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ぼっちポチ  作者: 四宮楓
15/25

第15話 ポチ、睦み合う

シャワーで濡れ鼠になっているカレ


いつもは白髪を活かしたセットをしている頭も今は地肌が透けていたりして、カレの…寄る年波に抗う痛みを感じてしまい、思わず腕に力が入る。


なんだろう…

『人とは悲しいものだ』

こんな言葉が胸の中を去来して…

そう、私の表層は、今、()()()()()()を感じ取っているから

言葉が胸の中に流れ滲みるというメンタルなものをフィジカルとして感じている。


こんな優しさを

お互いに持つことができたら


共寝はとても幸せなものなのだろう


シャワーのはねかえりが…

涙を隠してくれる。


私は

価値のない

継ぎ接ぎだらけのボロ雑巾だから


カレの耳元に


囁く


「私を抱くのでしたら…この…カラダのあちこちにある傷に 慣れてください。そしてこれ以上 傷を増やさないでください。それをしていただけるのなら…

 今、私が使わせていただいている客間は… なるだけ音や振動が洩れないようにしてあります。

ベッドサイドには


()が潤滑に進めるように

用意もしてあります


先に行って


待っています」


腕を緩めて

バスルームの床にペタンと座って

這うように

すり抜けようとしたら


起き上がった“カレの”が目に入った。


でも裏腹の言葉が

私の頭の上に降りかかる。


「そのままシャワーを浴びてろ!今、バスタブにお湯を張ってやるから」


どういう意味だろう…

ああ、わかった


()()はすぐ落としたいんだ。


なら

意向に沿った

用意をしよう


「ここでするのでしたら… あなたが膝を痛めないように タオル、持ってきますね」


「そうじゃない!」

少しきつめに言葉をぶつけられた。


「風邪をひかれたら困るからだ。 その気は失せた」


私は…


私にはプライドは無い


それに…


シたいわけでもない

…たぶん


なのに

なぜ?


こんなに悲しい?


そう、

それはまるで…


『お腹は空いてるけど、腐ったものは食べられない』

と言われている様だから…


私って、

そこまで醜い継ぎ接ぎだらけのボロ雑巾??


カレの言葉に…

オジギソウのように萎れて、底なし沼に溺れゆく私


心のうちの…

意地だか何だか分からない感情に突き動かされて


藁に縋る代わりに


“カレの”に手を触れた。


途端にそれは

ネコの耳のようにピンッ!と跳ねて

私の指を弾いた。

()()()の反応とは逆に

拒否られている!!

その思いが

私の涙を押し上げる。


「ウグッ!」

嗚咽まで漏らしてしまった。


これが、一瞬固まっていた康雄さんを慌てさせた。

「オイ!どうした?!」

康雄さんは“前”に邪魔されながらオロオロと手を伸ばす。


私の方は情けなくって嗚咽が止まらなくて、とうとうバスルームの床に泣き伏してしまった。


傍から見ると随分滑稽な有り様だったのだろう。

オイオイ泣くオンナの体に、()を突っ張らかせたオトコがシャワーを当ててやってる絵柄なんて…


ひょっとしたら陽葵を起こしてしまったのかもしれないし…


『浴槽にお湯が張られました』

機械の音声が能天気にバスルームに響く頃


康雄さんの“前”も、私の嗚咽も

ようやく落ち着いた。


「ほら! 立てるか? とにかく風呂入れ」


差し出された康雄さんの腕には鳥肌が立っている。


「ひっく! ダメです。康雄さんが先に…」


「ああ!! もう!!」

康雄さんは私を引っ張り込んで

二人してザブン!とバスタブのお湯を大量に追い出した。

「ったく! またヤセ我慢だよ」


結果的にカレの腕の中に居る私は…ぎこちなくそっぽを向いたカレの顔を見上げる。

「ヤセ我慢…するんですか?」


「する! 絶対する! 君とはキチンと向き合いたいから 今は絶対ヤんねえ!」


こう言われなければ私は…今までの習い性で…バスタブの中の“カレの”を両手で包み込んでしまっていただろう。


言葉はただの言葉。チャラいだけのもの…そうかもしれない。

こんなにも簡単に、それに躓くイタイ女…それが私

でも、それでも

今は二人とも

寂しいオトナなのは間違いないから

優しくしたりされたりしても

いいよね。


いつの間にか彼を見る目がうるうるしてる。


なんとなく、カレ 触ってるし…


「のぼせた?」


「ん、ふー…ちょっとだけ…」


「上がるか?」


「うん… でもその前に…」


「その前に??」


「キチンと向き合っていただけるという約束…」


「うん」


「その証を下さい」


「えっ?! う~ん…」


私は…さっき()()()()()()代わりに

カレの指を両手でふんわり包んで

私のくちびるに置いた。


「ここに…」


カレは吹き出して、私のおでこに自分のおでこをコツン!とぶつけて

キスをくれた。


その直後なのに

照れ隠しか…

カレはこんな事を言う

「あ、カレー食べたい」


「いいんですか? 汗かきますよ」


「またシャワー浴びるよ」


「私付きで?」

思わず口走って慌てて口を押えたけど…

カレ、今度は耳の辺りにキスをくれて


私はカレの胸で

入浴剤の香りを甘く嗅いだ。






。。。。。。。



イラストです。



ラフ画を彩色しました。





“ユーズドセレクトショップ”モードの伊麻利さん



挿絵(By みてみん)




康雄さんは悪びれていたのです。

でもキチンと向き合うという事は

伊麻利さんに

亡くなった奥さんの病気について伝えなければいけない…


三人の今後はどうなるのか…


悩んでます(^^;)




感想、レビュー、ブクマ、評価、いいね 切にお待ちしています!!(^^;)







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