まつり
僕が住んでるのは山の奥の寂れた村です。
過疎化の進んだ村。
人がドンドン出ていく村。
最早限界集落と言っても仕方ない場所です。
何しろ段々畑しかない。
何も無い村。
病院やスーパーは片道ニ時間の麓の町まで行かなければ無い。
レンタルDVD店も無い。
当然映画館もない。
何の娯楽もない村。
とはいえだ一つだけ娯楽が有る。
夏越しまつりだ。
お盆に有る夏越しまつりだ。
この時だけだ。
このときだけ村は人で溢れ返る。
過疎化してるとは信じられ無いぐらいに。
村から出て行った人間がこの時だけは帰ってくるからだ。
馬に乗せられて。
太鼓を叩き。
音楽を流す。
それに合わせて村の皆で踊る。
とはいえこんな辺鄙な田舎に来る屋台はない。
だからだ。
この夏越しまつりの時は各家庭の料理が持ち込まれ皆に振る舞われる。
最後には牛に乗って元住人が帰って夏越しまつりは終わりだ。
それは何年も。
何十年も繰り返されていた。
そう何年も。
何十年も。
僕を除く最後の住人が村を出た。
これで村に残ったのは僕一人だ。
だが寂しくない。
夏越しまつりの時期には皆帰って来るから。
三十年後。
名も知れぬ限界集落の最後の住人が静かに息を引き取った。
その死体は三年後この村に迷い込んだ登山者が発見するまでそのままにされていた。
倒壊した家の痕跡から長期間他の住人は居なかったと推論された。
よって事件性は無いとの警察の発表である。
リハビリです