出縄早紀の入浴 その2
ユウキのカラダのアザや傷を見て出縄早紀の顔から笑顔が消えた。顔は青ざめている。
「出縄さん?」
出縄早紀からの返事が返ってこない。
よほどショックだったのだろうか。
「おねーちゃん大丈夫?早紀おねーちゃん、ぼくは大丈夫だよ。怖がらせてごめん」
ユウキは出縄早紀のからだを揺すり彼女は、我にかえった。
「ユウキくんごめんね。私も大丈夫だよ。根坂間さん、ユウキ君の事任せてくれて大丈夫ですよ。私はユウキくんの味方だよ!」
よかった。思っていたよりいい人間みたいだ。
弱い者を立場を利用して傷つけるという行為に対する嫌悪感は自分と同じくらい持っているのかもしれない。
これに関して言えば彼女とは少しは仲良くできそうだ。
「私いま仕事とかお休みしているので、ほぼ一日家にいるんです。だからユウキ君の事毎日でもいいですよ。私も一人だと寂しいからユウキくんがいると楽しくなるかなぁって思うんですよね」
「本当ですか?助かります。僕もあまり遅くならない様にしますからお願いします」
ほっとした。ユウキの面倒を見てくれる人間が見つかって……じゃない。出縄早紀の様子が通常の明るい表情に戻った事に安心している。彼女の事を心配したのか?柄にもない。まぁ、そんな事はどうでもいい。
「私この後スポーツジム行ってシャワーしてくるつもりだったから、よかったらユウキ君も一緒にどうかな?」
「出縄さん、ありがとうございます。ぜひご一緒させて下さい」
昨夜は銭湯に行けなかったからちょうど良いお誘いだ。個室シャワーならユウキの体のアザを他の人間に見られる事もない。
「あのぉ、根坂間さんは誘っていませんよぉ。でもどうしても一緒に行きたいって言うならついてきてもいいですよぉ。そう、どうしてもって言うなら。あっ、私と一緒にシャワーしたいとかはダメですからねぇ。まだお付き合いとかしてないのにお互いに裸を見せ合うなんて無理ですよぉ」
同じネタをぶっ込んできた。さっきスルーした事を根に持ってるなこいつ。しかも喋り方がムカつく。
「そ、そうですよね。変な事考えてすみません。早紀さんみたいな美人さんに誘われたと思って勘違いしてしまい舞い上がってしまいました。ごめんなさい」
全力の演技で感情を込めてやった。
伊達に人を欺く仕事をしていない。本気を出せばこれくらいの事は造作もなくできるのだ。
「根坂間さん……ひどい棒読みです。きっと人とか騙せない人なんですね。努力だけはみとめますよ。ご褒美に私とユウキキ君についてくる事を許しましょう」
「あ、ありがとうございます……」