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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

変な黒猫 <住生誘導>

作者: 雨音 瑠花

 高校にいつも通りに登校する。何気なく、下を向いてとぼとぼと、硬い道を歩いていく。

 顔を上げても、いつもと変わらない風景が広がっていて、右を見ても、左を見ても、それは変わらなかった。何処を見ても面白くない。

 川の横を通り、交差点を過ぎる。

 道路にはいろんな色の車が、急ぐように次々に私を追い抜いていく。

 腕時計を見ると、すでに7時45分を回っていた。まだ高校まで30分は掛かる。走れば朝会までに間に合うけど、走る気分でもないし、走れる程の気力もない。

 やっと二つ目の交差点が見えてきた。残念ながら、信号は赤く光っていて足止めを食らうことになった。横断歩道の前には数人の大人や子供が立っている。


 横断歩道の前まで来て、信号が変わるのを待つ。


 実際には短いのだろうが、信号の変わる時間が長く感じる。だんだんと腹が立ってくる。車は一台も通っていないのに、どうしてこんなところで足止めを食らわなければならないのか。

 すると、一匹の黒猫が横断歩道の真ん中までトコトコと歩いて、その場で停止する。

 黒猫がこちらを振り返り、目が合う。不思議なほどに追いかけたくなった。

 黄色く光る瞳に入る、一本の細長い黒い瞳孔、私はその瞳に、一瞬で魅了されてしまった。

 車は来ていない、今なら大丈夫だと。

 黒猫が横断歩道の中央から向こう側の歩道まで走っていく。

 私は走り出してしまった。


 ――――待って…


「危ないッ!」

「――――ッ?!」

 一人の男性に服を引っ張られ、後ろへと戻される。体勢が崩れてしまい、しりもちをつく。目を閉じた瞬間、


 ―――――バンッ!―――


 前方から大きな音が鳴り響いた。

 目を開くと、目の前には血だまりが広がっていた。大きなトラックと、私と同い年くらいの男の子が血だらけになって横たわっていた。轢過事故(れきかじこ)だ。

 周囲は悲鳴や、電話する声が混じり合って何を言っているのか分からない。耳鳴りがする。今の自分は事故現場にいるのだという恐怖と、もしあのまま飛び出していたらという未来を想像してしまい、恐怖のどん底に突き落とされていた。

 死体の奥にはあの黒猫がポツンと座り込んでいた。目を細めて、こちらをじっと見つめる。すると、黒猫は不敵な笑みをうかべた。目は赤く染まり、やがて、黒い霧となって消えてなくなった。

 あの黒猫は何だったのか、死神なんじゃないのか? バカみたいだ。

 この赤に染まった光景と、あの黒猫は、生涯一度も忘れることのないトラウマとして、私の頭に焼き付いた。

妖怪の仕業のように書いてみました。「あまり…」という方がいるかもしれませんが、楽しんで頂けたらと思います。

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― 新着の感想 ―
あの黒猫はいったいなんだったのか……もし、男性が止めていなかったら……日常のすぐそばにある死の恐怖を思い起こさせる良い作品ですね。
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