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ぼっちポチ  作者: 四宮楓
18/25

第18話 ポチ、ひとり泣きする

陽葵からのLI●Eも電話も、素っ気無い塩対応に徹した。


私の事を…早く諦めて欲しかった。

愛想をつかして欲しかった。

子供らしく同世代の子達との日々を充実させて欲しかった。

散々カノジョをかき乱した私の身勝手な願いだけど

私にはこうするしかなかった。


そして今も

紺野さんから渡された陽葵からの手紙を…


本当は胸に抱いて持って帰りたかったけれど…


スーパーの休憩室のゴミ箱の上でビリビリと破いた。


「ちょっと!! いいの?」

紺野さんが心配そうに覗き込んでくれる。


「いいの もう」


「手紙には何て?」


「『母の日にお仏壇に飾るお花を一緒に選んで欲しい』って…」


「そんな! … 可哀想に…」


「私がお母様に捧げるお花を選ぶなんて! できるわけがない」


「そうかな…そんなことないと、思うけどなあ。だってそれができるための“恋人繋がり”でしょ?」

こう言って親身になってくれる紺野さんにも本当に申し訳ない…


「心配をお掛けして、本当に申し訳ございません」


こう返すと、紺野さんはとても悲しそうな顔をした。

「そんな水臭いこと言わないでよ… 確かに私は“外野”だけど… あなた達が…こんな風に離れていくのが やっぱり残念なの きっと…大変な事情があるんだろうけど…あなたの様子を見ても…陽葵ちゃんの様子を見ても 悲しいのよ うん、すっごく 悲しいのよ」


『他人の不幸は蜜の味』

私なぞはこの言葉通りの人間。

自分が不幸だったから、

たまに他人の不幸にブチ当たると

口では同情しながらも心は癒されていた。


でも紺野さんは違っていた。

見ていて分かった。


こんな同僚に巡り合えただけでも

今の私は幸せだ。



--------------------------------------------------------------------


母の日の日曜日。


私は開店から夕方5時までシフトを入れておいた。


業務が終わり、レジの過不足と金券の過不足をチェックしていると、次に入ってくれる紺野さんが肘で脇腹をつついた。 

カノジョの視線の先を辿ると…

陽葵が俯き佇んでいた。


「これはもう、行ってあげなきゃね」


紺野さんは私の肩を掴んで、陽葵に向かって送り出した。




--------------------------------------------------------------------


陽葵とスーパーの駐車場で待ち合わせして

連れだって“グラモ”側へ出て来た。


コンコースの時計がまもなく6時を指そうとしているのに、外はまだまだ明るい。


“グラモ”へ向かうアーケードの一角が“母の日”の為の花屋の特設店になっていた。


私達は、そこで花を選ぶことにした。


並べられた花たち

花束、アレンジメント、鉢植え、ミニポット

やはりカーネーションがメインだが、もう時期なのか、晴れた日にも映える鮮やかな赤の紫陽花が目を惹いた。他にもガーベラ、胡蝶蘭などずいぶんと賑やかだ。


「やはり花束かしらね」

私はいつの間にか腕に縋っている陽葵に尋ねる。

「お母様…お好きな花はあったのかな?」


陽葵は私の腕を離れて、ずらりと並んだ花束たちに歩み寄った。


「それはカサブランカね 花言葉は確か…「純粋」とか「高貴」だったかな ただ花粉は結構落ちるから、先に摘んだほうがいいかも。花粉がくっつくとなかなか大変なの」



花束を抱えて店から離れようとした時、陽葵はふと立ち止まって足元を見た。

そこには丁度、マーガレットの鉢植えが並べてあって…

陽葵はしゃがみこんで、それらを眺め出した。


「可愛いわね…」


そんな様子に私はふと思い立って声を掛けた。


「気に入ったのを一つ選びなさい」


「えっ?」


「私からのプレゼント」



--------------------------------------------------------------------


陽葵は花束を抱え私は鉢植えを提げてプラムガーデンの家まで来た。


私は既に鍵を返しているので

ドアを開ける事はできない。


陽葵はドアを開けて

私を見る。


しかし私は頭を振る(かぶりをふる)

「まず花束を置いてらっしゃい。それまでここに居るから」



何を

どう考えていたのか

陽葵はしばらく戻って来なかった。


私はまた、鼻の奥に涙の匂いを感じながら、マーガレットを愛でる。

「どうか陽葵と仲良くね」と語り掛けながら



やがて、しずしずと戻って来た陽葵の手にマーガレットをゆだねる。

「可愛がってあげてね」と


「あの、また…」


言い掛けた陽葵に私は再び頭を振る。


「では、さようなら」


私は開け離れていたドアをパタリと閉め、背を向けると駅の反対側を目指しずんずん歩いて行った。


ポロポロと涙を落としながら。






。。。。。。。。。。



イラストです。



ラフ画を彩色しました。




陽葵ちゃん



挿絵(By みてみん)





伊麻利さん



挿絵(By みてみん)





書いていて、けっこう辛い。


ウケない内容だし…


でも、やっぱり書きます。


感想、レビュー、ブクマ、評価、いいね 切にお待ちしています!!

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