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コードレガリア【Code: Regalia】力を持たない俺が、“心の剣”で世界を斬る  作者: お犬のリン様
一章-学園編-学園祭《レガリア・オーダー》
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【第41コード】最強の称号を持つ者②


⸻


爆ぜる熱気が観客席まで届く。

《烈破炎砕(れっぱえんさい)|フレイム・バースト・クラッシュ》

柏木 大牙の全力が、炸裂する。


拳が空間を割り、地響きのような重低音が会場を揺らす。

炎の波が放射状に駆け抜け、ステージの床を焦がし、辺り一面が灼熱のドームと化す。


「な、なんだこの熱はぁぁあっ!!」


雄吾の声が裏返る。

会場は騒然、ざわめきの奔流が巻き起こる。


「か、柏木選手! 1年生の彼が、このステージを焼き尽くすような――広範囲型の超爆発拳をぶっ放しましたぁぁぁっ!!」


実況席に立ち上がる者まで現れる始末。


「ま、まさかこれは……もしかすると、もしかするのかぁあああ!? 獅堂を――止められるのか!?」


ステージ上、柏木は拳を突き出したまま立ち尽くしていた。

蒸気と火花に包まれ、彼の瞳には確かな執念が宿っている。


「はぁっ……はぁっ……これが、俺の……全力だ……!」


その炎の渦の中心、誰もが獅堂の姿を見失っていた。

だが――


「……見事な一撃だ。」


低く、しかし会場全体に響くような威圧的な声。

その熱の中から、堂々と現れたその姿に――誰もが息を呑んだ。


「けどな……まだ、届いてない。」


――獅堂 獅音。


炎の壁を抜け、無傷でそこに立っていた。

金の髪が風に揺れ、黒の戦闘服が熱をものともせず揺らめく。


「その気迫に、敬意を表しよう。」


獅堂はゆっくりと拳を掲げる。

その瞬間――空気が変わった。


眩い金色の光が、彼の背に紋章のように浮かび上がる。


覇獅王印《レガリオン・クレスト》


それはまさに“王”の証。

観客が息を呑む。実況が言葉を失う。


「な、なにを……今、あれは……!」


「き、金色……!? なんて...神々しいんだ……」


黄金のオーラが獅堂の身体を包み、風を巻き起こす。

拳に纏うのは、神々しき威圧と崇高な輝き。


「この拳は――神の力を受け継ぐ者の証明だ」


柏木が目を見開く。


「《烈破炎砕》で終わらなかった……!? まだだ、まだ負けるわけには――!」


炎と光の拳がぶつかり合う。

その瞬間、空間が軋み、ステージそのものが砕け散った。


――まさに、激突。


そして。


轟音と爆風が消えたその先。


吹き上がった土煙の向こう、観客全員が息を呑んだまま、目を凝らしていた。


音が、消えた。


舞い上がる熱の残滓。その中心に――


「……ッ」


立っていたのは、獅堂 獅音だった。


彼は拳を静かに下ろす。

金のオーラが揺れながら霧散し、まるで役目を終えた神の加護が天へ帰るように、消えていった。


その足元には――


「す……すみませんッ、ゆ……悠斗さん……」


倒れ伏す、柏木 大牙の姿。

顔を地に打ちつけたまま、気を失っていた。


その身体は満身創痍だった。

皮膚には焦げ目。拳には血が滲み、呼吸もかすかに震えるだけだった。


観客からは、しばし沈黙。

それを破ったのは、実況・鳴神 雄吾の叫びだった。


「し、試合終了――ッ!!!」


「決着だぁぁぁあああああああああああッ!!」


歓声が爆発した。


「立っていたのは……獅堂ッ!!! Dブロックの1位通過は、獅堂 獅音だぁぁッ!!!」


その名がコールされた瞬間、会場全体がどよめきの渦に包まれた。


「やはり……あの男は別格だ……」

「新星、柏木の新技すら通じなかった……!」

「今年の“王”は決まったようなものだ……!」


栄光継承世代(グローリー・ヘリテージ)の頂点に立つ者、

――覇獅王《レガリオン・クレスト》の継承者。


その姿は、まさに伝説の再来であった。


**


ステージの片隅で、医療班が急いで柏木を担架に運ぶ。


それを静かに見送った獅堂が、独り言のように呟いた。


「悪くなかった……炎の拳。」


彼の瞳は、どこか遠くを見ていた。


この戦いは、まだ序章に過ぎない。

嵐のような予選が、幕を閉じた。


------


それは、確かな成長と、未来への誓いを刻んだ男の顔だった。


観客席の一角。

A~Dブロックの予選が終わり、大きな歓声と熱気が渦巻くなか、燐は静かにモニターを見つめていた。


「……強すぎる」


画面には、獅堂が柏木の猛攻を圧倒した一撃が、何度もスロー再生されていた。


あの爆炎すら、獅堂の拳はたやすく押し返した。


「まるで……あれが“神の力”ってことか……」


自分の剣で、あれに太刀打ちできるのか?

燐の中に、初めて“本当の意味での不安”が芽生えていた。


——どう戦えばいい?

頭の中で何度もシミュレーションしてみる。だが、浮かぶイメージの中でも、獅堂の姿は圧倒的な存在感で立ちはだかり、すべての策を打ち砕いていく。


(……勝てる気が、しない)


そんな時だった。


「燐くん!」


後ろから聞き慣れた声がした。

振り向けば、そこには真白、藤宮、そして生徒会長・九条の姿。


「やっと見つけた~。ちゃんと休んでる?」

藤宮がタオルを投げてよこす。


「……ありがとう。でも……もし獅堂と当たった時に、どう戦えばいいのか、正直分からなくて」


燐の言葉に、真白は微笑みながら隣に腰を下ろした。


「燐くんなら大丈夫。あなたはこれまで何度も、答えを見つけてきたでしょう?」


その言葉に、燐の胸に灯るものがあった。


ふと気になって尋ねる。


「藤宮さん達は出場しないの? 生徒会なのに」


すると、答えたのは九条だった。


「今年は、少し不穏だからな。大会の運営と……警備側に回っている」


「不穏……?」


九条は短く頷いた。


「正体不明のコード保持者が、複数校に潜伏しているという情報があってね。今大会、何かが起きる可能性がある」


重く張り詰めた空気が一瞬流れる。


「でも……その分、私たち生徒会が絶対に守るから。燐くんは、自分の戦いに集中してね」


藤宮が柔らかく微笑む。その声が、燐の不安を静かに包んでいった。


「私もそのお手伝い!だから燐は頑張ってねぇ」


(俺は……)


もう一度、自分の拳を見つめる。


(この力で、どこまで届くんだろう)


悩みの中に、少しずつ輪郭を帯びてくる“答え”があった。


その時だった。


——「時は近い」


静寂の中、どこからともなく響く“声”。


——「世界の秩序が、変わろうとしている」


まるで脳内に直接届くような、男とも女ともつかない低く響く声。


——「真の力に、目覚める時だ……燐」


「……っ!」


燐は息を呑んで顔を上げた。しかし、周囲は変わらず。真白たちも何も気づいていない様子だった。


(……まただ)


以前にも一度だけ聞こえた、あの“謎の声”。


聞き間違いとは思えない。けれど、その正体も意味も、まるで分からない。


「どうかした?」

真白が心配そうに覗き込んでくる。


「……いや、なんでもないよ」


微笑んでみせたが、胸の奥に走ったざわめきは簡単には収まらなかった。


(あの声……一体、誰なんだ? 俺に、何を……)


気づかぬうちに、燐の中で“何か”が動き始めていた。

それは、己の奥底に眠る“力”への呼びかけか。それとも、別の何かか——。


-----


薄く煙った治療室。静まり返った空間の中、柏木の瞼がゆっくりと開いた。


「……チッ、負けたか」


天井を睨みつけるように見つめ、呟く柏木の声には、痛みと――悔しさだけではない、どこか清々しさが混じっていた。


診療室には静寂が戻っていた。


ベッドに横たわる柏木 大牙は、天井を見つめながら拳を握っていた。

痛む身体よりも、心の奥でくすぶる悔しさが強く燃えていた。


ドアが静かに開く音。


「よぉ、元気そうじゃねぇか。」


ふいに聞こえたその声に、柏木は驚いたように振り返った。


「悠斗さん……!」


そこには、どこか気恥ずかしそうに立つ久世 悠斗の姿があった。


「お見舞い、っすか……?」


「まぁな。」


悠斗は手にしていたリンゴジュースのパックを柏木に投げ渡す。


「お前は馬鹿だな。……獅堂を避けてりゃ、予選突破はいけたろ。」


その言葉に、柏木は少しだけ目を伏せた。


「おれ……」


言いかけて、言葉に詰まる。だが悠斗は、ふっと笑った。


「ばーか、分かってるよ。」


柏木の目が見開かれる。


「……俺のためだろ?」


「え……」


「お前は、獅堂がどれだけヤバい相手かを知ってて、あえてぶつかった。少しでも情報引き出そうとしたんだよな?」


悠斗は、壁に寄りかかりながら言葉を続ける。


「俺はな、獅堂が1位になると読んで、わざと4位を狙った。決勝トーナメントで、あいつと当たりやすくなるようにな。」


柏木の中で、全てが繋がった。


(やっぱり……悠斗さんは、全部見えてたんだ)


柏木は思い出す。1年前、悠斗が1年生だった時。


入学当時彼が挑んだのは、当時2年生の獅堂 獅音——そして、完敗だったという話を。


その借りを返すため、悠斗はずっと準備していたのだ。


「……ありがとうな。」


ぼそりと、照れくさそうに柏木が呟いた。


「悠斗さん......俺ぇ~。」


悠斗はそっぽを向いたまま、だがわずかに口角を上げる。


「でもまぁ……あの爆炎の拳、なかなか見応えあったぜ。」


「ええ……まじですか!それ、褒めてます?」


「どーだろな。」


ふたりの間に流れるのは、静かで、確かな信頼だった。


そして悠斗は、診療室の扉に手をかけながら、こう言った。


「次は……俺が勝つ。」


柏木は、笑みを浮かべて力強く頷いた。


「その時は、俺も負けねぇっすよ。」


熱き闘志が、またひとつ繋がっていく——。

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