【第2コード】韋駄天を持つ男
Xにて
rin_rincanで活動予定!
フォローしてね
翌朝。空は雲ひとつなく晴れ渡り、私立・オルディナ学園の校舎を照らしていた。春の柔らかな光が差し込む校庭には、始業前の生徒たちが思い思いに集い、笑い、会話を弾ませている。
しかし――そのざわめきの中心には、ある“噂”があった。
「マジで? 柏木がやられたって?」
「嘘だろ、あいつはコードを持つクラスでも上位のやつだろ?
どんな魔法使ったんだよ、そいつ……」
教室の中も例外ではなかった。ざわつく空気が、まるでひとつの波のように広がっていく。机に肘をついて座っていた燐――結城 燐は、その話題の渦中にいる張本人として、静かに額に手を当てていた。
(……)
頭の奥がじんじんと疼いている。昨夜の激闘の余韻、というには生々しすぎる記憶。拳が肌を焼くような熱さをもたらした瞬間や、半透明に浮かぶ盾の感触。光子状の剣が手に馴染んだ感覚。すべてが、現実だった。
けれど――それ以上に、今も胸を占めているのは、夢の中で出会った“何か”の記憶。
《世界は終わりを迎える――力を求めよ》
誰かが、そう言った。言葉としては聞き取れなかったはずなのに、確かにそう告げられた感覚がある。不思議な感情。けれど確かに、自分の深層にまで届いたあの声。
「リンくん、大丈夫……?」
そのとき、そっと耳に届いたのは、彼女の声だった。
天音 真白。肩まで流れる白銀の髪が朝日を弾き、まるで一輪の花のように眩しい。淡い水色の瞳が、心配そうに揺れていた。
燐は、一瞬目を逸らす。
「あ、ああ……別に。ちょっと寝不足なだけ」
「……昨日の傷まだ痛むよね?」
その言葉に、燐は肩を一瞬だけ震わせた。だが彼女の声色は、責めるでもなく、憐れむでもなく――ただ、優しかった。
「ごめんね、私のことで……巻き込んじゃって」
「違う、真白。……あれは俺が、自分で決めたことだよ」
燐は静かに、けれど確かにそう言った。
真白は、その言葉を数秒噛み締めるように口を閉じ、やがてふっと微笑む。
「……ありがとう」
その一言に、燐の胸が少しだけ温かくなった。
(この笑顔を――俺は、守りたいんだ)
そんな想いが、また胸の奥に芽を出していた。
* * *
昼休み。教室でパンを齧っていた燐の元に、急な訪問が来た。
「失礼。結城燐くん、いるかな?」
声をかけてきたのは、紺色のブレザーを着こなした上級生だった。胸元には、金色のエンブレム――生徒会章。
「……俺?」
「生徒会室まで来てもらえるかな。」
クラス中の視線が燐に注がれる。
「あいつなにやったんだよ……」
周囲の囁きは無視して、燐は静かに立ち上がった。胸の中に広がるのは、不安よりも、奇妙な静けさだった。
生徒会――それは、この学園における秩序の象徴。
学園内の秩序維持と情報統制を担い、エリートクラスから選ばれる選りすぐりの生徒によって構成される。その存在は、教師よりも生徒たちにとって強大な影響力を持つとさえ言われていた。
燐は校舎の奥、ほとんど一般生徒が近づかない管理棟へと足を運んでいた。
(生徒会室……こっちで合ってるよな)
木製の扉の前で、一呼吸おいてノックする。
「失礼します」
扉を開けると、広々とした会議室のような空間が広がっていた。室内は静謐で、外の喧騒とはまるで別世界のよう。
中央に据えられた円卓。その向こうに座っていたのは――二人の生徒だった。
一人は、切れ長の目と整った顔立ちの、鋭い印象の青年。
もう一人は、ソファの上でぬいぐるみを抱えて座っている、小柄な少女。
「来たな。……座ってくれ、結城燐くん」
青年が低く、落ち着いた声で言った。
「先程は失礼した。私は生徒会長、九条 理央。三年生だ。こちらは会計の花宮るる」
「は~い♪ よろしくね~、りんくん♪」
るると名乗った少女は、にっこりと笑って手を振る。その仕草は幼さすら感じさせるが、その眼差しはどこか鋭さを湛えていた。
燐は、少し戸惑いながらも席に着く。
「俺に……何か用ですか?」
「先日コードクラスである柏木を倒したということだが……コードに目覚めた、ということだな。君自身が一番、まだ信じきれていないかもしれないが」
椅子に座ったまま、会長は指先を組みながら静かに続けた。
「コード能力に目覚める者は、歴史的に見て少しずつ増えている傾向にはある。だが――それでも全人口の1%前後とされているのが現実だ」
燐がわずかに眉を動かすと、会長はうなずいた。
「つまり“選ばれる側”に立ったということだよ。だが君のように15歳を超えて初めて能力に目覚めるパターンは……非常に稀だ。多くの能力者は、遅くとも10歳前後までには何らかの兆候が現れる」
「……やっぱり俺は、特殊なんですね」
「そうだな。レアケースである分、注目もされる。期待も、同時に――責任も、な」
会長のまなざしは、燐の奥底を試すように静かだった。
「単刀直入に言おう。君に依頼したいことがある」
理央の言葉に、燐は思わず身を乗り出した。
「依頼……?」
「現在、学園には不穏な影が迫っている。詳しくは今調査中だが――我々、生徒会は調査と対処に動いている」
理央の声は冷静だったが、その奥には緊張が滲んでいた。
「ただ、我々生徒会は学園の顔でもある。そんな我々が動けば、すぐに相手に感づかれてしまう可能性がある。だからこそ……君のような“目立たない存在”の力が必要なんだ」
「……俺が?」
思わず、声が裏返る。
「そう。君は、昨日柏木に勝った。生徒たちはざわめき、噂が広がった。だが、同時に――君はまだ、“注目されていない存在”でもある」
「なるほどね~。見た目は地味だし、普通科だし? でもちょっとやる子、っていう一番使いやすい立場だよ~♪」
「……フォローされてるのか、されてないのか……」
燐がぼそりと呟くと、花宮が小さくくすりと笑った。
「組織と接触されて困るのは、“四天王”」
「四天王って……生徒会と違うのか?」
「違う。あちらは“強さとカリスマ”で選ばれた象徴だ。生徒会はあくまで“人格と適正”で構成されている。だが、四天王の力は無視できない。ゆえに、君にはソイツらにの動向を探ってほしい」
燐は黙って、拳を見つめた。自分が誰かに必要とされるという感覚――それは、これまでの学生生活では一度も味わったことのないものだった。
「……わかりました」
その一言で、空気が変わる。
「ありがとう、燐くん♪ あ、ちなみに明日から訓練するからね~。四天王は強いから、そのままだと一瞬で吹っ飛ぶよ?」
「訓練……って、誰が?」
花宮は、自分の胸を指さしてにこり。
「わたし。よろしくね、教え子くん♪」
燐は、一抹の不安を覚えながらも、こくりと頷いた――。
--------
放課後。
夕焼けが校舎を茜色に染める頃、燐と真白は並んで歩いていた。長く伸びた二人の影が、学園の広い敷地のアスファルトに重なる。
「今日の生徒会呼び出しなんだったの?」
先に口を開いたのは真白だった。彼女は制服のスカートを揺らしながら、やや俯き加減で燐の顔を覗き込む。
「うん。……いろいろ話があって」
「どんな話?」
「あんまり言えない。でも、俺にしかできないことを頼まれた」
そう言った燐の横顔には、不安と少しの覚悟が混じっていた。
真白はふと立ち止まり、まっすぐに燐を見つめた。
「……大丈夫?」
「……わからない。でも、俺…..思ったんだ。力が欲しいって」
彼の瞳は夕日に照らされていた。強い決意というにはまだ揺らぎのある、けれど確かに何かを変えようとしている眼差し。
「……じゃあ、信じる」
真白は、やわらかく微笑んだ。その横顔は、どこか寂しげで――けれど、誇らしげでもあった。
「ありがとう」
燐がそう呟いた、まさにそのとき――
「おーい、そこの一年生~~!」
突然、後方から声が響いた。
振り向くと、風を切るようなスピードで、一人の生徒が駆け寄ってくる。制服の着こなしはだらしないが、体のバネとスピードは尋常ではない。つむじ風のような勢いで、二人の前に立ちはだかった。
「やっぱりいた~、君が“結城 燐”くんね?」
軽薄な口調。しかしその眼には、爛々とした好奇心と――闘志が宿っていた。
「……君は?」
「俺? 久世 悠斗、二年。柏木の先輩でもあり四天王と呼ばれる者でもある」
その名を聞いた瞬間、燐の背筋に冷たいものが走る。
(四天王――生徒会長が言ってた……)
「昨日、ウチの柏木がちょっと世話になったらしいじゃん?」
「……」
「いや~、あいつね、最近ちょっと天狗になってたからさ。ちょうどいい薬だったかも。おかげでちょっと目が覚めたみたいでさ?」
悠斗は人懐っこい笑みを浮かべながら、ひょいっと燐の肩を軽く叩く。
「じゃあ、ちょっと“実力”見せてくれる?」
風が鳴った。
次の瞬間、悠斗の姿が掻き消える――!
「っ!?」
「こっちだよ~?」
声が聞こえたときには、もう後ろにいた。
振り返る間もなく、燐は軽く背中を叩かれ、バランスを崩して膝をつく。
「まだ立ってられるだけマシかな? でもね、俺、“加減”とか苦手でさぁ……」
「やめてください!」
真白が思わず叫ぶ。だが悠斗は涼しい顔で手を上げた。
「わかってるって。……でもね、これは“男のケジメ”だからさ?」
燐は歯を食いしばり、なんとか立ち上がろうとする。
(クソッ……柏木との傷がまだ治ってないのに……)
膝が震える。胸が焼けつくように痛い。それでも――
(俺が止めなきゃ……誰が、真白を守るんだ)
「よし、じゃあ――ちょっとやってみようか」
ユウトの右足が地を蹴った瞬間、地面が砕ける。
(速い――!)
視線で追うこともできない速度で、拳が迫る。
そのとき、燐の脳裏にあの“盾”がよぎった。けれど――間に合わない。それほどの速さであった
「――ぐっ!」
拳は脇腹に突き刺さり、燐の体が宙を舞う。地面を転がり、制服が土に汚れ、口から血が滲む。
「燐くん!」
真白が駆け寄ろうとするが、悠斗がさっと前に立ちふさがる。
「やめときな。こっからは、男と男の問題だからさ」
悠斗は、まるで何事もなかったかのように振り返り、笑った。
その瞬間燐の光剣が悠斗の頬をかすめる。
「へぇ~俺のスピードをみて諦めないんだ」
そのまま燐は倒れた。
立ち上がれないまま、悔しさに拳を握りしめた。
(……俺は、まだ……何もできない……)
「またいつかもう一度やろうぜ、リンくん」
そう言い残して、ユウトは風と共に去っていった。
夕焼けの中、燐は倒れたまま空を見上げる。
頬を伝うのは、血か、涙か――それすらもうまくわからなかった。
---------
翌朝。
オルディナ学園の敷地内にある“特別訓練棟”は、一般の生徒たちがまず足を踏み入れることのない、封鎖された施設だった。校舎から少し離れた場所にひっそりと構えるその建物は、外観こそ古めかしいが、その内部には国家級の特殊設備が整っていると言われている。
(本当に……学校の中なのか、ここ)
燐は、コンクリートと金属の無機質な廊下を歩きながら、思わず息を呑んだ。
左右に並ぶ分厚い防音扉の数々。訓練室と呼ばれるそれぞれの空間は「闘技場」と言っても差し支えない広さと重厚さを持ち、まるで軍の秘密施設のような圧迫感すらある。
そして今日、彼が案内されたのは、その中のひとつ――生徒会権限によって“完全貸切”された訓練所αだった。
「おっそーい、リンくん! 遅刻ギリギリじゃーん!」
待っていたのは、制服の袖をゆるく揺らした少女――花宮るるだった。今日も変わらず元気いっぱいに手を振る彼女の姿は、さながらこの無骨な空間の“異物”だった。
燐は苦笑しながら近づく。
「……いや、ちょっと迷って」
「ふふ、まあ初めての子はだいたいそう言うんだよねー。で? 昨日のユウトくんと会ったんだって、どーだった?」
唐突な問い。だが、るるの瞳はまっすぐに彼の返答を待っていた。
燐は、ほんの一拍だけ間を置いてから答えた。
「……強かった。まるで、次元が違った」
「うんうん、それだよねー!授業前に会っちゃうなんてついてないね~」
花宮はにこにこと頷きながら、腰に手を当てて胸を張る。
「それってね、リビドーの使い方が上手いからなんだよ。ユウトくんの《コード》は“韋駄天”。学園最速の称号は伊達じゃないし、それに――」
と、彼女は手をひらひらと動かしながら言った。
「加速だけじゃなくて、彼はリビドーで身体能力も強化してるの。つまり、あのスピードは“コード”と“リビドー”の合わせ技ってわけ」
「リビドー……?」
燐は聞き慣れないその言葉に、思わず眉をひそめた。
「それって……何なんですか?」
花宮は小さくうなずくと、足元にあった丸椅子にぴょんと飛び乗り、足をぶらぶらと揺らしながら説明を始めた。
「リビドーっていうのはね――ざっくり言えば、“人間の欲望”のエネルギーだよ」
「欲望……?」
「うん。『強くなりたい』『守りたい』『認められたい』……そういう、心の奥から生まれる“願い”とか“衝動”。それが力になって、体の中を流れるエネルギーになるの」
「……体の中に?」
「そ。リビドーはね、血液や神経みたいに体内を巡ってるって言われてるんだよ。だから、ちゃんと“流す”イメージが必要」
花宮はぬいぐるみ型のぺんを取り出し、空中に人体図を描くようにしながら続けた。
「たとえば、手に力を集中させたいときは、リビドーをその手に流す。脚を速くしたいときは、脚に流す。……意識して制御すればするほど、コードなしでも身体能力を引き上げられるの」
「じゃあ、ユウトは……」
「うん。あの人は“欲望”の塊だよ。速くなりたい、強くなりたいって思い続けてる。それに、あの性格でしょ? 欲に素直な分、リビドーの流れも強くて、扱いも上手いの」
燐は息をのんだ。
(……じゃあ、あのスピードは、“あいつ自身”の意志そのものってことか)
花宮は笑顔を見せながら、最後にこう締めくくった。
「で、今から君にやってもらうのは、そのリビドーの“流し方”のお勉強。まずは……身体能力の底上げだよ!」
「お、おう……」
「それじゃあ、特訓開始だよ~!」
ぱんっ、と手を叩くと同時に、花宮は背中のリュックを開けた。
中からふわりと姿を現したのは、直立したクマのぬいぐるみだった。高さは燐の腰ほど。見た目はふかふか、よくある癒し系のクマさん……のはずだった。
「……なにこれ?」
「この子、名前は“もふお”だよ~。私のコード《玩具の行進-トイ・パレード》で動いてるの。……ふふ、甘く見てると痛い目見るよ?」
花宮が軽く指を鳴らした瞬間――
ぬいぐるみのクマが動いた。
重たい足音を立てながら、ぬるりと歩き出す。“ふわふわ”だったはずのその動きには、妙な重みと圧があった。足元の床が軋む。
(……嘘だろ、ただのぬいぐるみじゃないのかよ)
「じゃあ、この“もふお”から1本取ってね~。それができなきゃ、ユウトくんとの再戦なんて夢のまた夢だよ?」
花宮が悪戯っぽく笑った。
燐は目の前のクマに向き直り、肩を落として小さく息を吐く。
「……わかった。やるしかないんだな」
踏み込む。距離を詰める。勢いをつけてパンチを繰り出す――!
しかし。
もふおの右腕が回転するように動き、燐の拳をすんでのところで払い落とした。
(……え?)
間髪入れず、もふおのボディプレスが飛んできた。
「ぐっ……!」
かろうじて腕でガードするが、クマの見た目に反してその重みは洒落にならなかった。地面に膝をつき、息が乱れる。
「もふお~、いけいけ~! 反応できないようなら、まずはリビドーの流し方を覚えなきゃね~!」
(言われなくても分かってるよ……!)
だけど、どうやってリビドーを“流す”んだ?
燐は呼吸を整えながら、意識を内に集中させる。体内にある“流れる何か”を、思い描く。
“強くなりたい”
“守りたい”
“勝ちたい”
その感情を、拳に込める――イメージの中で、心の熱が、血流のように巡る。
拳が少しだけ、熱を帯びた。
そのまま跳ね起きて、もふおに再び突っ込む!
「うおおおっ!!」
今度の一撃は、しっかりとクマの腹部に命中した。柔らかいのに、妙な反発を感じる打撃感。
もふおがぐらりと後退する。
「おっ、少しはコツ掴んできた?」
「たぶん……リビドー、ってやつ、少しわかった気がする」
「その調子! でもね~、これからだよ?」
花宮が再び指を鳴らす。
もふおの動きが一段と速く、鋭くなった。
目の奥で光るビー玉のような視線が、どこか殺意じみたものに変わっていた――。
(さっきより、体が……軽い?)
心の中でそう思った瞬間には、もう拳を振るっていた。
もふおの右フックを紙一重で避け、体を反転させる。
――“強くなりたい”という想いが、自分の体を支えている。
燐はもふおの背後に回り込むと、振り返る隙にボディに一撃を入れた。
ドスン、と確かな感触。もふおの体がよろける。
「やった……!」
が、喜びは束の間だった。
クマの背中から回転しながら飛んできた逆手の肘打ちが、燐の脇腹に直撃する。
「ぐ……!」
今度は声にならないほどの痛み。視界が霞む。
(でも――まだ倒れない)
“諦め”の言葉を飲み込み、“踏み止まる”選択をする。
どこかで“無理だ”と決めつけていた自分は、もういない。
「はぁ……はぁ……」
息は上がる。体も痛い。だが、不思議と心は折れていない。
(俺は、強くなる)
――真白を守るために。
――自分を変えるために。
その想いが、リビドーを加速させた。
身体の中にある“熱”が、再び巡り始める。
そして――
「はっ!!」
もふおの一撃を掻い潜り、胴に飛びつく。
自分の体重ごとぶつけるように投げ飛ばす。
訓練場に響くぬいぐるみの鈍い着地音。
……沈黙。
花宮が驚いたように、ぱちぱちと拍手を送った。
「やったね、1本!」
燐は、膝をつきながら息を吐く。
「……これが、リビドーか……」
「そう。少しずつコツを掴めば、君はもっと強くなるよ」
るるは、小さく微笑んだ。
「――ねぇ。これでもう一度、あの速すぎるユウトに勝てそう?」
燐は、少しだけ考え込んでから、首を横に振った。
「……まだ、遠い。でも、目指せる気はする」
「それで充分。進もうとする意思が、君の武器になるんだから」
花宮るるは、ふわりとスカートを揺らし、笑った。
「次はもっと強い“おもちゃ”出すから、楽しみにしててね?」
(強くなろう。守るために。俺は、もう……立ち止まらない)
その覚悟が新たなる力となる
----
謎の声「強くなることが未来の君を救う事になる今はただ強くなるんだ」
2話-終