君に好きと言うまで、あと0秒
__ねぇ、好きな人だぁれ?
そんな君の問いかけに、俺はいつも正直に応えられない。
「君だよ。」
って素直に伝えたら、君はどうする?
「嬉しい」と喜んでくれるのだろうか、それとも「ごめんなさい」と断るのだろうか。
俺はいつも後者が怖くて、気持ちを伝えられずにいた。
今の関係が壊れてしまうのならば、無理に告白する必要はないと思ったから。
「秘密」と言った僕に君は
「え〜、教えてくれないの?じゃあさ…」
__好きな人、当てあいっこしよ!
と笑顔で提案してきた。
そんな満面の笑みで言われたら断れる訳もなく、反射的に「いいよ」と頷いてしまった。
今になって考えてみると、バカだなって思う、俺ってこんなに単純なんだな。
どうやら、君の笑顔に俺は弱いらしい。
「〇〇ちゃん!」
「違いますよ」
……これで何度目だろうか。
一向に当たる気がしなかった。まぁ、最初から当てられると思っていなかったけどね。
でも、もし「私?」って言われたら俺は何て応えようか。
素直に自分の気持ちを伝えられるのだろうか?
……ほんと、かっこ悪いな俺。
「じゃー、〇〇ちゃん!……ってねぇ、聞いてるの?」
「あ、ごめん、考え事してた」
「も〜」と頬を膨らませながら怒る君、うん可愛い。
「ねぇ、ヒントちょうだい」
「元同じクラスだよ」
「今も同じクラス?」
「うん」と頷いたがすぐに後悔した、これはもうバレてしまうかもしれない。
「あ、〇〇ちゃんだ!」
……どうやら杞憂だったようだ。鈍すぎる!
そんな当てあいっこの日々を続けていたら、あっという間にテスト週間に突入してしまった。
テスト週間の放課後は、君と勉強するのが日課だった。
今日も数学の問題を一緒に解いている。別に約束していたわけじゃない、一緒に勉強するのは俺たちの暗黙の了解のようなものだった。
この時間が俺にとっては心地良い。君もそう思ってたらいいのに…なんてね。
ただ、今日はいつもとは違う。
俺の隣にもう一人……立花がいた。
二人は俺の隣で楽しそうに数学を教え合っている。
……あーあ、つまらない。
いつも楽しい放課後が今日は憂鬱に感じた。理由は明確だった。
これがいわゆるヤキモチってやつなのかなぁ。
次の日も、また立花がいた。
隣から、二人の笑い声が聞こえる。
耳を塞ぎたい衝動に駆られたが、なんとか我慢する。
君が他の男に笑いかける声を聞きたくない。
結局、俺は二人の輪に入れず一人で勉強していた。
「ねーね、帰ろ!」
君の呼ぶ声で、数学の世界から連れ戻される。気づけば、時刻は6時を回っていた。
君の隣からひょこっと顔を出す立花。
やけに親しそうだ。
そんな様子を見てイラついた俺は「先に帰っていいよ」とやけくそになって言ってしまった。
そんな僕に君は__傷ついた顔を向けたんだ。
「……っ」
君を傷つけたかったわけじゃない、むしろその逆。
俺は君に笑顔でいてほしい、そんな顔をさせたかったわけじゃない。
そして、笑っている君の隣にいるのは立花や他の男じゃなくて、俺であってほしい。
「じゃあ、先帰るね。またね」
「あ……」
このまま、帰しちゃっていいのだろうか。君を傷つけたままでいいのだろうか。
言葉が出ない俺に腹が立つ。
__勇気だせよ、俺。
俺は教科書を鞄に無造作に突っ込んで、教室を飛び出した。
このままじゃ一生後悔する、そう思ったんだ。
なんで立花に嫉妬した?
そんなの簡単だ、君のことが好きだから、大好きだから、誰にも取られたくないから。
ならもう、やるべきことはただ一つ。
階段を全速力で駆け下りる、息が上がって苦しいけど、そんなことどうでもいい。
早く君に会いたい。
駐輪場に、君の姿を見つける。
さぁ、頑張れ
ぃっと大丈夫、言わない後悔よりも言う後悔。
結果が良くても悪くてもどうでもいいほどに君が好きなんだ、今すぐ伝えたいんだ。
「古田さん!!」
………君に好きと言うまで、あと0秒。
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おめでとう、末永くお幸せに!