避難
「それで?薬師くんはこれからどうするの?その襲ってきた人間が誰なのかってわからないんでしょ」
運転席の水道真琴が現在の問題点を口した。
「それはホテルに着いたら彼女に聴こうと。とりあえずは二人を安全なところで休ませないと」
首を傾け後部座席の出縄早紀とユウキの様子を伺う。二人とも目は覚めているが疲労でじっと動かない。ユウキは怯えた様子で出縄早紀にしがみついていた。
「でも真琴さん。よく十数分でホテルの部屋とってウチまで来れましたね。僕だと二十分ちょっとかかりますよ」
「知ってるでしょ。結構有能なのよ私。ちなみに道路交通法に違反する様な事はしてないわよ」
彼女にとっては造作もない事なんだろうか。表情も変えずサラッと言い放たれた。
「それはそうと……」
まずい。ハイスペックなモンスター『水道真琴』を召喚した代償がくる。
「よくも純粋な乙女の気持ちを利用してくれたわよね。やっと薬師くんから誘ってくれたと思って、とっておきの部屋予約しちゃったじゃない。それなりの埋め合わせはしてもらうわよ」
「そんな利用だなんて。その言い方じゃ僕が真琴さんを騙そうとした……」
そこまで言いかけ口を止めた。
水道真琴の表情がどんどん険しくなっているのが確認できたからだ。彼女には嘘がつけない事を忘れていた。
先程より運転が荒くなっているのは気のせいではなさそうだ。
ガクン
急停車で車体が前後に大きく揺れた。
「着いたわよ。薬師くん」
ちょっとだけドスのきいた水道真琴の声に外の景色を見るとホテルのエントランス前に到着していた。
ここって有名なお値段がお高い一流ホテルじゃないのか。
「薬師くん……さぁ、先にお部屋に行って。フロントで私の名前言えば案内してくれるわ……あなたのために最上階のスイートをとってあるの。素敵なお部屋よ。大切な人と一緒に過ごそうって見つけておいたお部屋なの。ほんとうは二人でお泊まりするつもりだったのだけれど邪魔な女と……」
「ありがとうございます。真琴さんしか信頼できる人がいなかったので。真琴さんだけです。こんな事お願いできる人は。僕にとって特別な人なんでしょうね真琴さんは」
嘘は言っていない。
これが彼女の嘘を見抜くスキルの弱点だ。こんないかにもな台詞でも嘘はついていないから彼女は信じるのだ。ここに『好き』や『愛している』というワードを入れると嘘と識別され彼女は暴走モードに入ってしまう。
「薬師くも私にとって特別よ。あなたからそういう言葉がきけるなんて嬉しいわ。それに薬師くんと再びこのお部屋に来れるなんて」
よかった。機嫌が良くなった。
あれ。今気になるワードが出てきた様な。自分、このホテルに来るのは初めてのはずなのだが。
「ありがとうございます。じゃあ先に行ってますね」




