【第8コード】成長のために
X更新中!
可愛い真白さんを水着姿な見れますよ♡
是非チェックを
X- rin_rincan
温水プールの静寂を打ち破る、轟音と爆風。
「ドゴォーーンッ!!」
空間が揺れるような衝撃と共に、水面が波打ち、白い蒸気が立ち上る。土煙ならぬ水煙の中に立っていたのは、黒髪の少年――結城 燐。そして、その正面に構えるのは、彼の倍はあるであろう、もふもふの巨大なクマのぬいぐるみ。
だがその外見に騙されてはいけない。
このぬいぐるみには、とんでもない“力”が詰め込まれているのだ。
「ねーねー、そんなもんなのー? 本気出すって言ったの、誰だったっけ?」
浮き輪に腰掛け、余裕たっぷりにからかうのは、訓練の仕掛け人・藤宮るる。
彼女の無邪気な笑顔が、いまはなぜか悪魔のように見えた。
「くっ……!」
燐が奥歯を噛みしめる。手には光の剣――形を定めぬ十字架のような刃。盾は既に展開済み。対するぬいぐるみは、巨大な拳を振り上げる。光とぬいぐるみの肉弾戦という、異様な光景が、今まさに始まろうとしていた。
「いくぞッ!!」
燐が地を蹴る。剣の軌道は鋭く、風を切る。
「カキィイイン!!」
剣と拳がぶつかり合い、金属のような音が響き渡る。信じられないことに、ぬいぐるみの拳はまったくひるまず、燐の剣と真正面から拮抗していた。
それでも、燐の動きは以前と違っていた。
“重心が低い。剣速が増している。間合いも正確だ――”
身体強化の精度と強度が確実に向上していた。
藤宮が小さく頷いた。「……フフ、やっとここまで来たんだね」
かつては触れることすらできなかったこの相手に、燐は今、正面からぶつかり、あと一歩のところまで追い詰めていた。
だが――
“その一歩が、遠い。”
燐の瞳に焦りが宿る。
「……くそぉッ!」
右手の剣が一瞬、強く発光する。
《叛逆の剣|コード・リベリオン》
その一撃に、燐のリビドーが込められた。守る意思と、突破への願い。そのすべてを刀身に載せ、真正面から、クマのぬいぐるみに挑みかかる。
ぬいぐるみも応えるように、大きく拳を振りかぶる。
「おおおおおっ!!」
「……がぁぁあああっ!!」
刹那、光と影の衝突。拳と剣がぶつかり、プールサイドに再び轟音が響く。
「ドッッゴォォォンッ!!」
弾け飛ぶ水。吹き飛ばされる燐。
しばしの沈黙の後――
「……今日も私の勝ちだねぇ〜♡」
ぬいぐるみの肩に座り、勝ち誇った笑みを浮かべる藤宮。
地面に倒れながら、悔しそうに呻く燐。
だが――その瞳に、わずかな光が宿っていた。
彼の視線の先には、片腕を吹き飛ばされたぬいぐるみが立っていた。
(……当たった。あの拳を、切り裂いた……!)
手応えがあった。それだけで、燐は自分の成長を実感できた。
だが次の瞬間――
「……ぴこっ」
もげていたはずのぬいぐるみの腕が、まるで元からあったかのように復元される。
「えっ……」
「まぁ、まだまだなんだけどね〜♪」
ぺろっと舌を出して笑う藤宮。
燐の心の中に、再び小さな絶望が広がる。
(……この人はいったい、どれだけ強いんだ)
だが、それでも。進んでいるという実感は、確かに彼の中に灯っていた。
-----
プールサイドに、穏やかな時間が流れていた。
「え、さっきの爆音、藤宮先輩と燐さんだったんですか!?」
驚きの声を上げたのは木野だった。タオルで髪を拭きながら、思わず立ち上がる。
「うむ。燐も、少しずつではあるが成長しているようだな」
神代が頷きながら答える。彼女の瞳には、どこか満足げな色が浮かんでいた。
「でもあんまり無理しないでね」
真白が心配そうに声をかけてくる。燐は少し照れたように笑いながら、頭をかく。
「ありがとう……でも、まだ藤宮さんの足元にも及ばないや」
「当たり前じゃーん。私は強いんだから~」
浮き輪にぷかぷかと浮かぶ藤宮が、ふざけた口調で言い放つ。けれど、その実力を誰もが知っているがゆえ、誰も否定はしなかった。
その和やかで温かな空気を、爆音が切り裂いた。
──バゴォォン!
豪快に蹴破られる扉。その先から現れたのは、100人を超える集団。そして――燐の目に映ったのは、あの男。
「……あれは、前に戦った奴……裂爪の……」
鉤爪のような金属器具を装着した男が、堂々と歩み出てくる。だが、そこにカゲトの姿はない。
「なんのようかなー? ここは貸切のはずだけど」
藤宮の声が、空気を締めつけた。いつもの明るさの奥に、低い威圧が混じる。
男が前に出て名乗る。
「俺は鉤爪 斬鉄。今日はカゲトさんの代行で来た」
集団の中でも異様な存在感を放つ斬鉄の視線が、燐を捉える。
「結城燐。先日の返事を聞かせろ。俺らの仲間になるか──断って死ぬかだ」
強引な二択。しかし、燐は即答した。
「断る。俺の意思は決まってる」
まっすぐな声が、響き渡る。
「俺の力は……俺が護りたいもののために使う!」
その言葉に、斬鉄は薄く笑った。
「……そうか。忘れるな。次会う時が貴様の最後だ」
そう言って踵を返した斬鉄。その背を追って、集団が動き出す。
だが、そこに神代の冷たい声が響く。
「なんだ? 逃げるのか」
ピタリと足を止める斬鉄。その背に追い打ちをかけるように、藤宮が挑発する。
「本当にね。あいつら、燐にビビってるんだ~」
その一言に、斬鉄の肩がピクリと動いた。振り返り、怒気を孕んだ声で言い返す。
「舐めんなよ。あんな奴、俺一人で十分だ。今は大事な時期……貴重な戦力を、貴様ら化け物二人にぶつけるのは得策じゃねぇ。だから引くだけだ」
藤宮が、にやりと笑う。
「じゃあ、こうしよっか。燐とお前で一対一。正々堂々の勝負なら、私たちも止めないよ?」
「なっ、そんな勝手に……!」
思わず声を上げる燐だったが、藤宮は振り返って、ウインクひとつ。
「大丈夫。今の君なら、勝てるよ。私は確信してる」
「私も!」
真白が、力強く続く。
「燐なら、あんな人に絶対負けない!」
神代も、木野も、無言で頷いていた。
斬鉄が、ニヤリと口元を歪めた。
「……いいぜ。そこまで言うなら、挑発に乗ってやるよ」
こうして、決戦の火蓋は静かに──だが確実に、落とされた。
以前は完全に押された相手に燐は勝機をつかめるのか