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異世界転生100~私の領地は100人来ても大丈夫?~ 野生の転生者が100人もやってきた!?  作者: にわとりぶらま


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第76話 セクレタさんの報復

「おはようございます。セクレタさん」


執務室にやって来たセクレタさんに、私は平静を保ちながら挨拶する。


「おはよう、マールちゃん」


 セクレタさんもいつも通りの挨拶を返してくれる。そう、挨拶はいつも通りである。ただ、姿だけはいつも通りではない。


 あの日…セクレタさんに養鶏事業に協力してもらった日から二日程経つが、あの時の衣装を着たままでいてくれている。ありがたい事である。だから、協力してくれているセクレタさんの姿勢に感謝の気持ちを込めて、衣装については触れないように平静を保って接している。決して、クチバシでコツかれたのが非常に痛かったのが理由ではないです。多分…


「おっおはよう…」


 トーカも執務室にやってきて、挨拶をするが、トーカはセクレタさんの姿を見ると、ぐっと何かを噛み殺した顔をする。トーカは私より上級貴族で、都会の帝都の生まれであるが、貴族に必須のポーカーフェイスと言うものが苦手である。というか、感情がすぐに顔に出る。まぁ、貴族としては欠点ではあるが、腹芸の出来ない彼女にはなんだか好感が持てる。


「おはようございます。トーカさん」


私はトーカに挨拶を返す。


「おはよう、トーカ」


セクレタさんもトーカの前に進み出て挨拶を返す。そして、トーカの前で窓の外を見る。


「今日もいい天気ね…トーカ」


「そっそうですね…」


トーカは目を泳がせながら、セクレタさんに答える。


「段々、暖かいというか暑くなってきたわね」


「そうですね…」


トーカは頬の辺りをプルプルと震わせる。


「この辺りの暑さはカラッとしているけど、帝都の方はどうなのかしら?」


セクレタさんはトーカの目の前を動き回りながら、そう尋ねる。


 セクレタさんのこれらの行動は、セクレタさんがこの姿になった時からずっと続いている。こんな姿にされたセクレタさんなりの報復というか八つ当たりなのであろう。わざと人前をチラチラと動き回り、笑わせようとする。しかし、そこには大きな罠がある。


 初日にぷっと吹き出してしまったトーカは『何が可笑しいのかしら?どうして可笑しいのかしら?この私に分かる様に事細かく説明してもらえるかしら?』とセクレタさんに小一時間、問い詰められていた。だから、吹き出したくても吹き出せないのである。


「でも、不思議なのよね…他の人はそんなに暑くなってないと言うのだけれど、私は二日ほど前からひどく暑く感じるのよね…トーカ、貴方は何故だか分かる?」


 セクレタさんの止めの言葉に、トーカはプルプルと肩を震わせ、涙目になりながらこちらを見てくる。


 おそらくここがトーカの限界である。助け舟を出さないと危ない。


「今日は暑いですから、仕事を始める前に冷たい物でも飲みましょうか」


私はトーカに通じるように大げさに声を出す。


「そっそうね!それがいいかもっ! 私、準備してくるわ!」


トーカは私の意図を察して、そそくさとセクレタさんの前から立ち去り、給仕室へ向かう。


セクレタさんはトーカの背中を見送りながら、舌打ちでもしそうな顔をしていた。


「まぁ良いわ… それより、マールちゃん。これ本当に三週間も着てなくちゃ駄目なの?」


セクレタさんはトーカの事は諦めて、私に話しかけてくる。


「そうですね、担当の中年転生者がそう仰ってましたよ」


「ホントに三週間かかるのね… でも、これを着るのは今回だけよ。三週間の間になんとか他の手立てを見つけて頂戴」


確かに、ずっとセクレタさんに頼るの良くないし、セクレタさん自身も大変なのも分かる。


「今、中年転生者の方が育てている世代の成鶏が増えれば、抱卵する個体も増えると仰ってましたから、多分、大丈夫ですよ…多分」


私の言葉に、セクレタさんはふぅっと溜息をつく。


「なんとも頼もしくない返答ね…」


そこへ、トーカが首を傾げながらお茶のカートを押してくる。


「トーカさん。どうされましたか?」


私はトーカが首を傾げる理由を尋ねる。


「いえね、この前、置いておいたクッキーがどこにも見当たらないのよ… どこしまったのかしら…」


あぁ、この前のしょっぱいクッキー…あなたが犯人でしたか…


「クッキー… クッキーは私、しばらく見たくないわ…」


 セクレタさんもそう言って、眉を顰める。


 それはそうでしょう、私とカオリは一枚食べきれなかったあのしょっぱいクッキーを、精神的に弱っていた時に何枚も食べて、胸やけを起こせば、まぁ見たくなくなるでしょう。


「この前、帝都に戻った時にロラード家の執事にもらったものだから、楽しみにしてたのに…」


「ロラード家って、あの大貴族の?」


私はトーカに尋ねる。


「えぇ、そうよ。あのロラード家。買い物をしていた時にぶつかったから貰ったのよ」


 話を聞いていると、私が爵位継承の時に出会ったのと同じような状況である。


「お菓子の入った袋を二つ差し出して来て、どちらか一つどうぞと言われたから、ガラムマサラの匂いのしない方を選んできたのよ」


結局、どちらとも地雷だったのか…


「無事だった事の、ご褒美って言ってたけど、ぶつかった位で、大層な話よね」


 見知らぬ人物から食べ物を貰うのもどうかと思いながら、トーカの話を聞いていた。実際、しょっぱいクッキーだったし…


 そんな事を考えながら、トーカが準備した飲み物の入ったグラスを口へ運ぶと、執務室の扉が激しくノックされる。


「マール様! マール様! リソンでございます!! 表の方にツール伯の馬車がやって来てます!!」


私はその報告に飲み物を詰まらせた。



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