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クズ男は誰の初恋でもない。はずだった  作者: まじりモコ
十一周目 踏み出すクズと足踏みしたままの彼
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【幕間】26冊等分のアシスタント


 蕗谷ふきのやつぼみの骨折は全快している。

 が、治癒が医者の診断よりも早すぎた。もう治っていると主張しても「んな馬鹿な」と言われ、周囲は莟を怪我人のように扱うのだ。


 骨折していた話が広まっていたせいもあるが、理由は別にもある。

 十瑪岐との喧嘩で全身に擦り傷、打撲、切り傷などを作ってしまったせいだった。おかげで絆創膏と包帯が増えたため、見た目の痛々しさはむしろ増加したと言っていい。


 同日に十瑪岐がさらにボロボロの状態で登校してきたので、二人の間に何かあったことはバレバレだ。……なのだが、二人の雰囲気は険悪どころかなぜか前より良好になっているので、口を挟める者はない。


 生徒会からのフォローも入って喧嘩で停学といった事態こそ避けられた。とはいえ学園から部活への復帰の許可は未だ下りていない。


 こうして持て余すこととなった放課後を、莟は入学前なら思いもしなかったあることに捧ぐこととなる。



       ◇   ◆   ◇



 鳴乍は移動教室でよく莟とすれ違う。目が合うと会釈してくる莟をいつも微笑ましく見ていた鳴乍だったが、ここ数日は別のことに目を奪われていた。


 その日、莟は教科書と共に別の書籍を持っていた。


『初心者から始めるクリスタの基本』


 そういえば文化部棟に出入りする彼女を見た気がするな、と思う程度だった。



 その数日後。

 莟が持っていた本は、


『パースの基礎を完全攻略! 【背景入門】』


 おぉ、役割が進化してるなと思った。

 莟の表情が少し陰って見えるが、気のせいだろうか。



 さらにその数日後。


『写真とイラストで完全攻略 男同士の絡み【裸体編】』


「莟ちゃんどこへ連れて行かれようとしているの!?」


「はうっ!?」


 思わず腕を掴んで引き留める。莟は油を差していないロボットみたいな仕草で、背を丸めたまま鳴乍を視認した。


「あ、鳴乍先輩。お疲れ様です」


「目が死んでない? 大丈夫? 艶消しスプレーもかくやのマットさなのだけれど」


「大丈夫です。体力は有り余っててハチャメチャに元気。ただ……ひたすら刻み海苔のりを貼り付ける作業が脳みそにダメージを」


「の、のり?」


「隠しすぎるとせっかく書き込んだのにって怒られますし、でもギリギリまで隠さないと発禁喰らうし。書き込み具合によると言われてもそんなの作者によるじゃないですか。一コマずつバランスを考えるのが時間食ってもう頭痛くて。締め切り迫ってきたら、白抜き処理を薦めようと思うんですが、あの熱量だと反対されるだろうから今から説得内容を考えないと……」


「????」


 何の話をしているか理解できなかったが、莟の目がどんどん濁っていくのが怖い鳴乍であった。




 ちなみに数日後、莟に遭遇した十瑪岐は彼女の様子を怯えた表情でこう語ったという。


「オレに会うなり薄暗い目で下半身を見つめてきて、『この角度なら……細い海苔二枚でいける。あ、コマからはみ出すからカットしないと……容赦してたら終わらない……』って指をチョキチョキ動かし始めて。なんか瞳がこっちを見てんのにオレじゃないナニカ(・・・)を見てるような虚ろさでよお。完全にメンタル死んでるときの顔で文化部棟に向かってったんだ。訊いても何やってんのか教えてくれねえし、何が莟をあそこまでやつれさせたのか、想像もできねえよ…………」



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