散歩
少年は夢を見た。
鮮明に覚えている。
「カツカツ」「かっぽかっぽ」「ザッザッ」
くつだけが闊歩する音が地面を伝って響く。
それも大小さまざまな音が。
町の皆はこの光景に慣れた様子で何事もなかったかのように、くつ達の横を歩いている。
少年は「なんでくつが歩いているのだろう」と、好奇心が抑えきれずにくつ達の後について行った。
「ズリズリ」「テクテク」「サッサ」
まるで音楽を奏でているような陽気な足音が響いていた。
次の町まで着くと、くつ達はくつ屋さんからピカピカに手入れされていた。
少年のくつはボロボロだったので、くつ達と新しい街を出る時に目を付けたくつに足を入れた。
「サクサク」「テトテト」「スタスタ」
色々な街に歩いている途中、少年のくつに穴が開いた。
履いていたくつはいつの間にか底がすり減ってくたびれていた。
そのくつを脱いで新しいくつに足を入れようとすると、くつ達は勢いよくどこかに去っていった。
苛立った少年はところかまわず歩き回った。
「ドスドス」「ザクザク」「ペタペタ」
少年は歩き疲れて脇道の木陰に腰を下ろしたとき、めまいが襲った
少年は夢だと気づき、布団から身体を起こした。
玄関に置いていたくつは何も変わっていなかった。
しかし、少年のくつ下には小さな小さな穴が開いていた。
少年は少しうれしくなり、自分のくつを履いて散歩に出かけた。