市場調査
もうすぐ時計の針は夕方六時に到達しようとしている。
仕事を終えたOLやサラリーマンで街中が賑わってきた。
自分もその日本を支えるサラリーマンの一員なのだが、まだ帰宅が許されていない。
それよりもカラダへのダメージの蓄積がそろそろ飽和状態になる。いや、もうとっくに限界を突破しているかもしれない。
カラダが重い。気持ちが悪くて吐き気がする。少し前から頭痛もする。
もう朝からケーキの類いを二十個近く胃に入れている。
もうすぐ致死量に達すると予想されるのに誰も止めてくれない。
隣に並んで歩くパートナーはまだ余力があるみたいだ。この小さなカラダのどこにそんな容量があるのだろうか。自分と同じくらいの量を食べているはずなのだが。
「ユウキ……あと何軒残ってる?……」
「まだ半分も終わってないよ」
「……今日はもう引き上げようか。ほら、うちの隣のお姉さんとゴハンの約束してあるし」
「いいよ。じゃあここのモンブランおみやげに買っていこうよ。きっと喜ぶと思うよ」
「わかったよ。じゃあユウキの分も買っていこうな」
「やったあーありがとう薬師お兄ちゃん!」
こうやってケーキで目を輝かせてる姿をみるとやっぱり小学生だ。
とりあえずは事務所に連絡して直帰しよう。
まわりはいつの間にか満席で混雑していた。
ユウキを見るとケーキのテイクアウトをオーダーしていた。
大人とも礼儀正しく会話できている。しっかりしすぎている小学生だ。
それはそうとユウキのこの先の事も考えないといけない。捜索願が出ている可能性も高い。今回の様な件で自分で出来ることなんてほとんどない。最終的には国の機関に頼るしかない。それが現実だ。
時計を見るともう十九時になっていた。
まずい、お隣さんが餓死してしまう。急いで帰るとしよう。
ココロもカラダも重いが仕方ない。
リアルに重い腰あげ自宅を目指す事にした。