↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
コードレガリア【Code: Regalia】力を持たない俺が、“心の剣”で世界を斬る  作者: お犬のリン様
一章-学園編-エリートクラス
PR
23/45

【第22コード】動き出す新世代

お気に入り、しおり、コメント

励みになるのでぜひ押してください!!

放課後の中庭。薄曇りの空の下、風が静かに枝葉を揺らす。


「やっぱりね。」


振り返ると、そこには藤宮るるがいた。制服のリボンを揺らしながら、いつもの調子で微笑んでいる。


「エリートクラスに来たんだって? ついに出世コース入り?」


「……そんなたいしたもんじゃないですって

先輩が言ってた-これまで道理じゃいられない-

ってこの事だったんですね」


燐は肩をすくめて返す。だが彼女の視線は、どこか見透かすようだった。


「紛いなりにも、あの久世悠斗や霧原影渡とやり合って。無名でいられるはずがないよ」


少しだけ声の調子が変わる。


「君の強さは、既に“コードを使いこなした者たち”に匹敵してる。もっと自覚していいと思う」


「……そうですね。でも、まだ勝ててない」


その言葉に、藤宮はふっと息を抜いてから言った。


「なら、もっと強くなればいい。君ならできるでしょ」


しばし沈黙。


燐「……まだ修行、つけてくれるんですね」


藤宮は微笑を浮かべたまま、肩をすくめて言う。


「君への依頼はまだ終わってないからね。今後もよろしく、だよ」


その言葉に、燐は静かに頷いた。


──カゲトとの戦いの後、久世悠斗は“白”だと分かった。

あの怪しい勢力とは繋がっていない。彼自身の意思で行動していた。


残るは、カゲト――そして、もう一人の“四天王”。


燐の戦いは、まだ始まったばかりだった。



やがて、彼女は真田について話題を変える。


「……それにしても、真田先生の授業、受けた?」


「うん。ちょっとだけ模擬戦を」


「なら、分かったでしょ。あの人、本気出すと本当にヤバいよ」


藤宮の声には、珍しく真剣さが滲んでいた。


「あの人、実戦経験が桁違い。コードクラスの実技指導役ってだけでなく、昔は“戦いの最先端で戦っていた”って噂もあるくらい」


「君が対峙した時より、もっと深い“底”がある。……私も、一度も勝てたことがない」


それだけ言うと、彼女は手を伸ばし、燐の胸元を軽く突く。


「そんな相手から学べるんだ。存分に吸収しなきゃ、損だよ?」


燐は小さく頷いた。そして、すぐに藤宮から提案が来る。


「ちょっと時間ある? 光纏装、もう少し洗練していこう」


「……ああ」


ふたりは中庭の奥――人気のない訓練スペースへと移動する。


◇ ◇ ◇


「じゃあ、まずは《叛逆・光纏装》の基本動作から」


藤宮がぬいぐるみ型のサンドバッグを投げる。


燐は集中し、右脚に光の粒子を集める。足元から粒子が舞い上がり、膝下を包み込むように光が螺旋を描いた。


「いい感じ。けど、粒子の滞留時間が短い。もう少し圧縮してみて」


藤宮のアドバイスを受け、燐は再度、脚に意識を集中させる。


(粒子の“密度”と“範囲”、それから……動きとの同期)


脳裏で構成を組み立てながら、何度も発動を試みる。足踏みの一瞬、地面が弾けるようにひび割れ、燐の身体が加速する。


「よし、そのステップ。今のならカゲトの足も止められたかもね」


「……本当に?」


「本当に。でも、持続がまだ短い。維持できれば、戦術の幅が一気に広がる」


藤宮は実に楽しげだ。まるで弟子を育てる師匠のように、細かくチェックしながら次々と課題を提示していく。


燐は汗をかきながらも、そのひとつひとつに応えていった。


数十分後。


「今日はこのくらいにしておこうか。あまり詰め込みすぎると、逆に鈍るから」


「……ああ、助かった」


呼吸を整えながら、燐は曇天の空を見上げる。


《叛逆・光纏装》はまだ完全な武器にはなっていない。けれど、自分の身体の一部として確かに馴染み始めている。


光が形になるたび、自分が少しずつ“変わって”いくのを感じる。


「……もっと強くなれる」


燐の独白に、藤宮はふっと笑った。


「なれるよ。君は、ちゃんと“望んで”るから」


その声は、どこか優しく、どこか鋭く。まるで、遠くを見据えているかのようだった。


──それから、1週間が経った。


この1週間、燐はひたすらに《叛逆・光纏装(こうてんそう)》の練習に没頭していた。

力を溜めて放つだけの戦い方では、もう通用しないと悟ったからだ。


粒子を纏わせる位置、タイミング、そして維持時間。

ほんの数秒でも制御を誤れば、反動で剣の出力が下がる。

だからこそ、緻密な操作が求められた。


ひとりで訓練場に立つ日々。

汗にまみれながら、何度も倒れ、立ち上がった。


──そして、今日。


いつものように教室へと向かう途中、燐の視界に見慣れた後ろ姿が映った。


「……真白」


白銀の髪が朝日に揺れる。

彼女がこちらに気づき、やわらかく微笑んだ。


「おはよう、燐くん。久しぶり」


「1週間ぶり、かな……ずっと神代先輩と?」


「うん。護衛と回復の連携、もっと精度を上げたいって。つきっきりで教えてくれたの」

「ちょっと怖かったけど、神代先輩本当にいい先輩だよ」


「そっか……俺も、ずっと一人で修行してた」


言葉を交わすたび、ふたりの空気が自然に溶け合っていく。

以前と変わらない、けれど少しだけ強くなった二人の距離感だった。


*


教室に入ると、すでに何人かのコードクラス生たちが集まっていた。

氷室紅は黙々と資料に目を通し、雷堂虎は窓辺でストレッチ。

土岐隼人は机に突っ伏して、気持ちよさそうに寝ている。


しばらくすると、スライド扉が開いた。


「よーし、全員いるなー……まあ、いなくても始めるけど」


眠そうな声とともに、真田が入ってきた。

足取りこそだらしないが、その視線は教室の全員を正確に捉えていた。


「今日は、前に言った“模擬演習”をやる。参加希望出したやつは、訓練所Σ(シグマ)に集合」


「自由参加だけど、ちゃんと見てるからな。評価にも関わるかもしれないぞー……とか言っとく」


教室に微妙な緊張が走る。


雷堂が立ち上がって腕をぐるぐる回す。


「やっとか、待ってたぜ。燃えてきた!」


一方、紅は静かに立ち上がりながら言った。


「環境と敵戦力、早めに開示されると助かるわ。無駄な力は使いたくない」


「んじゃ、そろそろ行くか。俺たちも」

燐が真白に声をかけると、彼女も小さく頷いた。


「うん、頑張ろう。燐くんと一緒のチームだといいな」


そんな会話を交わしながら、ふたりは訓練所へと足を進めていく。

そこで待っているのは、ただの演習ではない。

それぞれの力と信念がぶつかり合う、試練の舞台だった。


---


訓練所Σ──

そこは、まるで廃墟と化した都市の一角を切り取ったような場所だった。

崩れたビル、瓦礫の山、錆びついた鉄骨が無造作に転がる中で、かつての市街地の面影だけが残っている。


「ここがΣか……」燐はぽつりと呟いた。


真白が隣で小さく首をかしげる。「前に使ってた場所と違うの?」


「ああ。藤宮先輩と訓練してたのは、もっとシンプルな構造のαだった。ここは……かなり実戦向きだな」


その言葉に、真白の瞳がほんのり緊張に染まる。足元の瓦礫を見下ろしながら、彼女は小さく呼吸を整えた。


その時、周囲の空気がピリッと張りつめる。真田が姿を現したのだ。


「全員、揃ってるな」

眠たげな目元と裏腹に、その声には張りがあった。


「じゃ、チーム分け発表すっかね。順番に言うから、聞き逃すなよ」


順々に名前が読み上げられていく中、燐は自然と身を正す。そして──


「チームE:氷室 紅、雷堂 虎、土岐 隼人」

「チームF:結城 燐、天音 真白……そして、柏木 大牙」


「えっ……」燐と真白は同時に声を漏らした。


声の方へ視線を移すと、ゆっくりと歩いてくる大柄な影がひとつ。

包帯は取れ、かつての威圧感を取り戻した男がそこにいた。


「よう、驚いたか?」


柏木はニヤリと口角を上げ、真白に視線を向ける。「あの時は……ありがとな。おかげで、こうしてまた立てた」


「よかった……本当によかった……」

真白の頬がほころび、涙をこらえるように目を細めた。


「この借りは、今日の戦いで返す」

柏木は拳を強く握りしめた。「デビュー戦だろ? 俺が勝利に導いてやるよ、相棒たち」


訓練所Σにいた生徒たちがざわめき始める。


「えっ、燐って……あのカゲトと戦ったっていう?」

「真白って子戦えるの? それに柏木……復帰したのかよ」

「でも相手、Eチームだぞ……上位組だって言われてるあの3人が、揃って出てくるとか……!」


好奇と期待、緊張と不安が入り混じったざわめきが、波のように広がっていく。


そこへ、チームEの三人が歩み寄ってくる。

氷室は無表情のまま一瞥をくれた。「データは一通り見た。結城燐、天音真白……そして、柏木大牙。興味深い組み合わせだ」


雷堂が鼻で笑う。「話題の“元・無名”と、美しきヒロインに、怪我明けの筋肉ゴリラか。いいねぇ、ちょうど潰しがいあるじゃん?」


「まぁまぁ」土岐はマイペースな調子で手を振る。「こっちはこれまでの授業で結構連携練ってきたし、悪いけど手加減はできないからね~」


「手加減はいらねぇよ」柏木が前に出た。「全力で来い。潰すのは、そっちだからな」


火花が散るような空気に包まれながらも、燐は静かに、ふたりに言葉を投げかけた。


「絶対に、勝とう」


「うん」

「おう!」


三人の視線が交わり、同時に拳を重ねた。

戦いは、始まろうとしていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。