初恋トレッドミル(本論) プロローグ ねじ曲がった覚悟
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──お前はただあの家を破滅させる毒であればいい。
身内から浴びせられたそんな言葉が、いまだに人生を縛ってやまない。
──お前は毒だ。葛和を破滅させる、埋伏の毒なのだ。
だから待つ。その時を待つ。
この偽証と罪咎にまみれた身を現さねばならない、裏切りの時を。
──お前だけは裏切るまい。
幾度目かもわからない問いかけに、ただうなずきを返す。
うなずいて、自分の意思など関係ないのだと否応なく痛感する。
できることなど何もない。ただこれから自分が裏切らねばならない信頼に、胸の奥がじくりと疼いた。
──余計なことなど考える必要はない。
常に一つのことだけ考えていればいい。必要なのは信頼を得ること。その時が来るまでは、引き絞った弓のように。
どれだけ愛しい人でも、騙し通さなくては。
なぜなら自分はただ一人、葛和を壊す共犯者なのだから。
──それでこそ、私のいとし子。
母親のこの言葉に耐えられなくなったのは、いつのことだったろう。
嘘でも昔は嬉しかった。けれどこの頃はもう重石でしかない。
自覚がある。本当に欲しいのはもっと別の、手を伸ばしても届かない尊いあの人のことで。
けど嘘つきの自分にはきっと、あの人に愛される価値はない。なのに希望を手放せないのは、向けられる笑みに溺れてしまっているからだ。
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