僕はたかちゃん一筋なんだけどな、、、。


 森くんは結構な頻度で目の前に現れる。

「3人でご飯食べようよ」

にこにこして誘う。

「イヤだ」

たかちゃんの返事が食い気味でびっくりする。

「、、、」

「ねぇ、長山。市川って酷いよね」

「うるさい、近寄るな」


 たかちゃんがいる時は安心していられるけど、たかちゃんがいない時は厄介だった。

 何度も連絡先を交換しようと迫られる。たかちゃんに絶対交換しないでって言われているから、交換して無いけど、ずっと断り続けるのも正直面倒臭い。

 

 たかちゃんと昼ご飯を食べてると森くんが来た。それだけで、たかちゃんはイヤな顔をする。

「お疲れ様」

自然に僕の前に座る。

「お疲れ様」

たかちゃんは当然無視をする。

「ね、長山、バイト興味無い?」

「無い」

たかちゃんが先に答える。

「は!保護者みたいだな」

森くんが笑う。僕はヒヤヒヤして2人の会話を聞く。

「長山は、お前のモノじゃないだろ?」

「俺のモノだけど?」

「そうなの?」

森くんが僕に聞く。

「うん、、、」

恥ずかしくて、俯いてしまう。

「どこまでの関係なの?」

「???」

ガコッ!

「痛っ!てぇ、、、」

たかちゃんがテーブルの下で蹴りを入れたみたいだった。

、、、めっちゃ睨んでる、、、。

「はは、まぁいいや。長山、今度一緒に飯食いに行こうな」

森くんがテーブルの下で、靴の爪先をトントン当てる。僕は足が当たってしまったと思って足を引く。森くんは足を伸ばして、もう一度爪先をトントン当てて来た。

 僕が何だろうと森くんの顔を見ると、にっこり笑って来た。


 自販機の前で何を買おうか悩んでいたら、森くんが肩を組んで来た。正直びっくりして

「わ!」

と声を上げると

「かーわいぃー!」

と肩を組んだまま顔を寄せる。本当に何なんだ?

「ね、俺と付き合う気になった?」

「えぇ〜。あれって冗談でしょ?」

「冗談じゃないよ」

「市川くんならわかるけど、何で僕なんだよ」

「可愛いじゃん」

「可愛くないよ?!フツーだよ?」

いい加減組んだ腕を離して欲しい、、、。

「森、、、邪魔」

「おろ、保護者が来た」

たかちゃんが無言で森君の腕を掴み、僕の肩から外す。そのまま、僕の肩を軽くはたく。

「俺はバイキンか?」

「森、長山の事、別に好きじゃないだろ?」

たかちゃんは、僕より少し前に出る。

「そんな事無いよ。長山可愛いじゃん」

「女子から聞いた。森はヤバいって」

森君の表情が少し変わった。

「誰から?」

「誰でもいい」

「なんて言ってた?」

「仲の良い恋人同士を引き裂いて別れさせるって」

「え、、、ひど、、、」

僕はつい反応してしまった。

「気のあるフリをして近寄って、相手が別れたら無視するらしい」

「ちぇ、これから面白くなる所だったのに、つまんねーの」

僕は息を呑んだ。そんな酷い事する人に会った事が無い、、、。

「ま、いーや。次探すから」

そう言いながら、森くんは何処かに行ってしまった。

「えー、、、」

僕は言葉が出なかった。

「森の事、気になった?」

「ん?」

「えー、、、って残念そうだから」

たかちゃんがちょっと変だ。

「あぁ、違う違う。あーゆう人種にあった事無いから、びっくりして、、、」

「、、、そっか、良かった、、、。長山、森に頼まれたら、断る事出来なそうだったから、、、」

僕はギクリとした。だって、森君、良い人に見えたから。



*****



 金曜日の夜は、いつもお互いの家に遊びに行く。一緒に勉強したり、課題をしたり、ゲームをしたり、ゲームをしたり、、、。

 今日もおやつとジュースを買って、たかちゃんの家に行く。

 ほぼ毎週泊まりになるので、晩御飯は家で食べて、お風呂も入ってから行く。


「森君の話って誰から聞いたの?」

僕は気になっていたから聞いてみた。

「何人か女子が教えてくれた。最初は親切そうに近寄って来て、仲良くなって来ると色々彼氏の相談とか乗ってくれるんだって。その内、森の事好きになって、彼氏と別れるんだけど、森と付き合うと急に冷たくされるらしいよ、、、」

たかちゃんはゲーム機を片付けながら話してくれた。

「え〜、、、酷すぎる、、、」

僕からもリモコンを受け取ると充電器に差し込む。

「森がみーくんにちょっかい出してるの見て、心配して教えてくれた」

「じゃあ、被害者が結構多いんだ」

たかちゃんが片付けを終わらせて、僕の隣りに座る。

「みんな、彼氏と別れた事後悔してた。よく考えたら、そんなに酷い彼氏じゃなかったのに、森に相談してる内に酷い事されてる様な気になって来るんだって、、、怖いよね」

僕達は、しんみりしながらおやつを食べる。


「みーくんはお人好しだから特に心配だよ」

「そうかな?」

「もうちょっと、森に粘られたら、連絡先交換してたでしょ、、、」

「あ、、、うん、まぁ、、、」

「そんなみーくんも好きだけど、ダメだからね」


 ふと疑問に思って聞いてみた。

「、、、あのさ。ちょっと質問なんだけど、何がダメなの?」

「え?、、、」

「連絡先交換するのがダメなの?」

「違う、、、浮気、、、。俺以外を好きになったらダメ。ま、森とは絶対連絡先交換して欲しく無かったけど」

「たかちゃん、はっきり言わないからさ。わからなかった」

「みーくん、押しの強い人に迫られたら弱そうなんだよな、、、」

たかちゃんが溜息をく。

「そんな事無いよ!ちゃんと断れるよ!」

「そうかなぁ〜」

僕の横に座っていたたかちゃんが、間を詰める。

「本当かなぁ〜」

そう言いながら、頬を触って来る。

「なになになに?」

僕は肩を竦ませ、ちょっと避ける。

「拓未、、、」

たかちゃんが僕の腰骨に手を掛ける。ゾクゾクッとしてバランスを崩す。僕はたかちゃんと反対側に倒れて

「もぉ、、、」

と言ってたかちゃんの顔を見る。めちゃくちゃ真剣な顔をしている。

(え?)

「拓未、、、」

すっと身体を動かして、のしかかって来る。

「あの、、、たかちゃん?」

「なぁに?」

どんどん顔が近付いて来る。

「あの、、、ちょっ、、、」

「イヤ?」

「、、、イヤじゃないけど、、、」

たかちゃんが僕の瞼にキスをした。僕は力が抜けて

「たかちゃん!」

と抱きしめる。

「やっぱり押しに弱いなぁ、、、」

クスクス笑いながら、2人で抱きしめ合いながらゴロゴロする。

「だって、たかちゃんだからだよ、、、」



*****



 クリスマスは、イブに一緒に過ごした。

 僕達はアルバイトを始め、少しお小遣いが増えたから遊園地に行って夜まで遊んだ。

 お正月はちょっと遠い、有名なお寺に夜中から初詣に行った。電車はギュウギュウ詰めで、改札を出てもみんな同じ方向に流れて行くからすごく不思議だった。

 出店が沢山あるけど、なかなか辿り着けそうも無くて、びっくりした。

 あんまり混んでるから、たかちゃんが手を繋いでくれた。嬉しかった。

 夜通し一緒に過ごして、始発で帰った。今までそんな事した事無かったから、めちゃくちゃ疲れたけど幸せだった。



 そして今年もバレンタインデーが来る。僕達は、2人でチョコレートを選びに行って、2人でお金を出し合って、普段では絶対買わない、「これが1番高い!」ってチョコレートを探した。

 それを2人で持ち帰って、たかちゃんの部屋に行き2人で食べる。

 もうね、本当に幸せ。お高いチョコレートは、お高い味がして2人で

「幸せだね〜」

とまったりした。たかちゃんが

「今年もチョコレートくれて、ありがとう。みーくんの事大好きだよ」

と言ってくれた。

「僕も、たかちゃんの事、大好き」

そう言って、たかちゃんの唇をはむっと噛んだ。

 だって、美味しそうだったから、、、。

 たかちゃんがふふっと笑って、ぎゅっと抱き締めてくれた。


 バレンタインデーは僕達の大切なイベントになった。大好きな人に、大好きって言って、大好きって言われるって大切だと思う。来年も再来年も、たかちゃんと一緒にお高いチョコレートを探して、一緒に買って、一緒に食べたいな。



お高いチョコレート食べたいです。

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